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人生が変わる瞬間。【つづき】

予備校で初めてできた友達のかっこつけてコーヒーをこぼした彼と、

大学に行ってどうするのかを話していた。

私は、

「親から実家を継ぐための条件として仕方なく大学に行く。せっかく大学にいくなら、実家を継ぐ前にスポーツライターでもやりたい」

というような無邪気な理由を述べた。

これに対して、コーヒーの彼は、

「芸人になるために大学行くねん。」

と言った。

自分の耳を疑いかけたが、いつになく真剣な顔をして彼はそう言った。

今でこそ、大学を出て芸人になるいわゆる高学歴芸人は何人かいるが、この当時(1994年頃)は芸人を目指すなら、高校出てすぐにNSCに入るというのがスタンダードで、わざわざ大学を出て芸人になる人は皆無だった。

それなのにわざわざ大学を出て(しかも浪人してまで)芸人を目指すなんて、いったい何を考えているんだと思った。

あまりにも衝撃的で、一瞬、俺を誘っているのかと勘違いしたくらいだった。

予備校生なのに毎日オムライスを巻いている、話もそこそこおもしろい俺と大学に行って、一緒に芸人デビューを目指す。大学受験に失敗して未来が見えなくなってそんなおかしなことを考えてしまっているのでは?と思った。

しかし、残念ながらそれは違った。

彼にはすでに相方がいた。

高校の時の同級生で、相方はすでに現役で京都大学に合格していた。

当初の予定では、お互い現役合格して、すぐに芸人になるための活動を始めているところだったが、彼が大学受験に失敗し浪人生となったため、1年間待ってもらっているという。

「芸人になるために大学に行く」理由を詳しく聞くと、

「自分たちの武器は勉強ができるということ。それを最大限に生かして芸人を目指す。芸人にはおもろいやつはいっぱいおるけど、勉強ができるやつはほとんどいない。ましてや京大に行ってる奴なんて一人もいない。これは武器にもネタにもなる。だから自分も大学に行って、現役大学生コンビになんねん。」

当時の芸人事情や自分たちの特性をしっかり分析できていて、芸人になるまでの道筋もとても戦略的。

なんのために大学に行くかという目的がはっきりしていた。

私は同じ浪人生でここまで違うのかと、落胆した。

この日から、彼のことを「コーヒーの彼」と呼ぶことはなくなった。

将来が混とんとしている輩が多い、予備校において、一人だけ明るくキラキラとした夢を持って大学を目指していた。

そんな彼に比べて、自分は大学に行くための明確な理由もなく、スポーツライターになるために何をしないといけないか、どうすればなれるのかなど何も考えていなかった。無邪気に夢を語った自分が急に恥ずかしく思えた。

自分も大学に行くための理由や、将来の夢をしっかり持たないと。

そしてその夢を叶えるために自分はどんな武器を持っていて、何をすれば夢を叶えることができるのか考えないと。

あぁ、もうオムライスを巻いている場合じゃない。。

この日から、自分の人生に真剣に向き合うようになった。

また何か目標に向かって進んでいく時に、自分自身を分析し、その目標達成のために何が武器になるか、何が足らないか、どのようなアプローチをしていくべきか考えるようになった。

これが、自分の人生において今でも何でも相談できる親友であり、後に高学歴芸人としてブレイクするロザン 菅広文との出会いであった。

😄

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