地方創生 ―おカネの流れ③―

 

1.はじめに


 今回は、「ふるさと納税」に注目する。ふるさと納税は、「地方で生まれ育った人や都市部に住む人が、都市部にいながらふるさとに納税することで、地方を応援することになるという税制優遇策で」あったが(木下, 2016:213)、最近はそれに加えてさらなる税制優遇や地域の特産品ももらえるようになった。
 

2.ふるさと納税の問題点


 ふるさと納税が人気を博す一方で、「地方自治体が「ふるさと納税」を獲得するため、高額の返礼品競争が発生しており、税制としての本質からかけ離れた実情に総務省が警告を出してい」る(木下, 2016:214)。つまり、ふるさと納税が地方にデメリットとなっている側面があるのである。木下(2016)は、ふるさと納税が地方衰退につながる要因を3つ挙げている。
 一つ目は、ふるさと納税のお礼に提供する地方産品の価値を正当に認められ、市場取引が拡大しているわけではなく、「税制を活用してタダ同然で地方産品を配っているから出荷量が増加し、都市部の地方産品を受け取るも喜んでいる」という状況があることである(木下, 2016:214)。タダ同然で受け取った新規顧客にリピートしてもらうのはかなり難しく、また既存顧客にとっても、正規で購入しているのに他の人にはタダで売られることから購買意欲の低下につながる可能性がある。こうして、市場拡大もしなければ、タダ同然で配られる出荷量が増加するという状況が起きる。木下(2016)は、地方産品の販売によって地方活性化を図るためには、「妥当な価格をもって営業し、販売を積み上げなくてはならな」らないと指摘する(木下, 2016:215)。
 二つ目は、「地元産業がますます自治体依存になっていく」問題がある(木下, 2016:216)。ふるさと納税によって送られる地方産品は、自治体が税金によって購入されるので、企業にとって「おいしいビジネス」である(木下, 2016;216)。これに対して一部企業は、普段の経営ではなく「ふるさと納税の短期的な売り上げを優先してしまい」(木下, 2016:216)、従来の取引先への商品数を減らすなどしてしまう。こうして、自治体への依存が高まるのである。ふるさと納税による売り上げは短期的で、地方産品として常に選ばれる保障もなく、変化が激しい。ゆえに、これに依存すると経営が左右されてしまう。
 三つ目は、「ふるさと納税を獲得すると、そのまま「その予算をどう使うか」という話になってしまうこと」である(木下, 2016:217)。税収が少ない地方自治体にとって、自分たちの力で得られる新たな財源としてふるさと納税は確かに注目すべきものである。しかし、この財源は一過性のものである。それにもかかわらず、毎年予算が必要である社会保障や交通系の住民サービスを支援する事業立ち上げに使われることがある。補助金の回で見たように、「従来どおりの予算を使い切る競争をしていたら、ふるさと納税が地方に行ったところで、活性化なんて不可能」である(木下, 2016:217-218)。
 

3.一過性ではなく継続性


 一過性の変動の激しいふるさと納税も重要だが、地方が維持していくためには「継続的に稼げる仕組み」が必要である(木下, 2016:218)。これまでの話から分かるように、ふるさと納税による一過性の税収増加は、「補助金」と同じである。地方出身の人が都市部にいるが出身地域に納税するようにする仕組み自体は良いが、だからといって地方産品による返礼とその依存問題は解決する必要がある。
 

4.まとめ


 今回は、ふるさと納税によって生じる問題に注目した。自治体が自ら財源を獲得できるメリットがある一方で、一過性で変動の激しいという性質を理解しないでその税収を使ったり、またこれに依存したりしてしまうことが問題であることが明らかになった。これまで何度も述べてきたように、やはり地域の活性化、そしてその維持には、継続的に地域内で回せる経済をつくる必要がある。
 

参考引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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