日本の未来地図 ―人の移動⑤―

1.はじめに


 今回は、三大都市圏以外の主要都市である札幌市と仙台市に注目する。

2.札幌市


 まず、札幌市をみていく。札幌市は、河合(2019)を参考にすると、2019年4月1日時点ではいまだ人口増加が続いていた。しかし、人口増加といっても、その内情をみてみると、社会増が高い一方で自然減も高い状態であり、「出生数の減少を人口の流入で補っているのが実態」である(河合, 2019:72)。
 社会増はどこから来るのかを見てみると、「道内全般から流入している傾向」があり、中でも「旭川市」と「函館市」が多い(河合, 2019:73)。しかし、北海道の人口減少率が高くなっている傾向があるので、だんだん札幌市に人を集められなくなる。
 続いて、場所ではなく年齢層に注目する。若年層は札幌市に転入してくる割合が高い。これは、「進学や就職、転勤を契機とした移動が多い」ことや、「条件のよい仕事を求めて、札幌市に道内の若者が押し寄せている」ということを意味している(河合, 2019:75)。さらに、高齢層の割合も高い。これは、「医療機関へのアクセスのよい場所を求める年配者が、札幌市に移り住んでいるということだろう」と河合(2019)は考える(河合, 2019:75)。高齢層が移りこむとそれに伴って家族が移りこむことも考えられるので、全年代が道内から札幌市に移動することになり、これは「札幌市の一極集中」を引き起こしかねない。
 一方で、男性の若年層の転出も大きい。「大学などを卒業して、就職するのを契機として引っ越す人が多いということである」(河合, 2019:76)。これら転出と転入を踏まえ、河合(2019)は、「札幌市は道内の市町村から若者を中心に人口を引き寄せ、もともとの札幌市の住民が進学や就職を機会に東京圏などに流出する「ところてん式」になっている」と考える(河合, 2019:76)。

3.仙台市


 仙台市は、河合(2019)によると、2019年4月1日現在までは、「緩やかに人口増加を続けてきた」(河合, 2019:77)。仙台市も札幌市と同じく、自然減が高く、「進学や就職で仙台に引っ越してくる」社会増が高い(河合, 2019:80)。そして、この社会増はどこから来るかをみてみると、「東北5県が仙台市の人口規模維持・拡大に大きく“貢献”している」(河合, 2019:80)。しかし、人口減少社会の中、中でも東北各県の人口減少率は高いため、この貢献は長く続かないと予想される。
 反対に、仙台市から出ていく人に注目すると、これも札幌市と同じく、東京圏へ流出する人が多い。これは、「山形新幹線、秋田新幹線、北海道新幹線などにより、東北各県の東京圏への時間的、精神的な距離が大きく縮んだ」ことで、「東北各地の若者たちの目を直接、東京圏へ向けることになった」ことが大きいと河合(2019)は考える(河合, 2019:81)。
ところで、たびたび交通網の話が出てくるが、そのたびに、便利になる一方で、大都市の方へ人材が吸い寄せられていくことが問題視され、一概に便利になるからという理由で、なんでもかんでも進めてはいけないと市の側は考えるのだろうと思った。静岡がリニア開通について未だ悩んでいるのも、これが大きいのかもしれないと思った。

4.まとめ


 今回は、札幌市と仙台市の人の移動に注目し、市内に転入・転出する人がどこからくるのか、どの年代が多いのかをみることで、各市の状況と今後の課題を考えた。札幌市と仙台市のどちらも共通して、周辺からの若年層の転入が多い一方で、市内にいる若年層が転出する人も多いことが分かった。

参考引用文献


河合 雅司(2019). 『未来の地図帳―人口減少日本で各地に起きること』講談社現代新書

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