地方創生 ―組織④― 

 

1.はじめに


 今回は、「好き嫌い」に注目する。ひどい計画や失敗の背景には、合理性の欠けた「好き嫌い」による意思決定が行われているという問題があるからである。
 

2.好き嫌いの土壌


 誤った意思決定が行われる一つに、論理ではなく感情に基づく意思決定が尊重される土壌が存在することがある。木下(2016)は、自身の関わった地域活性化の取り組みの中でも「世代をまたがった恨みつらみ」を受け継いでいて個人的な感情で意思決定が左右されてしまうことを経験したという。
 さらに深刻なのは、地域活性化の取り組みにおいて、「ものごとを見るのではなく、発言をした人の好き嫌いによって「よし悪し」を判断するところ」がある(木下, 2016:265)。その結果、たとえ論理的で有効な案が出たとしても、「あの人は先日、自分の案に反対したから絶対に反対する」などとなってしまう(木下, 2016:266)。
 

3.同調性と論理的反証


 好き嫌いの土壌に加え、「同調性が高いグループ」による意思決定が行われると、異なる観点からの「論理的反証」が許されなくなってしまう問題がある(木下, 2016:266)。地域活性化において計画をしっかりさせるには数字に基づく論理が必要である。しかし、失敗した事例の計画を見てみると「事前に数字を見ていけば、不可能であることがわかる」ものばかりなのに、否定的な意見を出せない、同調性の高いグループによる感情的な議論が行われてしまうことでとんでもない計画が立てられてしまうのである。
 

4.「好き嫌い」による暴走を止めるには


 木下(2016)は、こうした好き嫌いによって行われてしまう地域活性化の取り組みを止めるためには二つをルール化することが重要であると考える。一つ目は、地域活性化計画において「定量的議論の機会と柔軟性の確保を「初期段階」で確認する」ことである(木下, 2016:269)。さらにその中で、初期段階で確認するのは一回ではなく定期的に行ったり、議論の中で発する意見も数字に基づいたものにしたりすることも必要である。例えば、「図書館構想」を議論する際は、希望的観測に基づくのではなく、施設建設費、維持費、図書本の購入費等を一つ一つ数字で追っていく必要があるということである。
 二つ目は、「何事も一貫性よりも「柔軟性」を優先することを最初から確認しておく」ことである(木下, 2016:270)。これを確認しておかないと、あとで初期計画が無理なことに気がついても好き嫌いなどの人間関係を理由に撤回することが難しくなるからである。また以前述べたように、情報は進めていく中で集められたものの方が質がいい。ゆえに、計画は柔軟に変更されて当然なのである。
 

5.まとめ


 今回は、「好き嫌い」による意思決定がとんでもない計画を生み出すことと、それを食い止めるためのルールの必要性について理解した。ルール化する上で、こうした確認を行うのは責任者であるマネージャーであると考えられるが、チームのメンバーあるいは関係する事業者や自治体の人が感情的になりやすい時、マネージャーは重い精神的プレッシャーを感じることになる。なぜなら正しいとわかっていても理解してくれる人がいないからである。それでも、地域活性化を進めていくためにはこうしたルール化は必要なので、地域活性化を進めたい人は同時に鋼のメンタルも持ち合わせる必要がある。
 

参考引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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