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#2 夢での再会

不定期的に、私の夢には随分昔に亡くなった母が登場します。

何をするでもなく、
ただ日常のなかに平然と母がいる。

そこではお別れをしたという事実が無くなっているけど、私はお別れしたという記憶を覚えている世界です。

毎回夢のおおまかな流れは決まっていて、

母はちょっとだけ病弱で、それでも美容師の仕事が出来ていることになっています。
私は、あんなに苦労して悲しみを乗り越えたのに、どうして今更平然と目の前にいるんだろうと湧いてくる不安な気持ちを一生懸命隠そうとする。
また会えた喜びより、また失うかもしれない不安が優って心がぐらぐらしてしまう。

それでも少し悲しんだあと、今度こそ大切にしなくちゃと心に留めながら淡々と日常を送ることにする。

ご飯が美味しくて涙が出そうになったり、運転できないはずなのに車に乗っていたり、リビングで寛いでいたり、色んな日常があるんだけど、とにかくいつもただの平凡な暮らしの中に居る。

そこらへんで目を覚まして、私の本当の日常がやってきます。

私はさっきまで追体験していた不安と眠たい気持ちとに挟まれて“本当の日常”ってなんだろうと思いつつ、ぼうっと朝の日課に取り掛かる。

死は肉体を失うことだけれど、こんなに鮮明に夢の中で生きていてくれると、本当の死はこの世に肉体を持つすべての存在から忘れられることだと思わされます。

そして今生の中に居る私の命は私自身だけのものではなくて、私を愛し育ててくれた親を始め、ずっと上まで遡る祖先との繋がりの中に居るんだということを考えさせてくれます。

記憶や言葉は本当の死をちょっとだけ引き伸ばしてくれるから、だから生きているのかなと思う。

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