日本の未来地図 ―これから何が起こるのか①―

1.はじめに


 ここからは、少子高齢化や人口減少が進むにつれて「日本列島で何が起ころうとしているのか」を、各地域別にみていく(河合, 2019:115)。河合(2019)は、『未来の地図帳―人口減少日本で各地に起きること』が発売されてから25年間先までの未来について、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「日本の地域別将来推計人口」(2018年)を基に何が起こるのかについて検討する。特に今回では、日本全体で起こることを概観する。

2.日本全体の概観


 人口減少の仕方は地域によってバラつきがあり、減少していく地域もあれば増加する地域もある。2030年以降になるとどの地域も減少に転じることが予想されているものがあるが、ここで注目したいのは、人口減少の「タイムラグは、同時代でありながら、都道府県によって異なる社会を出現させ」、「この時代に生きる人々は、あたかも2つの国が日本列島の上に存在するかのように感じることだろう」ということである(河合, 2019:117)。
 「広島都市圏構想」のように各都道府県が存続のために動いていることから、市町村レベルでみるといよいよ「自治体消滅」の文字が可視化されてくる。例えば、奈良県川上村や北海道歌志内市、群馬県南牧村などがこれに該当する。急速に人口が減る地域があるということは増えている地域もあるということであり、それが東京である。特に、「タワーマンションの建設ラッシュに沸く東京都中央区」が挙げられる(河合, 2019:118)。さらに、東京以外にも、「同一県内での人口移動によって特定の市町村の人口が減ることも予想される」(河合, 2019:118)。東京一極集中からわかるように、その人々の移動先は「各都道府県において県庁所在地や県内トップの経済都市」である(河合, 2019:119)。河合(2019)によると、「こうした中心市街地への人口集中や県内偏在の拡大も、今後の日本列島上で起こる大きな特徴」である(河合, 2019:119)。

3.東北地方の人口減少


 河合(2019)によると、これから2045年までの人口減少率をみてみると、「高知県を除き東北地方に3割以上の激減県が並ぶようになる」という(河合, 2019:125)。「わずか30年で3割も4割も人口が減ったのでは」、「都道府県の名前を社名に冠した金融機関や新聞社など県外での事業展開がしづらい企業は、根本から経営基盤の見直しを迫られ」たり、自治体経営に注目してみても「税収が減ることに伴い、福祉や教育も縮小に迫られ、ゴミ収集や道路の補修といった公共サービスの維持すら懸念されるところが出て」きたりする(河合, 2019:125)。

4.高齢化


 東北地方の人口減少率は著しいが、人口が増加する東京でもこれとは別の問題が発生する。それは、高齢化が進むことによる、高齢者支援をするための受け皿の確保である。東京は、「ビジネス中心、若者の中心の街として発展してきただけに、高齢者の激増対策は困難を極めよう」(河合, 2019:125-126)。
 東京を例にあげたが、高齢化はどの地域にも影響を与える。「社会保障制度の運営の多くは、財源も含めて市区町村が担っているため、高齢住民の割合が増える市区町村や高齢者の実数が増える市区町村の運営に大きな影響を及ぼす」ことが予想される(河合, 2019:131)。さらに、住民が高齢化していくと、その地域の労働人口が減少することから、税収が上がらなくなったり、地域で消費されるおカネが減少することで地域経済が回らず様々なサービスやお店が減っていったりすることも予想される。そうすると、ますますそこで暮らす住民が良いサービスを求めて別の地域に移動するなどで減少するという悪循環が生まれると考えられる。その移動先は、先述した県内の都市か東京であり、こうして今ある社会地図が変化していく。

5.まとめ


 今回は、人口減少が今後進んでいくと、日本全体がどのような問題に直面し、どのように変化していくのかを述べた。一番の問題は、人口減少が日本全体で一様に進まないことから、ある自治体経営ができなくなったところの住民が順に県内の主要都市や地域あるいは東京に移動していくことであると思った。自治体消滅を食い止めるのか、それは仕方なく一つの現象であると受け止めたうえで、その先の社会に合わせて政策を考えていくのかは、また一つ議論が必要であるとも思った。

参考引用文献


河合 雅司(2019). 『未来の地図帳―人口減少日本で各地に起きること』講談社現代新書

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