日本の未来地図 ―これから何が起こるのか③―

1.はじめに


 今回は、少子化の動きをみていく。「少子化の動きが日本列島でどのように広がっていくのかは地域の今後の状況に大きな影響を与える」(河合, 2019:200)。

2.子どもが生まれる場所


 河合(2019)によると、子どもが多く生まれている自治体は、福岡県新宮町、大阪市中央区、大阪市浪速区、福岡県福津市、と大阪府と福岡県が上位に並んでいる。他にも、東京都千代田区、港区、中央区、大阪市北区など、「東京と大阪の中心部に位置する区が上位に顔を並べている」(河合, 2019:202)。ただし、これは伸び率を比較したもので、こうした地域では「ビジネス街にマンションが増えてきたこと」で「子育て世代が増えてきた」ことが原因として考えられる一方で、急激な増加によって、まだ「保育所や幼稚園など子供たちの受け入れ施設が十分に整備されていない」問題がある(河合, 2019:202)。
 驚くべきことに、人口総数でみても東京23区が上位に並ぶ。東京都は合計特殊出生率が全国平均に比べて圧倒的に低いことで、「“子供が育てにくい街”などと揶揄されることも多い」が、実際子供が生まれるのは東京であるという現実がある。これは、子どもを東京で育てるしかないのか、それとも東京で育てたいのか、地方との関係、時間軸でみた変化など様々考えなければならないだろう。さらに、東京における出生率の低さも考えなければならない。これまで見てきたように、東京一極集中によって、若い男女が東京に集まってきている現状がある。それにも関わらず、出生率が低いということはどういうことであろうか。ここから何が導き出されるのだろうか。

3.東京の合計特殊出生率


 こうしたことを考える上で、「令和2年 東京都人口動態統計年報(確定数)」をみてみると、合計特殊出生率の全国平均は1.33であったのに対し、東京都全体では1.12であった(東京都福祉保健局, 2022)。もう少し詳しくみると、東京都の中でも区部は1.12、市部では1.18とほとんど変わらなかったが、最も高い出生率と最も低い出生率を市区それぞれみてみると、区部は中央区が1.43で最高、豊島区が0.91で最低であり、市部は武蔵村村山市が1.37で最高、多摩市が1.06で最低と、かなりバラつきがあることが分かる。それに加えて、出生数は99,661人で、5年連続の減少となっており、合計特殊出生率も4年連続で低下している。
 同じデータで、婚姻・離婚数をみると、婚姻率は全国平均が4.3であるのに対し、東京都は5.5と高い。婚姻率は区部で6.2とさらに高くなっている。一方離婚率は、全国平均が1.57であるのに対し、東京都は1.54と少しではあるが低くなっている。
 これだけで考えられることは少ないと思うが、離婚率が全国平均よりも低いことには注目すべきであると思った。婚姻率の高さは、人が多く集まり、出会いや交流の場が多いことを考えると想像つくが、離婚率も低いということは、一緒にいたいと思える関係にある人々が多いこと可能性があると考えられる。それにも関わらず合計特殊出生率が低いということになるので、やはり金銭的な問題や、子どもを育てていける自信がない等の将来に対する不安が出生率低下の原因であるとごく普通の結論が導かれる。
個人的には、「自分」の範囲というものが空間的・時間的に縮小し、例えば、自分の子どもという存在が自分から切り離されていたり(空間的)、家族の血縁や地縁から切り離すことができることから(地方から東京に昔に比べて行きやすい)、子どもを産むことの優先度が昔に比べて低くなっていたり(時間的)することも原因であると考えている。それが良いか悪いかという話ではなく、そうした文化的変化の側面もあるのではないかという話である。

参考引用文献


河合 雅司(2019). 『未来の地図帳―人口減少日本で各地に起きること』講談社現代新書
東京都福祉保健局(2022). 「令和2年 東京都人口動態統計年報(確定数)」https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/03/14/11.html(2022年12月27日利用)

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