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ライブドアショックの思い出 (2006)

この1週間(2021年2/28~3/5)の一部のアメリカ新興株の凄まじい下げを見て、ライブドアショックを思い出したので書いてみます。

ライブドアショックとは

日本が小泉政権下で株高に沸いていた2006年1月当時、新興スター企業のライブドアに粉飾決算疑惑が持ち上がり、新興企業株たちが一時的に暴落したショックのことです。

当時、ネット証券というものが普及し始め、個人投資家が存在感を増していた最中でした。彼らに人気のあった新興企業の株暴落により、個人投資家の一部は大怪我を負いました。私は、ほぼ投資額の全額を失い、撤退を余儀なくされました。

同じことが再現するとは思いませんが、ここ3日間のNASDAQを見ていて、部分的に「歴史は繰り返すのかもね…」と思います。

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(出典:https://finance-lite.com/2018-08-21-063858/)



では、ここから本題。

事件までの相場環境

2005年、東証マザーズやJASDAQ銘柄は、IT系企業を中心にとても活況に沸いていて、ほぼ毎日株価が上がる、材料になるニュースが出る、といった環境にありました。その中心に居たのが株式会社ライブドアであり、経営者の堀江貴文さんでした。TVにも多く出演され、タレント的な存在でもありました。

同じころ、IT系以外にも、不動産流動化サービス会社(今でいうREIT組成会社で、当時は目新しかった)の一角も盛り上がっており、たぶんこのころ、金融緩和で余ったお金がそういうチャラチャラした銘柄に流れていたのだと思います。

当時の私の状況

私は当時大学生で、バイトで溜めた資金をほぼ全額、株式投資(というか投機)に入れていました。はじめの頃こそ、初心者なりに、バフェット本を読んだりして、PERや自己資本比率、営業利益率などを見て買っていました。最初の頃に買ったのは、コーエー、住友化学、サイバーエージェント等、自分が何となく身近に知っている銘柄でした。でも2005年後半になる頃には、新興銘柄は買えば大抵何でも上がる状態に確変したので、私のPFもそうした銘柄が多くなりました。

今ほどではないにせよ、当時出盛り期だったブログを中心に、ネットでも楽観的な見立てが多かったことにも感化されました。「次はこの会社が来るかも」「予想通りライブドアに材料出た」的な話題を多く目にするようになり、しかもそれらが押しなべて的中していたので(上げ相場なので当然ですね)、値動きの遅い製造業の株を売って、私は愚かにも、そうした新興系に走ることとなったのでした。しかも大学生なのに、信用取引口座も開いて、信用2階建てまでしていました。

事件直前の私のポートフォリオ

覚えている限りでは、こういう感じでした。

①ライブドア
②サイバーエージェント
③Eトレード証券(現・SBI証券)
④松井証券
⑤フィンテック・グローバル
⑥アルデプロ

あと他にもチャラい銘柄がいくつかあったはずですが(笑)覚えていません。実質、今残っている会社は、②③④だけですね。3か月ほどでどんどん騰がっていったので、それを担保に信用新規買い(2階建て)…というのをやっていた記憶があります。原資は170万ほどで、口座の評価額は500万ほどでした。毎日利益が増えていくのを見るのが楽しくてウキウキしていました。

そして、事件当日

ライブドア&ライブドアの子会社たちはストップ安になり、そのほかの新興企業も、軒並み10%以上下がりました。詳しくは下頁の表をご覧ください。

いくつかピックアップ。(これ、2006年1月17日の1日分の下落ですよ;;)

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注目すべきは、東証と新興(マザーズ、JASDAQ)との比較です。

東証もTOPIXも、新興に比べれば軽傷で通過しています。つまり、一部のハイテクやグロース(と思われてチヤホヤされていた)銘柄だけが派手に焼かれたのです。

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その後(2日目以降)の動き

結局、ライブドアとその関連株は、しばらく連続ストップ安になりました。本体のライブドアは、直近で700円ほどあった株価が、後日、130円くらいで寄り付きました。

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(出所:https://www.jasdaq.co.jp/famous/livedoor.html)


マザーズ系銘柄は、ライブドアでなくても暴落後しばらく戻りませんでした(マネックスショックも追い打ち)。


私の運命

↑の①~⑥の銘柄は、いずれも新興銘柄だったので、暴落しました。そして、特に①がストップ安で、とにかく売れず、数日後にようやく売れたものの、取得価格の遥か下でした。

そして、信用2階建てをしていたので、強制決済されてしまいました(たしか、当時の証券会社にログインしたら「本日で反対売買します」みたいなアラートがあった気がする...)。

「あと半月待っていれば、ライブドア関連株以外は回復してくるはず」と思っても、自分の意志で待って売ることすらもできず、2006年2月には、口座にはほぼお金が無い状態となりました。

5万円くらいだけ残ったのですが、そのころにはもう何もする気が起きず、沈んだ気持ちで過ごしました。(この後、社会人になって大分経ってから株を再開するのですが、そのころには口座のパスワードすら忘れており、ログインして5万円残っているのを見て得した気分になったものでした…。)

私の場合、今思えば、追証でマイナスにならなかったこと(追加の振込を求められるところまでは行かなかった)が、不幸中の幸いでした。また、一切の株をやめてしまったので、2008年のリーマンショックに呑まれることもありませんでした。その2点だけが数少ない幸運でした。


自戒、反省

なぜ退場させられたのか?と考えると、答えは明らかでした。

価値の裏付けの希薄な、人々がチヤホヤしているだけの銘柄を買ったから

当時のライブドアや不動産流動化銘柄というのは、まさにこれでした。

その特徴は、

●「これから大化けする」と予感させる、目新しくて時代の先端を行っているようなサービスを展開している(と自称している)
●売上や利益は、まだあまり大きく立っていない or  赤字
●材料となる表面的なニュース(提携、買収、プロダクトリリース、株式分割、証券会社のUpgrade等)が頻繁に出てくる

・・・といったところです。

昨今の日本や米国の相場を見ていて、私がどうしても一線を引いてしまう銘柄が結構あるのは、この時のトラウマがあるせいだと思います。

もちろん、ハイパーグロース株には、それなりの成長見通しがあってこそ、高い値段が付けられているのだと思います。つまり「成長した暁には今の株価は妥当」と思える水準だからこそ買われているのでしょう。Zoom Video やAppleは、確かに株価が高めですが、でも事業モデルは見えやすいし、将来の成長シナリオも堅いと思います。

しかし、そもそも全然売り上げが立っていなかったり、利益が出る見通しすら怪しい銘柄が、「これから大化けする」と予感させる、時代の先端を行っているようなサービスを展開している(と自称している)というだけで、騰がっているのを見ると、どんなに他の人が濡れ手で粟状態でも、自粛しています。

市場分析や銘柄分析をしてみて、もし収益の見込みがあると確信できるのなら、それ買いだと思うのですが、わからないものは買わない。たとえ騰がっていても買わない。それが、私の得た教訓でした。

たとえ、証券会社が「レーティング:A」を付けていても、そういう銘柄は、それなりの銘柄ということなのだと、自分に言い聞かせています。

むろん、今回のNASDAQの下げには、ライブドアのような事件性など無く、構造的なもの(金利の)だと思いますが、地に足のつかない銘柄を囃してきた挙句の振るい落としという点では、少し似ているように思えます。所謂ブルーチップ(優良)銘柄があまり下げてないという点でも、類似性を感じます。



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