ボケる入れ歯 脳が覚醒する入れ歯
認知症状があっても脳は覚醒します。歩けずトイレ・入浴も旦那さんに介助されている認知症の女性(写真)でも、入れ歯でしっかり噛めるようになると、ハッキリと話すようになり、筋肉もつき、つたい歩きまで出来るようになりました。
噛むと全身のエネルギーが高まるのですが、同じカロリーの食べ物を直接胃にいれても体熱生産がそれほど高まらないのに対して、口から噛んで食べると体の熱生産が上がるのです。
噛めるようになると、目ヂカラまで変わります。死んだような目が、イキイキとしてきます(写真)。噛むことで、側頭筋をはじめとする筋肉が動き、脳血流量があがり、酸素や糖分、栄養素も供給され脳が活性化します。
噛んだ情報は、脳神経を介し、瞬時に脳に伝わり、脳内で、やる気ホルモンや脳内麻薬などが放出され「心もからだ」も元気になるのです。
逆に、噛んで食べれないことは、野生動物なら死を意味しますが、人間は、ものすごく柔らかく煮たり、細かく刻んだり、ミキサー食で生きのびれるようになりました。
しかし、噛めないと、体熱生産が上がらないだけでなく、脳への刺激や栄養分を得ることもできません。誤解を恐れずに言うと、ボーっとした「生きたしかばね」のように毎日になってしまいます。
入れ歯でも「噛める」かどうかで人生がかわります。ボケるかどうかにも影響します。奥歯でかめる人は、脳の記憶領域がしっかり残っているのです。
「人の名前を思いだせない」ことや、仕事や学業でも記憶力が悪いと困りますが、特効薬は、しっかり何度も「噛む」ことです。上下総入れ歯の女性Aさんが、夜寝るときも入れ歯を外さない理由は、「はめていないと、記憶がなくなりそうで、気持ち悪いから」と言っていました。
あわない入れ歯を使っている人に、「痴ほう症」が多いだけでなく、生活の自立度が低いこともわかっています。
不適合でガタガタしている、外れやすいような入れ歯を使っている人は、「気分が落ち込みやすい」「望ましい人間関係をつくりにくい」「視覚障害がでやすい」といった特徴もあります。
しかし、先ほどのAさんは、誕生日に、新しい入れ歯を装着でき、嬉しくて、ご近所の家で話し込んでいました。適合のよい入れ歯をいれると全身状態はもちろん、心までイキイキとしてきます。
わたしたちの晩年およそ12年間は、すぐ外れるガタガタする入れ歯を使い、そのうちに「もう入れ歯は使ってません」となるので、とても残念です。歯科医師も「入れ歯はもう無理かな」と思いがちです。
戦前の生れ人は、ピッタリと適合の良い入れ歯が多いのですが、顎の骨がしっかりと残っているからです。ところが、戦中・戦後生れの人は、食生活の欧米化や30代・40代からの歯周病(無症状)により、高齢になると、顎がやせ細り、硬いハグキも粘膜におきかわり、粘膜が動くので入れ歯が安定しないのです。
歯科専用のやわらかいクッション材のようなものを用いると、ガタガタもある程度改善します。しかし、国の制度では、いずれやわらかい材料を硬いものに置き換えないといけないので、動く粘膜と入れ歯がこすれて痛くなってしまいます。
入れ歯は、保険診療で赤字になりやすいだけでなく、クレームも多い分野なので歯科医師もあまり積極的になれません。では、自費診療にすればよいのかというと、そうでもなく、材料が高価になるだけで根本的な解決にはなりません。
現代の高齢者の「ヒモ状のハグキと粘膜」にも適合する入れ歯を作るには、今までの教科書的なやりかたとは全く違う知識、技術が必要となります。
人間のしっかり噛んで食べたい欲求はとても強く、全部の歯をインプラントで1000万円のコンサルをうける患者Bさんのような人もいます。私の兄弟子K先生は、都内で「ひも状のハグキと粘膜」に適合する入れ歯を「300万円」で診療しているのですが、Bさんは「そんなに安いんですか」と返答したそうです。
ちなみに、写真の女性には、300万円の入れ歯と同等の方法でつくりました。研修会で「この写真の女性の入れ歯はいくらだと思いますか?」とクイズをだしたところ、「800万円!!」と答えてくれた男性がいて嬉しかったです。
クイズの正解は、保険で「7010円」です。
舌や頬の筋肉をきたえると、現代食と歯周病で「やせてしまったハグキ」でさえ、入れ歯でも、美容整形したのというくらい美人になることがあります。
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