日本の未来地図 ―これから何が起こるのか②―
1.はじめに
今回は、東京圏の内部に注目し、特に人口増減、人の移動、そして高齢化が今後どのように進み、それによって何が起き、問題となるのかについて考えていく。
2.東京圏
東京圏は、「東京一極集中」の流れが続くことで、人口は今後も増加し続ける。河合(2019)によると「東京都は2045年になっても、2015年より人口が多い状態をキープしている」だろうと考える(河合, 2019:134)。しかし、東京圏全体ではなく、市区町村レベルに注目すると話は変わってくる。千代田区、中央区、港区の都心3区は今後も人口が増加する一方で、多摩地区や都心から離れた市町(福生市、羽村市など)、そして山間部に位置する町村(檜原村、奥多摩町)は人口減少する見通しである。
都心3区に代表される地価の高い区における人口増加は、地方からやってくる社会増が原因ではない。「これらの地域の人口を押し上げているのは、東京圏に長年住み続けた人と考えるのが素直だろう」(河合, 2019:136)。つまり、郊外から都市部へやってくる社会増である。この理由を河合(2019)は4つ挙げている。一つ目は、未婚者や高齢者といった独り身の人が増加することで、都市部における小さな居住地でも問題なくなってきたことである。この対比として、団塊世代による持ち家が求められた時代がある。二つ目は、「郊外の不便な立地のマイホームにひとりで住み続けるよりも、買い物などの日常生活に便利な駅周辺へ移り住みたいと考える人が増えてきた」ことである(河合, 2019:136)。三つ目は、「タワーマンションが増え、都心部に住宅が大量に提供されるようになって、物件を求めやすくなったこと」である(河合, 2019:136)。最後に四つ目は、経済環境が変化したことで、「就業人口が減り始めてオフィス需要の減退が見込まれ、しかもインターネット通信販売の普及で実店舗の利用が減ってきたため、都心部において住宅向けのスペースを確保しやすくなっている」ことである(河合, 2019:137)。こうした郊外から都市部へ移り住む流れがあるのだが、その郊外は地方からの社会増によって人口が維持されている。
3.東京23区と多摩地区
東京圏の中でも東京23区に注目すると、高齢化による問題が発生することが予想される。河合(2019)によると、「空地が貧しく、高齢者向け施設の整備が遅れている23区では“介護難民”や、年休受給額が減ったり、医療費や介護費が増えたりして家計が苦しくなり、賃貸物件に住み続けられなくなる“住宅難民”が深刻な問題として浮上する」と考えられる(河合, 2019:138)。23区が高齢者向け施設の整備が遅れているのは、街自体が「ビジネス優先」、「若者中心」であるからである(河合, 2019:138)。
一方で、ビジネスや若者中心ではない地域である多摩地区は、別の角度から高齢化による問題が発生すると考えられる。それは、「公共交通機関が十分発達していない」ことで、「“買い物難民”“通院難民”」が出現することである(河合, 2019:139)。逆に言えば、多摩地区の中でも駅が近くにある地域(23区までアクセスのよい13市)では、今後人口増加が予想される。こうしたことを踏まえて、どの地域に・誰(属性)向けの・どの年齢層向けのサービスを拡充したり、反対に減らしていったりするかを考えていく必要がある。
4.まとめ
今回は、東京圏内部の中でも、特に東京都心部、東京23区、多摩地区に注目して、人口移動がどのように進むかということと、街の特色から高齢化によって起こる問題の違いを見てきた。これらに加え、人口減少と高齢化が同時に進むとすると、空き家問題についても考えていかなければならないと思った。
参考引用文献
河合 雅司(2019). 『未来の地図帳―人口減少日本で各地に起きること』講談社現代新書
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