日本の未来地図 ―人の移動④―

1.はじめに


 今回は、人の移動の中でも「名古屋圏」に注目する。前回、前々回で東京圏、関西圏を見てきて、最後に名古屋圏に触れないわけにはいかない。

2.名古屋圏の人口膨張


 少子高齢化の中で、名古屋圏の人口は増加のペースが加速している。名古屋市の人口は、2022年12月1日現在で232万5946人と「230万都市」となっており、前月比で515人減少していることから人口は減少傾向にあるが(名古屋市総務局, 2022)、2018年10月1日現在時点では「人口は22年連続で増加しており、男性、女性とも過去最高」であった(河合, 2019;61-62)。さらに、220万人を突破した時と230万人を突破した時を比較してみると、「220万人を突破したのは2004年であるが、210万人から220万人に達するのに20年7カ月かかった。これに対し、220万人から230万人までは半分に近い11年11カ月しか要していない」(河合, 2019:62)。これらから、2018年までみてみると、少子高齢化の中でも名古屋は人口を加速度的に増加させている。
 河合(2019)は、この増加の大きな要因として、「近年、社会増幅が急速に伸びたこと」を主張する(河合, 2019:62)。名古屋市は大企業が多く集まっているため、「経済状況の伸びに引っ張られる形で全国から人が集まってきていることが大きい」(河合, 2019:62)。しかし、一方で雇用に影響されやすい点で言えば、不景気や名古屋市に存在する大企業が競争に負けて衰退した場合、大きく人口も減少することが予想される。

3.名古屋市の人口増はどこからやってくるのか


 名古屋市が人口増した背景や流れを見てきたが、その人口はどこから流れてくるのだろうか。河合(2019)によれば、一番多いのは同じ愛知県からである。そして、外国人の人口が大きく影響している。名古屋市はものづくりの街としても有名であるように、製造業が集まっている。この分野に外国人が雇用され、その影響を無視できないほど人口増の下支えとなっている。

4.名古屋市人口減の要因


 人口が増加する一方で、名古屋市から「唯一、人口流出となっているのが東京圏」である(河合, 2019:67)。特に、20代の若年層が引き抜かれることは、今後の人口減少の大きな要因となる。名古屋市は2018年時点では、20代女性の転入超過にある(河合, 2019:70)。(現在の状況については調べられておらず、時間の都合上省く。)ゆえに、「女性が求める仕事をさらに魅力的なものとして発展させられるかどうかが名古屋市の大きな課題と」なると考えられる(河合, 2019:70)。

5.名古屋市の今後


 若い層だけでなく、高齢層にも注目すると、ここでも課題がみえてくる。それは、「広すぎる道路」である。トヨタ自動車等、製造業・自動車業で発展してきたこともあり、名古屋市は道路が広い。「歩行速度が遅くなった高齢住民には道路を渡るのが難儀となり、これからはコミュニティを分断する存在になっていく」(河合, 2019:71)。そこで、この課題を解決するために、河合(2019)は、「広すぎる道路を“街中のオープンスペース”として活用するなど賑わいを演出すれば、高齢者の交通対策ともなり、若い女性たちに“輝ける場所”を提供でき」て、一石二鳥であると考える(河合,2019:71)。

6.まとめ


 今回は、名古屋圏の人口移動に注目し、人口がこれまで増加傾向にあったことを確認した上で。今後人口減少の要因となるだろう人の東京圏への流出をいかに防ぐかについてみてきた。特に名古屋市が若い女性を確保しながらも高齢層に配慮できるような街づくりをしていかなければならないことが分かった。

参考引用文献


河合 雅司(2019). 『未来の地図帳―人口減少日本で各地に起きること』講談社現代新書
名古屋市総務局(2022). 「令和4年12月1日現在の名古屋市と世帯数と人口」https://www.city.nagoya.jp/somu/cmsfiles/contents/0000013/13717/041201jinkou.pdf(2022年12月21日利用)

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