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食品の"クセ"を使いこなそう ナンプラー編

クセの強い食材や調味料って世の中にけっこうあるじゃないですか。で、ふとなにか料理を作ろう思い立って、本格的なレシピを調べるとそういうのが必要だったりして、勢いで買ってしまう。だけど結局使いきれずに余らせたまま…。なんて経験がみなさんも一度くらいあると思います。

そんな問題に向き合い、単位を犠牲にしながらあらゆる食品の使い方を見出してきた男こと僕が、みなさんにクセの強い食材・調味料へのアプローチをお伝えしていこうという企画です。クセは上手くハマれば超美味い。今回はナンプラー編です。

というわけで、この記事では
ナンプラーという調味料とは
ナンプラーを使った激ウマレシピ
の二部構成でナンプラーは友達、怖くないよということをみなさんにお伝えしていく所存です。

ナンプラーという調味料とは

まず、ナンプラーとは何かを説明していきます。
ナンプラーとはタイの魚醤、つまりは魚を発酵させて作る調味料で、独特の風味と強い塩気が特徴です。物価の安いタイのものなので、200mlで150円程度という手頃な値段なのも魅力。
主な原料はイワシなどの小魚で、製法としては丸ごとの小魚に大量の塩を加えて重石をして数ヶ月から数年の間発酵・熟成させ、絞った液を砂糖などで調味して完成です。
発酵の過程で魚のタンパク質はほとんどアミノ酸に分解され、これが独特の強い旨みのもととなります。

ここまでの説明で「結局よくわからん異国の調味料やんけ」と思われた方も多いかと思いますが、同様の魚醤と呼ばれる調味料は、タイを始めとしたフィリピンやベトナムといった東南アジア圏の国々だけでなく、秋田県のしょっつるやイタリアのコラトゥーラのように、実は世界中に見られるものです。

察しの良い方はもう気づいたかも知れません。
そうなんです。つまりナンプラーはエスニック料理だけでなく、適量なら和食にもイタリアンにも使える調味料なんです。

とはいえ、じゃあ肉じゃがにナンプラーぶっかけて美味しくなるのか?といえばそんなことは当然ありません。
そもそも発酵調味料というものがクセが強く用法を選ぶもの。我々が愛して止まない醤油や味噌だって本当はクセが強くて使いづらいんです。クリームシチューを醤油で味付けたりはしませんよね。でも、洋食屋さんの秘伝の隠し味が味噌だったりもします。
要するに問題はクセをどう活かすかということ。ナンプラーだってクセを理解して正しく使ってあげれば色々な料理で輝けるんです。

ナンプラーを使った激ウマレシピ

ここまででナンプラーが魅力的かつ可能性に満ちた調味料だということがなんとなく伝わったかなと思います。
というわけでここからはナンプラーの美味しさが分かるレシピをみなさんに教えていきます。
意外な組み合わせもありますが、どれも美味しいので是非試してみてください。

ナンプラーペペロンチーノ 
塩分0.5%のお湯でパスタを茹で始め、茹で上がる3分前ほどから、鷹の爪と潰したニンニク二片をオリーブオイルで温め、香りが出るまで焦がさないように加熱する。香りが出たら茹で汁をオイルの量の3倍程度とナンプラーを小さじ半分ほど加えて、パンをゆすって乳化させソースにする。茹で上がる30秒前に麺を合わせてあおり、麺にソースを纏わせる。あればこのときたっぷりの刻んだパセリとレモン汁少々を合わせるとより美味しく仕上がる。

ペペロンチーノは美味しいパスタですが、味の要素が少ないので単調になりがちです。そこでナンプラーの風味と旨味を加えることでより深みのある味わいに。「ナンプラーって臭いんじゃ…」と心配な方は、アンチョビとニンニク、オリーブオイルが相性抜群なことを思い出してください。くっせぇけどうめぇんです。レモンとパセリのトッピングは映画「シェフ」に出てきたやつで、スカーレットヨハンソンが食べてました。爽やかでうまい。白ワイン泥棒。ぜひお試しあれ。

ナンプラーポテサラ
皮付きのじゃがいもを食べたいだけやわらかめに茹でて(レンチンでも可)つぶし、角切りにした好みのチーズ、ベーコンを加え、たっぷりの黒胡椒、遠慮のないマヨネーズ、ナンプラーひとまわしで味をつける。ここでほんの少しはちみつを入れるとコクが出るがなくてもよい。

さっきのもそうなんですが、ナンプラーを醤油とかのカテゴリではなく「液体アンチョビ」と捉えると洋食にも使いやすくなると思います。芋とアンチョビは合う。ナンプラーも然り。発酵食品なんでチーズとも合う。そこを黒胡椒で引き締めてるのでハイボールが止まらない味になってます。

ナンプラー鍋
こんな名前だけどいわゆる寄せ鍋。
昆布だしに味をみながら3-5%ほどのナンプラーを加え、たっぷりのおろしショウガで整えて作った出汁で野菜や魚介を煮て召し上がれ。鶏つみれも相性◎。

石川の方のいしり鍋という魚醤の鍋のパクりです。いしりよりもナンプラーのほうが多少クセがあるので、ショウガを加えるアレンジをしました。汁に甘みをつけていないので白菜とか人参のような甘みの出る野菜と合わせるとバランスがいいかと思います。みりんで甘くするとナンプラーとケンカするなぁと感じたので具材でバランスを取るのがおすすめ。シンプルな味付けでも寂しさが無いのはナンプラーの旨味が強いから。淡麗日本酒によく合います。

ナンプラーキャベツ炒め
前の記事でも紹介したキャベツ炒め。たっぷりのにんにくを多めの油で温め、香りが出たらレンジで軽く火を通したざく切りキャベツを投入し、ナンプラーだけでシンプルに味付けしながら強火でさっと炒めて出来上がり。

これも野菜の甘みとナンプラーの相性の良さを感じる1品。桜えびを加えるとより豊かな味になります。ビールを二本以上冷やしてから作ることをおすすめします。


おわり

今回も読んでくださってありがとうございました。決して高いものではないし、少量で買うことができる調味料なので、ぜひ皆さんもナンプラー買ってみてください。こぼすとキッチンどころか部屋全体が地獄のような匂いに包まれるという点さえ注意すれば、ナンプラーはあなたの食生活を少し豊かに彩ってくれるでしょう。

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