日本の未来地図 ―何をしていくか③―

1.はじめに


 今回は、今後日本が人口減少の中でも豊かさを維持できるようにしていくために必要なことを考えていく。河合(2019)はそのために5つの視点を提案しており、今回はそのうちの1つに焦点をあてる。

2.視点①:拠点づくり


 一つ目の視点は、「既存自治体とは異なる拠点を各地に作ること」である(河合, 2019:227)。これまでの地方創生政策は、地域に仕事を作ることで人を集め、集まった人がまた仕事を創るというサイクルによって地域経済を発展させ、既存自治体を活性化していくというものであった。例えば、「本社機能の地方移転促進」や、「東京23区内の大学入学定員増加抑制」、「政令指定都市などの機能強化」が該当する(河合, 2019:227-228)。しかし、そもそも人口が減少している中で地方に人を呼び込むとなると、その受け皿を十分に用意できなかったり、既存自治体では既得権で縛られていることも多く思い切った変革に踏み切れなかったりするので、既存自治体すべてを活性化させていくのは困難である。
 そこで河合(2019)は、「自治体の中の狭いエリアに限定してリノベーションを行」い、「人を中心に据えた出会いの場を用意し、「賑わい」を作っていく」ことを提案する(河合, 2019:229)。賑わいをきっかけに、仕事を創出し、これにより地域の豊かさを実現していく。イメージとしては、「運河沿いに所狭しと建物が並び、迷路のような石畳の道が複雑に入り組んでいるベネチア」のような(河合, 2019:230)、人が集まって住んでいる街である。人が集まって住むことで、様々な問題が解決されると考える。まず、物理的な距離が近いことで行政による支援や情報伝達が早く、迅速に対応できることである。また、高齢者の福祉支援やその他サービスも受けやすく、通いやすくなる。そして、「寄り集まって住むことの最大の目的やメリットは、住民の助け合いにある」(河合, 2019:231)。物理的な距離が近くなるとしても、様々な公共サービスが不足することが予想される。そこで、住民が相互で助け合うことで不足分をカバーする仕組みを導入し、「行政サービスのうち民間企業や個人でできることは自ら行うという社会を目指す」のである(河合, 2019:232)。
 これを実現するべく、河合(2019)は「イタリアのペルーシャ市近郊に位置するソロメオ村」に注目している(河合, 2019:232)。この村は、「「人間主義的な経営」と街づくりの一体的な実現」がされている(河合, 2019:233)。これを実現できたのは、村の街づくりと会社の発展が一体的に行われたことに起因する。これは、暮らしと仕事が一体的になることを意味する。その地で生まれたものがその地で消費され、それが重宝されたり実感されたりする結果、その地で働くことに対する誇りが生まれ、街の連帯感が生まれるのである。この村には高級カシミヤで有名な「ブルネロ・クチネリ」があるが、この会社が発展して成功した秘訣もこの村の一体性にある。
 それと対比して現在の日本は「大量生産・大量消費」しているが、人口減少社会を見据えて、労働人口だけで維持できる範囲内で各地域それぞれがその地特有のブランドを生み出していくことが必要であると考える。

3.まとめ


 今回は、今後日本の人口減少を見据えて、各地域が狭いエリアで人が集まって住むような街づくりによって賑わいを創出し、それぞれの地域が独自のブランドを生み出していくことが必要であることをみてきた。ただ、私は、その地域再編段階が最も難しいと思った。なぜなら、例えば道路拡張するためにある住民に転居をお願いしても断られたり、限界集落の人々を説得して市街地に移転してもらうようにお願いすることが困難であったりすることから分かるように、その土地の歴史や伝統を捨てるように説得することは難しいと思われるからである。街のリノベーションをいかに円滑に進めるかが今後の課題であると考えられる。

参考引用文献


河合 雅司(2019). 『未来の地図帳―人口減少日本で各地に起きること』講談社現代新書

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