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NTRについて真剣に考察してみる。

三人の登場人物のうち、誰かに感情移入する、という楽しみ方

*創作限定の話です。

「NTR」は主な登場人物は三名。

「寝取る男」
「寝取られる男」
「寝取られる対象となる女性」

その中で、「どの登場人物に感情移入するか?」で楽しみ方を分類されることが多い。


「寝取る男」
「寝取られる男」
どちらかの男に感情移入する場合、「寝取られ対象の女性」は「モノ化」する。

男の登場人物に感情移入する場合は、「対象となる女性は、男同士が勝敗を争うための道具」に過ぎなくなる。

この場合、男同士の関係が主眼になり、女性は正に「モノ(トロフィー)化」される。
個人的には「男同士で勝敗を競う」という意味では、バトルものやスポーツものの亜流に見える。

「ベルセルク」のガッツ、グリフィス、キャスカの関係がわかりやすい。

「寝取る男」に感情移入すれば、「屈服させる喜び、万能感」を味わえ、
「寝取られる男」に感情移入すれば「屈服させられる屈辱、無力感」を味わう。

NTRは「寝取られる男」が主人公に据えられているので、基本的には「屈服させられる屈辱、無力感」を味わうことが最もオーソドックスな楽しみ方と言える。


上記のオーソドックスな「男に感情移入する」楽しみ方以外に、「女性に感情移入して楽しむ」という楽しみ方をしている男性も多い。

女性に感情移入して読む場合、「寝取る男」と「寝取られる男」は、
「男同士の優位性を測る道具として、自分(女性)をモノ化している」
という意味では等価の記号に過ぎなくなる。


女性に感情移入した場合、二人の男は「記号化」する。


男に感情移入するか、
女性に感情移入するか、
誰に感情移入するか、でジャンルそのものが変化する。

「寝取る男」「寝取られる男」に感情移入する場合は、「男同士の勝敗(バトルものに近い)の話」になり、「女性はモノ化」する。

女性に感情移入する場合は、「二人の男は記号化」する。
理不尽な被支配、押し付けられた(受け入れさせられる)ものとの闘いと葛藤がテーマとなるのではないか。

以上が「どの登場人物に感情移入するか」による、「NTRの楽しみかたの分類」だ。

登場人物の関係性や人物像を俯瞰する、という楽しみ方

次に、
「誰に感情移入するか」
「誰の視点で楽しむか」ではなく、

「寝取られる男(主人公)」
「寝取る男」
「寝取られる女」
この三人の関係性を俯瞰して楽しむ際の分類を考えてみたい。

【大分類①】「寝取る男」の人物像と目的
【大分類②】「寝取られる男」と「寝取られる女性」の関係性
【大分類③】 寝取られる女性の心境

を順番に考えていく。


【大分類①】「寝取る男」の人物像と目的の分類表


★大分類①「寝取る男」が女性にマジ惚れしていて、女性の心が目的。
★大分類②「寝取る男」の目的は、女性(の心)ではない。


【大②】中分類①「寝取る男」は「対女性」に目的や意識がある
【大②】中分類②「寝取る男」は「対寝取られる男」に目的や意識がある

『中②』小分類①「寝取られる男」は誰でもいい
『中②』小分類②特定の相手を「寝取られる男」として標的にする


※※※

【大分類:「寝取る男」の人物像と目的】

「寝取り対象の女性」に対して持つ感情が「遊びかマジ惚れか」に分けられる。

※※※


【大分類・①】「寝取る男」が女性にマジ惚れしていて、女性の心が目的。

「女性の心身」そのものが目的となっている。
寝取られる男」は、「寝取る男」の主観世界では脇役となる。

極論を言えば、「(寝取る)男」と「(対象となる)女性」の恋愛にスポットが当てられ、「寝取られる男」の透明化が行われる。

NTRというよりは、少女漫画に見られる「当て馬」に近い。

※※※

【大分類・②】「寝取る男」の目的は、女性(の心)ではない。

女性にマジ惚れしていないケース。
「寝取る男の目的は何か」が問題になる。

目的は大きく分けて
「対女性(例:性欲など)」
「対男性(寝取られる男・主人公)」
に分けられる。
「寝取る側の男の意識がどこに向いているか」で、話のジャンルが変化する。

【大②】『中分類・1 寝取る男は「対女性」に目的や意識がある』

女性の人格や心ではなく、体や背景(地位や金銭など)に目的がある場合。
最悪のケースとしては、女性の自尊心を棄損する遊びが目的であったりする。
寝取る側の男の人格は、「テンプレ化した下衆」であることが多い。

「女性をモノ化している寝取る側の男」の人格が必要とされていない。
メタ目線で見たときは「モノ化されているのは寝取る側の男である」と考えると、皮肉が効いたパターンだ。


【大②】『中分類・2 寝取る男は「対寝取られる男」に目的や意識がある』

「中分類・1」とは逆に、女性が「モノ化」されるパターン。
最も古典的かつオーソドックスな「NTR」だと思われる。
ここからさらに
「寝取られる相手は、男であれば誰でもいいのか」
「特定の相手が標的か」
で分岐する。



【大②】『中②』(小分類・1 「寝取られる男」は誰でもいい)

「寝取られる男」も「対象となる女性」も誰でもよく、「誰でもいいから同性に対して、自分の優位性を確認したい」パターン。

「自信や自尊心が目的」の「対自分」という独立したパターンと考えることもできる。
自己葛藤に自分で耐えるのではなく、他人の反応からしか自己を確立できない。
深掘りすれば純文学のテーマにもなりそうだが、大抵の場合は、単なる最悪な男という皮相的な人物像でしか描かれない。


【大②】『中②』(小分類・2 「寝取られる男」として、特定の相手を標的にする)

「寝取る」こと自体が、寝取られる男に対するアピールであるパターン。
ガッツ、グリフィスの関係が典型。

モチベーションとしては復讐や競争意識が多いだろうが、変わり種としては恋心などもある。
「好きな男の好きな女性だから触ってみたい」
個人的に好きなパターン。

この百合のパターンで「好きな女の子の好きな男を寝取ってみた」という話を書こうと思っていた。(男を通して、好きな女の子と性行為をする女の子が主人公)

以上が【大分類:「寝取る男」の人物像と目的】のパターンだ。


【大分類②】「寝取られる男」と「寝取られる女性」の関係性

続いて
【大分類②】「寝取られる男」と「寝取られる女性」の関係性

「恋人、夫婦などの公的関係か否か」が基準になる。


(分類表)

★大分類①「寝取られる男」と「寝取られる女性」は夫婦、もしくは恋人同士である。

【大①】中分類①「寝取られる男」は寝取られることを了承済である
【大①】中分類②「寝取られる男」は寝取られることを知らない


★大分類② 女性は「寝取られる男(主人公)」のことを何とも思っていない


※※※

【大分類・①】「寝取られる男」と「寝取られる女性」は夫婦、もしくは恋人同士である。

この場合、「NTRイベントのみではなく、二人の関係性の変化」が物語のテーマ、少なくとも背景としては出てくる。

【大①】『中分類・1 「寝取られる男」は寝取られることを了承済である』
借金、脅迫などが背景にあった。
自分の「寝取られ願望」のために、妻(彼女)への猜疑心。
妻(彼女)に裏切られていることを知っている、など。

この後の分岐は、主に女性の心境によって左右されるため、【大分類③ 女性の心境】に譲る。


【大①】『中分類・2 「寝取られる男」は寝取られることを知らない』

「寝取られることによる、無力感、敗北感、屈辱感」が味わえないため、「NTR」からは外れるかもしれない。

普通の三角関係のストーリーになりそうだ。
「金色夜叉」「モンテ・クリスト伯」など、太古の昔からこの手のストーリーは多い。

この場合、「寝取られた男」の恨みが「寝取った男」ではなく女性にいくパターンが多い(*「モンテ・クリスト伯」は違うか)ことが昔から気になっていた。
何故だろう?
知見がある人に教えて欲しい。

※※※


【大分類・②】女性は主人公のことは何とも思っていない

別名「主人公の妄想なので、何も生まれないパターン」

以前、棘のまとめで「NTR」としてこのパターンが紹介されたとき、女性(と思われる人たち)からえらく評判が悪かった。

「寝取る男」以上に、主人公(寝取られる?男)が女性をオブジェとしてしか見ていないので、女性から見れば、それを「寝取られ」と表現すること自体に疑問を感じるのだろう。


【大分類③】「寝取られる女性」の心境

オーソドックスなNTRでは、モノ化されスルーされがちな「女性の心境」。
個人的には物語に彩りを添える、最も重要な要素のように思える。

(分類表)
★大分類①女性は「寝取られる男」(主人公)をどう思っているか。

【大①】中分類①女性は主人公のことは何とも思っていない
【大①】中分類②女性も主人公に好意を寄せている


★大分類②女性は「寝取る男」をどう思っているか。

【大②】中分類① 女性は「寝取る男」のことは何とも思っていない
『中①』小分類① 女性は『寝取る男』を何とも思っておらず、なおかつ主人公のことも何とも思っていない
『中①』小分類② 女性は『寝取る男』を何とも思っておらず、なおかつ主人公に好意がある。

【大②】中分類② 女性は「寝取る男」に好意がある
『中②』小分類① 女性は「寝取る男」のことは何とも思っていない
『中②』小分類② 女性は『寝取る男』が好きで、なおかつ主人公のことも好き


★大分類③女性はNTR後、どのような心境になるか

【大③】中分類① 女性は身も心も「寝取った男」のモノになる
【大②】中分類② 女性の心「寝取った男」のモノにならず苦しむ


※※※

【大分類・①】女性は「寝取られる男」(主人公)をどう思っているか。

【大①】『中分類・1 女性は主人公のことは何とも思っていない』

ドラマが生まれにくいパターン。
女性の主観世界では、「寝取る男」と「自分(女性)」で関係性で完結している。

「寝取る、寝取られる」の関係性が、主人公の頭の中でしか存在していないため、「寝取る男」は「寝取る男」でさえない。

果たして「寝取られる」とは何か?
という概念が問われるパターンであり哲学的とさえ思えるが、そこに主眼を置いた話は、未だに見たことがない。



【大①】『中分類・2 女性も主人公に好意を寄せている』

このパターンは、「女性は主人公が好きなのに、なぜ、寝取る男と関係性を持つのか」が重要になる。
ここでドラマを作れるところが、このパターンの楽しさだ。

ちなみサルトルは、「縛られている女が一番エロい」と言っている(と三島由紀夫が言っていた)
つまり「人間は、他者が主体性を奪われている状態に、最も性的興奮を感じる」らしい。
そう考えると「心が縛られている状態」は、かなりエロいのではないか、という知見を得た。


※※※

【大分類・②】女性は「寝取る男」をどう思っているか。

これは非常に重要。
何故なら「心が縛られている状態(女性の自由意思)」かどうかの分岐だからだ。


「寝取る男」のことは何とも思っていないのに寝取られる→エロ傾向
「寝取る男」に惹かれている→恋愛、自己葛藤傾向
にストーリーが展開しやすい。


【大②】『中分類・1 女性は「寝取る男」のことは何とも思っていない』

上述したように「女性の自由意思が制限されている状態」なので、この要因ひとつでエロ要素が加えられる。
 
【大②】『中①』(小分類・1 女性は『寝取る男』を何とも思っておらず、なおかつ主人公のことも何とも思っていない)

NTRという分野では恐らく異色。
女性の主観世界ではどちらの男とも関係性が成り立っていない。
女性主観で言えば、「自分自身の問題」として話が完結している。
男性主観で言えば、「女性が何を考えているか」がイマイチわかりづらく、「支配欲」という軸が発生しにくい。(たぶん)


【大②】『中①』(小分類・2 女性は『寝取る男』を何とも思っておらず、なおかつ主人公に好意がある。)

女性にとってはかなり酷なパターン。
個人的には女性が「聖女化」しやすいので余り好きではない。
このパターンなら、通り一遍の「縛られた女」ではなく、生の葛藤が見たい。(個人の意見です)

〇〇

【大②】『中分類・2 女性は「寝取る男」に好意がある』

「節子、それNTRちゃう。ただ振られただけや」
と突っ込みたくなるパターン。

しかし【大①ー『中①』】のように、「『寝取られた』が自己の内部の妄想に過ぎないとしても、立派なNTRである」とカテゴライズされる場合もある。


【大②】『中②』(小分類・1 女性は『寝取る男』が好きで、なおかつ主人公のことも何とも思っていない)

繰り返しになるが、「寝取る、寝取られる」という概念から考え直したほうがいいパターン。
でも古典の名作は、だいたいこういうものが多い気がする。(偏見)


【大②】『中②』(小分類・2 女性は『寝取る男』が好きで、なおかつ主人公のことも好き)

この場合は、「寝取る男が女性をどう思っているか」でさらに分岐する。

・「寝取る男は女性のことを何とも思っていない(モノ化)している」→キャスカパターン
・「寝取る男も女性のことが好き」→「金魚妻」パターン

後者は女性向けの恋愛ものには、比較的よく見られる。


※※※※

【大分類・③】女性はNTR後、どのような心境になるか

【大③】『中分類・1 女性は身も心も「寝取った男」のモノになる』

ドM向け、もしくはドS向け真のNTRという感じがする。

「寝取られた男(主人公)」に感情移入すれば、敗北感、裏切られた(?)屈辱、踏みにじられた悔しさを余すことなく味わえる。
「寝取る男」に感情移入すれば、優越感を味わえる。


【大③】『中分類・2 女性の心「寝取った男」のモノにならず苦しむ』

女性の中でトラウマになる未来が見える、けっこうキツイパターン。
NTRではなく、別の話に移行しそうだ。


まとめ

シチュエーション自体が「NTR」でも、パターンによってジャンルがガラリと変わるところがNTRの面白さだ。

「三つ勢力があると、二つの勢力間と比べて、関係性がいっきに多様になる。政治が生まれる。だから三国志は人気がある」
と以前聞いたことがあるが、NTRも同じ楽しさがある。

主要登場人物が三人いるから、関係性のパターンが無限に考えられるところに面白さがある。



結論
NTRはほんと奥が深い。

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