地方創生 ―人的資源の考え方③―

 

1.はじめに


 今回は、「新幹線」に注目する。なぜなら、新幹線は、地方を便利にすれば、ヒトが集まり、企業なども東京からスイッチして地方に集積していくという理論を背景にして整備されてきたからである(木下,2016:173)。
 

2.新幹線の活用 ー3つの条件ー


 新幹線は開通当初、いかに地方と都市を結び付けるかが重要だった。しかし、これから地方活性化を考えていくためには、新幹線をいかに活用するかを重要視しなければならない。木下(2016)は、新幹線を活用し、成果に結びつけるために3つの条件を提示している。一つ目は、「他と異なる「独自の営業」」(木下, 2016:177)をすることである。単に新幹線とつながった地域は、短期的には地方活性化の効果がみられるものの、長期的には、「確実に地域外に都市機能が吸い取られてい」(木下, 2016:178)る。一方で、「独自の営業」を行う地域は、その地域の特色が生まれ、大都市圏との競争において優位に立つことができる。ヒトは、その地域に行く明確な目的ができるのである。例えば、「上越新幹線の通る新潟県大和町(現在の南魚沼市)は、新幹線の開通と共に、国際大学や県立国際情報高校の誘致で一気に学術集積を図ってい」(木下, 2016:179)る。
 二つ目は、新幹線が開通することによって不便になる地域内の公共交通を再構築することである。新幹線が整備されると、それに並行する在来線はそれまでの運賃が1.2倍から1.5倍に上がったり、特急線やJR関連バスの再編などが行われたりする。ゆえに、「不便になった地域内交通網を補完する手段を、独自に用意すること」(木下, 2016:181)が、新幹線駅やその周辺地域で必要である。例えば、「青森県八戸市において、郊外の生鮮卸売市場の観光拠点化で成功している「八食センター」があ」る(木下, 2016:180)。新幹線駅から八食センターに行くまでに「新幹線+バス」のルートを開発することで駅と郊外をつなぎ、観光客を呼ぶ。
 三つ目は、「地元資本投資」(木下, 2016:181)である。これが必要な背景として、新幹線が開通することで、「大都市資本が地方にどんどん進出し、「地方市場をどんどん席巻していく」という構造」(木下, 2016:181)がある。例えば、新幹線駅に駅ビルが建ち、そこで百貨店やチェーン店が並び、ヒトも売り上げもそこへ吸収される。そこで、「新駅周辺に形成される新しい市場に対しては、小規模でもいいから地元事業者が商機を見出して投資することが、極めて大切」(木下, 2016:182)である。例えば、鹿児島県中央駅前では、地元事業者が「かごっまふるさと屋台村」を経営している(木下, 2016:182)。
 

3.まとめ


 今回は、新幹線に注目して、都市と地域がつながったはいいものの、ヒトを呼び、いかに地方活性化につなげるかを考えた。単に新幹線をつなげただけでは、大都市にヒトやおカネが吸収され、かえって逆効果になることを踏まえ、その地域の独自性を見出し、ヒトが来るための明確な目的を創出することが必要であることが分かった。
 

参考引用文献


木下 斉(2016). 『地方創生大全』東洋経済新報社

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