日本の未来地図 ―何をしていくか①―

1.はじめに


 今回からは、今後起こりうることを想定した上で、どのような政策をしていけばよいかを考えていく。中でも今回は、地方創生に注目し、現在の地方創生政策の問題点をみた上で、どのような政策であるべきかを考えていく。

2.地方創生


 これまでも取り扱ってきたように、政策の一つとして地方創生が挙げられる。河合(2019)は、これまで安倍政権が行ってきた地方創生政策に対して、順調に成果が出ているとはいいがたく、その要因を2つ挙げている。
 一つ目は、出だしを間違えたことである。合計特殊出生率の低下や出産平均年齢の高齢化からわかるように、「子供を出産できる若い女性の激減が決まってしまっている以上、日本の少子化は止めようがない」にも関わらず、「安倍首相が人口ビジョンの中で、「2060年に1億人程度の人口を維持」」することを掲げたことで、「官僚たちの思考がストップしてしまった」のである(河合, 2019:218)。本来掲げる目標は人口減少を受け入れた上で国を豊かにしていくことであり、人口を維持しようとする目標設定はそもそも方向性として間違っているのである。しかし、人口維持を掲げられた以上、官僚らもその達成度で評価されるわけだから、人口維持のための政策が行われる。そうすると、例えば「外国人労働者の受け入れ拡大のように、根本的な解決につながらないばかりか、日本社会を弱体化させる安易な手法に流れてい」ったり、「人工知能(AI)やビッグデータなど、最先端技術を活用した「スーパーシティ構想」」という「少子高齢化や人口減少の加速に悩む地域の解決策としての効果は、限定的だといえ」る政策が行われたりするなどの問題がおこる(河合, 2019:219)。その結果、地方創生政策から離れていってしまうのである。
 二つ目は、「地方移住者の増大策にしても、地方都市政策の強化策にしても、既存の市区町村をベースとしていること」である(河合, 2019:219)。「これから何が起こるのか」という前回までのブログで触れたことからわかるように、今後は市区町村の存亡が危ぶまれる。それにも関わらず、市区町村をベースにしてしまうと、その政策は数年後には根本から破綻していくことは明白である。河合(2019)は、「政府からの要請に対して、対応できる組織体は都道府県や市区町村しかないことは、紛れもない事実」だとした上で、無理な要求をされた市区町村長は、その無理な要求に応答しなければ再選できなくなることを恐れ、「合計特殊出生率が大きく改善することを前提とした「絵空事の将来図」を発表する自治体まで登場」している現状を問題視している(河合, 2019:220)。他にも、「人口減少対策に取り組んでいる姿勢を示すことが重要と言わんばかりに、他の自治体から定住者を引っ張り込むことを目的とした無鉄砲な子育て支援策や、過度な家賃補助といった施策を展開するケースが全国各地で見受けられる」という(河合, 2019:220)。

3.するべき課題設定


 これからは、市区町村それぞれが政策に取り組むのではなく、日本全体で、総出で取り組んでいくべきである。「日本列島から人口が大きく減っても、各地で大きな差が開くことなく豊かな暮らしを送り続けられるようにする術を、生活している地域を超えて、みんなで考えていかなければならない」のである(河合, 2019:221)。地方創生とは、「なるべく住み慣れた地域で豊かな暮らしを続けられるようにするための政策」であり、地方を活性化するというのはそのための手段なのである(河合, 2019:221)。

4.まとめ


 今回は、地方創生政策の、そもそもの問題設定が見当はずれなこと、無理な政策を市区町村に課すことで無理な政策が各地で実施されていることを問題視した上で、目的と手段をはき違えずに目標設定することが必要であることが分かった。人口減少は今後も進むことは認め、それでも豊かなまちを維持していくために、「豊か」とは何なのかから始まって、地域ごとではなく日本全体で問題に取り組んでいくことが重要であると思った。

参考引用文献


河合 雅司(2019). 『未来の地図帳―人口減少日本で各地に起きること』講談社現代新書

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