地方創生 ―何をするか⑤―

1.はじめに


 今回は、地域活性化のために必要なこととして「特化」することをあげる。そのために、全国で一律に同じようなことを行う「横並び構造」から突出するために必要なことを考えていく。

2.「横並び構造」―プレミアム商品券―


 何に取り組むかにおいて、47都道府県、約1800の自治体の皆が「同じネタ」を選んで、横並びの取り組みをするという問題がある(木下, 2016:56)。これまで取り上げてきた「ゆるキャラ」「特産品開発」「地域ブランド」もその例である。これに加えて、「プレミアム商品券」もその例として挙げられる。政府が地方創生に関連する交付金を配る際、プレミアム商品券というメニューを提示した途端に、1739市区町村と30都道府県から、プレミアム商品券を実施するという計画が出された(木下, 2016;57)。ここで問題なのは、プレミアム商品券の是非ではなく、国の方針に対して全国の市町村が全く同じ対応をする「横並び構造」があるということである。

3.突出するためには


 プレミアム商品券が全国で行われると、あえてその地域を選択する理由は別で作らなければならない。そこで、今の地域に必要なのは、限られた一部の人たちに熱烈に支持される、突出したコンテンツを用意することである(木下, 2016:58)。突出したコンテンツづくりに成功したケースを木下(2016)は二つ紹介している。
 一つ目は、岩手県紫波町のオガールエリアで、「地元人材に適合した絞り込み」が成功している(木下, 2016:59)。オガールアリーナは、コートの仕様などにバレーボールの国際基準に適合した特殊設計を施し、客席をつくらず、サーブのフォームをチェックするためのカメラを設置するなど、試合をする施設ではなく、練習専用に特化した(木下, 2016:60)。その結果、地理的に不利な場所に位置するのにも関わらず、全国の練習需要を取り込み、フル稼働している。全国各地から集客できているのは、「営業力」である。人材の営業力をベースにして特化型施設にすることで、多目的施設よりも多くの人を全国から集めることに成功している(木下, 2016:60)。
 二つ目は、広島県尾道市の「ONOMICHI U2」という複合施設である。これは、広島県と愛媛県を結ぶ「しまなみ海道」に世界中からサイクリストが集まるようになっている変化を感じとり(木下, 2016:61)、作ったものである。この施設の中核であるサイクリストホテル「HOTEL CYCLE」は、自転車を持ったままチェックインでき、客室まで持ち込める特徴をもつ(木下, 2016:62)。環境の変化を感じ取り、それに合わせたものに特化することで、優位性を確保しているのである。

4.民間主導


 国が主体となって、値引きなどで量を追求するような従来の地域活性化事業ではなく、その地域の人材(民間)が主体となって、付加価値の創出と周辺ビジネスをセットで行う新しい事業展開が、地域を活性化し、大きな変化を生み出すのである。上記で挙げたケースは、いずれも地域の40代の中堅経営者であった。地域活性化のバトンは「国から地方ではなく、地方自治体を飛び越えて地方の中堅・若手の経営者人材へと渡されることが必要かもしれない」(木下, 2016:63)。

5.まとめ


 今回は、地域の活性化のためには、全国が同じような取り組みをするのではなく、突出した何かをその地域の内部から生み出すことが必要であることを述べてきた。特に、全国一律の政策は国から地方自治体に向けて行われるものである。そうではなく、地域にいる中堅人材が内発的に行うことが地域活性化の起爆剤となりうることを示した。

引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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