地方創生 ―おカネの流れ②―

 

1.はじめに


 今回は、各地方が自ら創出するおカネを無駄にしてしまっている問題を考える。木下(2016)はその原因を「タテマエ計画主義」であると考える。
 

2.タテマエ計画主義


 タテマエ計画主義は、希望的観測や願望をもとに計画され、非現実的であることに問題がある。例えば、京都府京丹後市は、人口が約5.9万人で、国立社会保障・人口問題研究所では2060年には2.6万人まで人口が減少すると予測されているにも関わらず、人口がこれから7.9万人V字回復する計画を立てた(木下, 2016:205)。「このような野心的な目標を設定し、無謀な開発を行った結果、その都度計画は失敗に終わり、ツケは計画を立てた主体(地方自治体)に残され」てしまう現状がある(木下, 2016:205)。
経済が拡大する時代であれば、計画通りいかなくても拡大し続ける経済と、失敗を支えられるだけの財政の力によって、問題は事後的に解決される。しかし、現在の経済縮小社会では、そのように上手くはいかない。なぜなら、経済が縮小するということは、それだけ需要が低下することであり、非現実的な計画の的外れの需要予測とそれへの供給が行われると事後的な解決は不可能であり、ツケが回ってくるのである。
 ゆえに、「最初の需要の確保を行い、その実需に沿って、実行する事業の規模を最適化する」プロセスが計画の基本として考える必要がある(木下, 2016:207)。
 

3.3つの問題


 「将来が不透明な時代において、事前に計画を立て、皆が合意し、成果を出す」ために、3つの問題を解決する必要がある(木下, 2016:208)。一つ目の問題は、初期段階に立てられた計画の「一貫性」を捨てられないことである。「初期に予見できる情報には限りがあ」り、少ない情報に基づく計画に固執してはいけないのである(木下, 2016:208)。ここで重要なのは、事前に手に入る情報はほとんどないことを理解し、受け入れることである。情報は、取り組みの中で得られるものであり、それを信頼するべきである。ゆえに、取り組みの中ですぐに変更できるように調整したり、場合によってはその事業から撤退できるように基準を設けたりする必要がある。
 二つ目の問題は、組織的に決定されるタテマエの計画による拘束があることである。時に計画は、「予算獲得自体が目的になり」(木下, 2016:209)、予算をもらうためのタテマエとして作られる。タテマエなのだから、すぐに変更すればよいと思われるが、「組織的に決定された計画は、その後数年にわたり、その組織を縛り続けることにな」ってしまう(木下, 2016:209)。その結果、いうまでもなく失敗する。これを防ぐためには、「各事業の責任を明確にすることと、その責任を個人や組織で負い切れる範囲で実行する必要があ」る(木下, 2016:209)。なぜなら、タテマエをタテマエのまま進められるのは責任の所在があいまいで誰も責任を取る気がないからである。計画が失敗したときの責任の所在を、契約等ではっきりさせておけば、このような事態を避けることができると考えられる。
 三つ目の問題は、地域の人たちからの合意を優先するばかりに曖昧な計画を立ててしまうことである。多くの地方関係者による協議会により「立派」な計画を立てるのではなく、先述したように、「最初に営業活動をしながら実需に沿って計画を修正してい」くことが重要である(木下, 2016:211)。例えば、リノベーション事業では、「入居する人たちとの契約を最初に行い、彼らが支払い可能な家賃をもとにして、十分に投資回収ができるよう、改修工事の投資規模を見極め」ることである(木下, 2016:211)。
 

4.まとめ


 今回は、非現実的なタテマエ計画が実行されることの問題をみてきた。まずは小さな成果を出し、各過程で修正・撤退できる柔軟な計画をもとに、明確に定められた責任者によってこれが実行されることが重要であることが分かった。
 

参考引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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