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空想紀行文

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詩『蛹星』

詩『蛹星』

永く生きてあればきっと ふやり離れてくのだろう
目をぎゅっとつむる
幾光年を泳ぐ蛙 そのさいごの色をおもって
うつわは焼き上がる
生まれたからには蝶になりたいだなんて考えてしまうよ
皮膚はまだ柔らか
生まれたからには蝶になりたいだなんて考えてしまうよ
皮膚はまだ柔らか
表面張力が打ち負けて ぷるんと溢れてくる歌
思わず本をとじる
冷たさに滲む涙 朝を肺いっぱいに
頂に挑もう君と
頬は解けやすいから

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散文詩 『ラピス・ラズリ』

散文詩 『ラピス・ラズリ』

ラピス・ラズリ   

鉱石のような恋をしなさいと母さんは言いました。
私は青紫色の瞳を感じて、誘われるようにカーテンを綴じます。
むかし飼っていたハムスターのお墓を柔らかく思い出しながら
君が赦した金属光沢をするらり撫でるのです。

 ふと嗅いだマスカットの匂いにつられて家を出る。外はぞっとするほど暗くて、足下だけが上からの光を反射している。遠くの工場が琥珀色に光って深く煙を吐いているのが見える

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