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ゼロから話せるシリーズ

旧知の編集者であり友人であるIさんから依頼を受けた「ゼロから話せる」シリーズのカバーリニューアル。
全28作(うち1冊は新刊)のシリーズのため、デザイナーとの打ち合わせ前から出版社内でかなり打ち合わせが行われたのか、すでに方向性はしっかり固められており、色々なアイデアを出したけれど結果デザインとしては文字通り「リニューアル前のカバーを現代的にブラッシュアップする」という形でまとまりました。

その上で、自分のやったこと

①シリーズ物なので、28冊すべて、文字・写真はすべて同じサイズ・位置に統一して収まる形に調整
②書店でこのシリーズのフェアをする際に共通の帯をかける事があるので、カバー表1(表面)も背も文字が帯に隠れない、もしくはすべて隠れる位置に調整(※)
※全て隠れる形にすれば、その隠れた部分を帯に刷って解決できるので
③カバー・背も含め、すべての言語で長体(※)をかけずに収めるように調整
※長体:スペースに文字が入りきらない時に、ひとつひとつの文字の左右比率を変えることにより文字幅を狭めて文字を収める方法。左右を縮める時は「長体」天地を縮める時は「平体」と呼ぶ。書体は変形させずそのまま使うことを前提に作られているものがほとんどなので、変形させると見やすさ・読みやすさ・美しさはどうしても損なわれがち
④シリーズをいくつかの色のカテゴリーに分け(※)プロセス4C印刷時の各色%、特色刷り時の番号を設定
※はじめはすべての本の色を変えようと思ったが、普通の人が見てハッキリとすべて違う色だという事が認識でき、しかも色としてキレイで、墨文字・白抜き文字両方の強弱のバランスを崩さずに読む事ができる色構成は不可能と判断
⑤どんな写真が来ても文字の可読性に問題が出ないよう白フチを調整
⑥言語によって本文印刷が単色・2色刷りの2パターンあるので、どちらの場合も違和感のない明度に調整

上記の課題は、まず出版社からのオーダー、次に何も言われなくても行うこと、そしてオーダーを反映する過程で気づいた別の課題です。

使用する写真について

カバーに使用する各国写真は、まず編集部が目を通した、このシリーズに合いそうな候補写真をたくさん送ってもらい、その中から以下の条件に合うものを探しました。

  • 装丁に使って魅力的なもの

  • 他国と区別がつきやすそうなもの

  • タイトルまわりを邪魔しない、できるだけリニューアル前と被らない(※)などをデザイナーが判断。OKの写真をデザインに貼り込んだ上で複数案として編集部へ送付、そして最終的な判断をしていただくという形です。※リニューアル前と後の書籍が書店で一緒に並ぶことは無いが、中古も販売するネット書店では被ってしまう可能性があり避けられるなら避けておいた方がいい。ただ、パッと見てその国とわかるような風景はやはりあるので(例えばフランスのエッフェル塔など)その場合は構図や雰囲気ができるだけ被らないよう注意する。

リニューアル前のカバーは、あえてその国をすぐイメージできないような写真を選択しているものもあったのですが、今回6冊刊行している段階では、素直にわかりやすい写真が選ばれている印象です。

出来上がった本を見ての感想

わかりやすい写真を全面に敷き、オーソドックスな文字を白フチで飾る。こういう装丁は現在あまり無いので少し懐かしい雰囲気がしますが、そのおかげで手に取ることにぜんぜん抵抗感のない、すごく手に取りやすいデザインになっています。
これはこのシリーズの目的としっかり合致しており、デザインしていて「なるほどこれが出版社の意図か」と唸ったサイワイ(※)でした。
※屋号柄、仕事関係のニックネームに「saiwai」を付ける事が多く、その結果、ネット経由で知り合った方には「サイワイさん」と呼ばれる事が多々あり、自分自身もそう呼ばれることに最近はそっちの方がしっくり来ている。


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