2022/06/26(日)

アヒージョ鍋のように暑い1日だった。僕はその中でグツグツ煮られたマッシュルームで、彼女は小エビだ。そして二人の自転車はニンニクで唐辛子だ。オリーブオイルは今日の空気だ。

僕らは基本、節約生活を地で行く夫婦で、それを思いっきり楽しんでいる。だから、本来ならば電車で行くところも、臆することなく自転車や徒歩で向かう。

たとえ、破壊的に暑い今日のような日でも。

彼女はグングン進んで行く。僕のことなんかお構いなしだ。長い髪が揺れ、ワンピースの裾が膨らむのを僕はずっと追いかけた。

「信号で止まるのはいいとして、その赤信号の赤を見るのは本当に嫌だわ。」

と、彼女は言った。それが暑いからなのか、赤い色が嫌いだからなのか、僕は聞かなかった。

暑かったからだ。

街に着くと、自転車を停めて、目的の場所へ向かう。ビルに入り、川のような流れの人混みを産卵前の鮭のように逆らい歩いた。

注文していたものを取りに行くために、来店予約をしていた。もちろんアテンドしてくれたのだが、そこにも人がわんさかいて、

「なんだか、人のいない場所がないみたいだ。」

と、思った。どこに行ったって人がいる。その安心感と煩わしさ。温もりと鬱陶しさ。

「さ、入りましょ。受けとるわよ。」

と、彼女はグングン進んで行った。

自転車で追いかけていた彼女の背中は、その店に入る時、すっと背筋が伸びていて、そして鮭の背中のように輝いて、僕は水しぶきを浴びたようだった。

冷たい川に飛び込んでいくように、僕も続いた。

・・・

今日も夜が来ました。

Good night.

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