腱をマッサージすると筋肉は弛緩するのか?

以前にマッサージをすると筋が伸張されてIb抑制、自原反射などの反射が働くため筋肉が弛緩すると聞いたことがあります。

実際にはどんな生理学的なメカニズムと科学的なエビデンスがあるのかを、改めて調べ直してみました。

1b抑制(自原抑制)とは

腱に過剰な張力(引っ張られる力、引き伸ばされる力)が加わったときに、筋や腱が傷つくのを防ぐための反射です。筋や腱が傷つく前に筋を弛緩させます。

この引き伸ばされた!と感じるセンサーをゴルジ腱器官と呼びます。

ストレッチで筋肉が柔らかくなる原理

このゴルジ腱器官が「張力を感知することで筋肉が弛緩する」という反射を利用して筋肉にアプローチしているのがストレッチになります。ゴルジ腱器官は特に筋腱移行部に多いと言われています。

つまり、ストレッチは腱を引き伸ばしゴルジ腱器官を働かせることが目的になります。

腱を刺激すると筋肉が柔らかくなる?

皮膚を圧迫すると、皮膚が引き伸ばされることは想像できるかと思います。腱も同じように圧迫をすると引き伸ばされます。であれば、腱をマッサージ(圧迫)しても筋肉に刺激があり弛緩するのではないか?と考えることができます。

*正確には引き伸ばされているのではないので、圧迫を加えた時に腱に張力がかかっているわけではありません。張力は直線上の力になります。

筋腱移行部を刺激した研究

結論を言えば、筋腱移行部を刺激して効果があったという研究があります。

腱骨移行部への刺激でも有効

上記研究で得られた結果から、筋腱移行部だけでなく腱骨移行部への刺激でも有効とあります。

筋腹と筋腱移行部の効果の違い

これが僕の中ではもっとも印象深い研究でした。
結果を要約すると「筋腹も筋腱移行部も同じように効果が出る」というものです。どちらも統計上の有意な差が認められなかったのは、同じように効果が出ているからです。他動運動による可動域、伸張痛は筋腱移行部の方が効果が出たともあります。

【結果】筋腹部と筋腱移行部への刺激において、関節可動域の変化、及び下腿三頭筋の伸張痛のVAS は、 統計上の有意な差が認められなかった。しかし、他動ROMと伸張痛のVASについては、筋腱移行部 群の方が筋腹部群に比して変化量は大きいという結果を得た。

圧迫部位の違いが骨格筋の伸張性に及ぼす影響―下腿三頭筋の筋腱移行部と筋腹部の比較―より引用(下記リンク)

考察

僕は科学者ではないので、正確な生理学的なメカニズムを知る必要はないと思っています。今回の研究でわかることは「腱の刺激で筋肉は弛緩する」ということです。
紹介した研究のうち2つは論文ではなく、学会で発表されたものではありません。調べてみましたがそれが論文になっているわけではなさそうです。ひとつは原著として論文が発表されています。
科学者から見ると、論文になっていない場合は情報の信用性にさほど担保がない印象を受けるそうです。
なので、これからも情報の精査をしていくことは大切になります。

ですが、「腱の刺激で筋肉は弛緩する」という事実があるので、臨床においては役立つかなと思います。受容器をたくさん働かせると、反射が起きにくくなります。筋肉ばかりを刺激するのではなく、腱を刺激することでより多くの反射を引き起こすことで施術効果を上げることが期待できるかなと思います。

マッサージよりストレッチ?

ただ、ストレッチをすれば良いんじゃないか?という意見もあると思います。なぜなら、ストレッチをすれば効果があることは証明されているからです。限られた時間でどの刺激を選択するのかは施術センスなので、その時の相手の状態、相手の刺激の嗜好に合わせて選択をするのが良いかと思います。
僕の施術は手技療法が基本なので、その中でゴルジ腱器官を働かせられたらと思い調べてみました。

こういった議論をするときに、科学においては「どうなるか?」が正確に必要ですが、臨床においては「その相手には何がベストなのか。相手が何を求めているのあ?」が最も大切になります。
ビジネスで言えば、どのマーケットで売りたいか。

正解はなくその時によって変えることが大切かなと思います。
また情報があれば更新します。

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