【2022年7月23日(土)気になった記事について雑談】「ウクライナの穀物輸出再開に合意」から、ロシアの現状を考えた、「『認知領域』での戦いを重視している」という説明が怖すぎる、など。

2022年7月23日(土)新聞を読んでいて気になった記事についての雑談。
*専門家ではない人間の雑談・感想記事です。


◆ウクライナの穀物輸出再開が合意へ

ロシアが黒海を封鎖していて(ロシア側はウクライナが黒海に敷設した機雷のせいだと言っているが)ウクライナ国内の倉庫で山積みになっている穀物が輸出出来ない問題。
ずっと気になっていたので、輸出再開の目処が立ってホッとした。

日本はウクライナからは、直接はほとんど輸入していないようだが、市場で不足すれば値段は高騰する。アフリカや中東の人は、食糧不足で苦しんでいる。
ウクライナ国内の倉庫は輸出できない穀物でいっぱいになっており、これでは来年の作付けが出来ない、廃業するしかないかもしれないと農家の人が嘆いている。
世界中の人が困って誰も得をしない状況だ。

トルコは穀物輸入の約八割をロシアとウクライナに依存する。ロシアのウクライナ侵略後、トルコ経済は低迷し、4月にはインフレ率が70%に到達。
4月の世論調査では不支持が支持を上回った。

(2022年7月23日(土)付読売新聞9面)

ロシアのウクラナイナ侵攻前のトルコの経済状態がどうだったか知らないので何とも言えないが、不支持が支持をうわ回ることがニュースになるくらいだから、今よりは安定していたのだろう。インフレ率70%は……キツイな。
仲介役としてこの合意を守らせて欲しい。

また、ロシアのラブロフ外相も声明を発表し、ベロウソフ第1副首相が国連のグテーレス事務総長との間で覚書を署名したとしています。
そして「主な目的はロシアの農産物と肥料を世界市場に確実に円滑に届けることだ。とりわけアメリカやEUによる金融や保険に関する障害を取り払うため、農産物の輸出がロシアに科された制限から除外されることを目的としている」と述べました。
ロシアとしては、今後はロシア産の農産物と肥料の輸出再開に向け、働きかけを強めるとみられます。

(上記NHK記事より)

「制裁解除と引き換え」だと思ったら、「これから働きかけを強める」段階で合意するのか、という点が意外だった。
ロシアとしては
①中東・アフリカを敵に回したくない。
②何とかして制裁を解除したい。
というところなのだろうか。

ロシア国内の事情は分からないが、ウクライナの農家が「輸出出来ないこと」で悲鳴を上げているということは、ロシアの農家も事情は同じだろう。
片方が辛ければ片方が楽になる、のではなく、関わっている人間全員が苦しむのだからこんな馬鹿馬鹿しい話はない。


◆ロシア軍は力尽きる寸前?

人的資源や武器供給が難しく、台所事情はかなり厳しいのではないか、というのは自分もそうかなと思う。
公表されるロシアの声明が、どんどんトーンダウンしているからだ。

「穀物輸出合意」も「欧米の制裁解除と引き換えだ」からトーンダウンして、「合意するから制裁解除を考慮して欲しい」になっている。
どこかで一覧でまとめていたけれど(見つからなかった)、侵攻開始当初から今日までにロシアの目的は建前も本音もコロコロ変わっている。
侵攻当初はウクライナ全土の非ナチ化(ゼレンスキー政権の瓦解)、非武装化を唱えていたが、今やすっかり鳴りを潜めた感じだ。
次にドンバス地方のロシア系住民保護を唱えたと思ったら、

今や地理的な目標は変わった。ドンバス地域だけでなく、ヘルソン州やザポリージャ州、さらにほかの地域も含まれる」と述べ、東部2州にとどまらず、南部など周辺地域の掌握も視野に入れていることを明らかにしました。

(下記NHK記事/太字は引用者)

7月21日にはこういう声明をラブロフ外相が出している。
局地的な目標なら戦闘の状況によって変わることもあるだろうが、全体的な構想の目標をそんなにコロコロ変えていいのか、と素人ながら疑問だ。

全体的な構想が行き当たりばったりなのは、最初の目標が不可能だということを認めざるえないから、少しずつ後退したり、また強気なことをいったりして体面と実利のバランスを取っているからかな、と勘繰ってしまう。
自分の国のトップ(とその周辺)がこんなにふらふらしていたら、不安になる。

「だから、ロシア軍はジリ貧で屈服寸前だ」というとそうでもないと思う。

最終的にはプーチン露大統領を戦犯とし、ロシアに賠償金を払わせることが正義としては筋だが、現実には難しい。
ロシアは打たれ強い国で、なかなか屈服しないだろう。

(2022年7月23日(土)付読売新聞2面/話者・北岡伸一/
太字は引用者)

ロシアやプーチンについて色々と読むと、良く言えば困難に対して受け流したり屈服したりしない不屈の精神があり、悪く言えば往生際が悪い。
ただの予想だけれど、あれだけ厳しい環境で、何度も侵略や崩壊など激動の歴史を経験している国なので、「世界は過酷で理不尽であることがデフォルト」という心性を持っている気がする。
我慢比べにとても強そうだ。

戦争で死ぬのも飢えで苦しむのも、結局は自分たちのような末端で普通に暮らしている人たちだ。
プーチンやその側近たちのやったことには怒りしかないが、何とか妥結点を見つけて戦争は止めて欲しい。


◆「人間の『認知領域』での戦いを重視している」という説明が怖すぎる。

「認知戦」……ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて偽情報を流して一般市民の心理を操作・かく乱し、社会の混乱をもたらそうとする作戦。中国は、人間の「認知領域」での戦いを重視している。

(2022年7月23日(土)付読売新聞3面)

メイン舞台はSNS(ネット)に移ったが、「ビラまき宣伝」や一般市民に紛れ込んで風説を流布するなど情報戦や心理戦自体は昔からある。
ウクライナ侵攻も情報戦だ、とよく言われるし、ロシアは海外のネットサービスは遮断したりしている。

ただ「人間の『認知領域』での戦いを重視している」と言われると、一気に怖さが増す。
何故だろう。コミュニティに仕掛けるのではなく、個人の認識を支配する、という風に聞こえるからかな。

「人間の『認知領域』は、そもそも戦いの場ではなくないか」という異議を唱えたくなるのに、そこをすっ飛ばして「『認知領域』は戦いの場である」という前提で「重視している」と当たり前のように書かれているところが怖いのだと思う、多分。


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