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【Starlight Destiny#36】お母さんの涙とおいなりさん

祖母が亡くなってから、母は毎日憔悴しきっていて
朝起きてもすぐ寝る生活になってしまった。
何を話しても反応なく
仕方なく稟僧を召喚しても
「いまはそっとして差し上げなさい」と言われていた

4つ下の弟を幼稚園に連れて行くのも私だった
2つ下の妹は川田さんのおばちゃんに料理を習って食事を作っていた
洗濯はちーちゃんがやっていた。
父も「お母さんが自分で何かしたいと言う気持ちになるまでは
みんな静かに見守るように」と言われた

ドンパンお小遣いも入らず、他の人に会えない寂しさもあった。

曽祖父の家に行って祖父に相談したら
「あ~見えて仲良しの親子だったからしかたないよ」と言われた
曽祖父の仏壇に手をあわせてた時に
「おいなりさんを作ってと言ってみたらどうだね」と聞こえた
帰りがけに祖父に油揚げをもらって帰宅する道柄
本当に大丈夫かな?と思った

布団で寝ている母に恐る恐る聞いた
母が目をあけて
「おいなりさん作らないとね。おばあさん好物だったから起きて
しっかりしないと」と泣いた
台所に立つ母の後ろ姿を見て姉弟みんなで泣いた
妹は母の横に立って何をしているのか見て、いらないカレンダーの裏に
一生懸命メモを取っていた。

次の日においなりさんにすし飯を入れることになり
妹と二人で台所に呼ばれた
「いままでだめなお母さんでごめんね」と言われたが
二人で同時に言った言葉が同じでびっくりした
「おいなりさん作ったらおばあちゃんにあげてあげなくちゃね」
同じ言葉を言ったらお互いに相手に「ハッピーアイスクリーム」と言うゲームがあった。私たちのやり取りを見て母が久しぶりに笑った

出来上がったら、まずちーちゃんの部屋にある仏壇にあげて
曽祖父の家へ行き仏壇へあげた
お線香の煙の隙間から
曽祖父・曾祖母・祖母の三人が食べている姿がみえた
母に言おうかなと思ったが黙っていた。
心の中で「みんな喜んでいるよ。よかったねお母さん」とつぶやいた


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