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「発達障害女性の半生漫画がムカつかれる理由」が、まったくわからなかった。

うん? この増田が指摘しているのは、下のかたの漫画でいいのか?
タイトル変えた?

https://twitter.com/fukufuku_diary/status/1581977574023913472


漫画の構成が「辛いこともあったが乗り越えた克服者」の体なんだよね
でも内容見ると社会人として全然使い物にならず、彼くんが生えてきて結婚して子供産んで夫に支えてもらってるだけ。

(上記増田より/太字は引用者)

これが商業誌とか、もしくは「万人に受ける面白さを追求している」と銘を打っているならこういう批判もわかる。
でもこれ、そもそもが「自分語りを漫画にした」だけでは?
「万人が客観的に楽しむこと」を目的としているわけではない。(と思う)

自分の感想は、映画「ちょっと思い出しただけ」と同じだ。

この映画を見た感想は、他人の惚気話を聞かされているだ。
「恋愛映画を見た」という感覚ではない。
六年付き合った彼氏(彼女)がいたんだけど、色々あって別れちゃったんだ。今は結婚して子供も出来て幸せだけど、彼の誕生日になると「ああ好きだったなあ」「あの時、結婚していたらどうだったろう」って思い出すんだよね。
こう聞かされた時の反応は、「そうか、色々あったんだね」だ。
この映画の感想もこれなのだ。
「そうか、色々あったんだな」
この映画は「恋愛映画」ではなく、「輝雄×葉の惚気話」なのだ。
一般的な恋愛映画のように、共感するしない、萌える萌えないで見るものではない。

「ちょっと思い出しただけ」は恋愛物に関わらず、(視聴者が共感しやすいような)二人の内面を描いておらず、関係の経過だけを描いている。
「共感措置もなく、赤の他人の恋愛を見せられる」という訳のわからない話だった。

商業映画として見れば、これはどうか?と思う。
ただ日常で知人から、十分くらいに圧縮されたこの話をきかされたとしたら、「へえ、色々あったんだねえ」くらいの感想だ。特に文句はない。

「発達障害の女性の半生漫画」を読んだ感想も同じだ。「色々あったけど良かったね」で終わりである。

漫画を読んだ限りでは、「発達女性の半生漫画」の作者は他人に興味がないのではないかと感じた。
自分がこの漫画で最も好感を覚えたのは、「興味がなく理解も出来ない他人を、わかったふりをして描かないところ」だ。

こういう自分語りの漫画は、自分がいかに悪くないかを語るために、相対的に他人を悪者にする(されたこと以外のその人の内面やエピソードなど描いて、キャラ付けをする)ことが多く、これが読んでいてうんざりする。
ところがこの漫画は、主人公を嫌う周りの人たちに、起こった事実以外の人格が付与されていない。
主人公視点のこの漫画において、人間というよりは「理不尽な災厄」のように見える。

「理解のある彼くん」(この語も何だかな)も同じだ。
この「彼」は存在が示唆されるだけで、キャラ(人間)としては存在していない。
「主人公が働かず幸せそうにしている」という結果から逆算して、読者が「理解がある」と推測するに過ぎない。(この人の他の漫画かツイートで出てきている可能性もあるが)

自分から見ると、構成としては「成長もの」よりも神話に近い。あえてコンテンツとして考えるなら、「クトゥルフ神話」に似ていると思った。
主人公の意思は関係なく周りの環境に左右される話なので、感情移入のストレスはなかった。
「障害のある子が笑顔でいる→過去の私も意味のある存在に思える」という子供の認識のしかたは若干気になったが、これも人それぞれだと割り切れる。

特に強い主張や意見が含まれているようにも感じなかったので、むしろこれを「コンテンツとして評価する」という前提に困惑する。
内容としては、よっぽど仲がいい相手以外は、話半分で聞いてちょっと時間が経ったら忘れてしまうようなものではないか。(ひどい)

「コンテンツを読む」のか、「人のよもやま話を聞く」という前提の違いがあるのかな。
そこがよくわからなかった。

自分に「発達障害女性の半生漫画」が「ムカつく」要素がなかったのは、他人と比較する視点がないからだ。
「他の人は楽そうでいい」という視点が少しでもあったら、不快になっていたと思う。
よく知りもしない(知る気もない)他人の人生を「楽そう」「強いから」と言う人間は好きではない(穏当な表現)

みんなそれぞれの生きづらいさを抱えていて、それでも自分は自分をやっていくしかない。
こういう視点の人が好きだ。
(自分の苦しみを書けない、表に出せない、むしろ軽く扱うことで生きることが出来る人もいる。他人のことはわからない、という前提があるひとが好き)

自分も「自分」として生きていることがしんどいな、どうしてこうなのかな、と思うことが今でもある。
とりあえずは、ほどほどやっていたらよくやっていると思うようにしている。
大変なこともあるけれど、お互いぼちぼちやっていきませう。

*まだスッキリしないので、もう少し考えてみた。


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