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非認知能力を育てるためにできること

このnoteの目的:読んだ本のメモ

「私たちは子どもに何ができるのか ― 非認知能力を育み、格差に挑む」(2017) ポール・タフ (著), 高山真由美 (翻訳), 駒崎弘樹 (その他)

気になった部分や印象に残った部分だけですが、備忘録として。特に前半部分は親(家庭環境)が与える影響について、後半は教師(学校環境)が与える影響について書かれており、今回は前半部分をメインにします。

※(no.**)はkindleの位置No

ひとことで言うと

一つの解法はないが、結局のところ、子どもが直面する困難やストレスに対して周囲の大人が子どもの気持ちに寄り添って一緒に悩んだり、手を差し伸べたりするというあたたかな関係性が大事。と解釈しました。

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非認知能力とは

・やり抜く力、好奇心、自制心、楽観的なものの見方、誠実さといった気質や、ストレスに対処できる弾力性(レジリエンス)

・対して読み書き、計算、分析能力など(いわるゆ学力?)を「認知能力」と区別する

・非認知能力はカリキュラムや教科書などで認知能力と同じような方法で教えることはできない。好奇心をもて!とか自制心をつけろ!とか言ってテキストにマーカー引かせたところで身につかないよね、って話。

非認知能力は子どもをとりまく環境の産物

子供たちのやり抜く力やレジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、最初に働きかけるべ貴場所は、子供自身ではない。環境なのである。
環境による影響のなかで子供の発達を最も左右するのはストレス

幼い時期に経験した強いストレスは、前頭前皮質(知的機能をつかさどる脳の部位)の発達を阻害して、感情面や認知面での制御能力が育ちにくくなるらしい。また小さな挫折でも圧倒的な敗北のように感じたり、ちょっとしたことで深刻な対立関係に陥ったり、といったことがおきると。(no.287)

子どものストレスに対し、周囲の大人がどう対応すべきか

・サーブとリターン

子どもの話や泣き声(サーブ)に対し、しぐさや表情やこどばで反応(リターン)すること。これ自体が子どもにとっての発達に重要。脳内の感情、認識、言葉、記憶を制御する領域同士の結合を強めるとのこと。(no.320)

・子どもがうける圧力の調整

特に子どもが強いストレスを受けて動揺しているときに、親も厳しい反応をするのではなくストレスに対処するのを助け、落ち着きを取り戻すことを手伝うことが、その後の子どものストレス対処能力にプラスの影響(no.327)

アタッチメント(愛着)によって安心感と自信が根付く

・心理学用語「アタッチメント」

生まれて最初の12ヶ月のうちに温かく気配りの行き届いた子育てを経験した子供は、多くが親と強い結びつきを形成する。研究者たちはこれを「安定したアタッチメント」と名付けた。(no.552)

・「安定したアタッチメント」があることによって、子どもの心に安心感と自信が深く根付く。心理学用語で「心の安全基地」ができる。これがあると成長したときに思いっきり冒険できる。注意深く物事に集中できたり、好奇心とレジリエンスを示したりする。(no.559)

・そもそも親自信が貧困などの要因によりストレスに晒されている場合、子どもに対して配慮の行き届いた、落ち着いた反応をすることが困難となり、安定したアタッチメントを育むことが難しいという状況がある。(no.559)

学習のための積み木

・アタッチメントや非認知能力は、集中力や学業への粘り強さの発達に関係するので学業の成績にも影響する。

・高次の非認知能力(レジリエンス、好奇心、学業への粘り強さ)の土台には、自己認識能力や人間関係を作る能力が必要で、さらにその土台には安定したアタッチメントやストレス管理能力が重要(no.820)

↓図参照(no.830)

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内発的動機付け

「有能感」「自律性」「関係性(人とのつながり)」の3つの要素が満たされるときに、人は内発的な動機付けができる(no.968)

自律性:自分の意思でやっているという実感があり、管理強制されていると感じさせない

有能感:やり遂げることはできるが簡単すぎないタスク、現在の能力をほんのすこし超える課題

関係性:(教師に)好感をもたれ、価値を認められ、尊重されていると感じるとき

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そのほか、気になったことや考えたこと

経済力→非認知能力→認知能力(学歴etc..)という影響パスもある

よく学歴の高さと(親の)経済力は比例するって言うけど、それが直接的に塾に行かせるお金があるかどうか(=認知能力強化のためのコスト負担が可能かどうか)という話だけではなく、家庭環境におけるストレスや困難(本書では「逆境」って言葉)によって非認知能力に差が出る→結果的に粘り強さ・勉強への向き合い方にも差が出る、みたいなものもあるんだなーと知った。

良いストレス(or 必要なストレス)はどんなものだろうか?

幼少期のトラウマや強いストレスが非認知能力の成長にはネガティブな影響があることはわかったし、感覚的にも納得感がある。一方で成長の過程ではある程度のストレスとか負荷があるものだし、まったくストレスが無いのもよくないのでは..?という気がしている。例えば弟が生まれたことは長男にとって喜びでもありストレスでもあっただろう...。野菜一口でいいから食べなさい、とか言われるのもストレスだろうな...笑 この辺の、幼い頃の小さなストレス(であろうこと)の積み重ねは必要な面もありつつ、どう接していくのかはやっぱり悩ましいところだな〜と思う。

あと、この本の中でいう「子供時代の逆境(ACE)」の研究の調査項目としてあげられている項目(「両親の離婚」とか「家族の中に精神疾患のある人がいる」とか)ってどんな線引きをしている調査なんだろうなぁと気になった。(子ども時代に経験したトラウマの数と成人してからかかった内科疾患に相関がある、という研究らしい。またスコアが高いほど鬱や不安に悩まされたり、自殺や自己破壊的な行為におよぶ可能性が高かったとのこと。p.373あたり)

・成功に影響を及ぼす脳の発達は、人生の最初の3年間に起こる

らしい。一番土台の部分は幼いときにできあがるからですね。むしろアタッチメントは生後12ヶ月の間で形成されるとのこと。

ただ、この書き方すると3歳児神話を助長するというか、だから3歳まであは親がみてなきゃ...!みたいな感じになりそうで注意しよう。あと、主題からはずれるけど、他にもアタッチメントの下りで「母親との〜」みたいな表現が気になっちゃったな。父親ともアタッチメントは育まれるし、両親以外もしかりだよね。


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