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食文化を「ネタ扱い」する時代はもう終わったと思う

いきなりですが、Youtubeなどを見ていて、以下のようなチャンネルを見つけたと仮定しましょう。実際にあるかどうかわかりませんが、まずは想像してみてください。


それは海外のチャンネルで、海外のYoutuberが毎回ワチャワチャと遊んだり騒いだりするような企画を多くやっています。

そして、とある動画のテーマは…
「日本のすっげー臭い食い物を食べてみた!!」というもの。

取り上げられていたのは、日本の「ぬか漬け」でした。

コンビニにあるようなパック詰めのものではなく、ちゃんと、かめに入ったぬか床ごと入手して「それじゃ試してみるぜ~!」と騒いでいます。

そしてYoutuberは、かめのフタを取って「ギャー!クッセェー!」と大騒ぎ。走り回って大騒ぎしたあと、勇気を振り絞るように、ぬか床(ぬかみそ)をスプーンですくって口に運びます。

「ウォォオォエ!!ボォォオォエ!!(吐き出してモザイクが入る)」
「(涙目で)こんなもん、人間の食い物じゃない!!」
「日本人、狂ってるだろ!!」


…と、以上すべて僕の妄想です。実際にあるわけじゃありません(笑)。

でも、もしもこんな動画を見つけたとしたら、日本人としてどう感じるでしょうか。何を言いたくなるでしょうか。

おそらく誰もが「いやいやいや!そんな食い方しねーから!!」と突っ込むと思います。

「ぬか床に入ってる、キュウリとかナスとかを食べるんだよ!」
「ぬか床をスプーンですくって食うなんて、日本人でもしねーよ!」
「野菜を取り出すときにぬかをよく落として、そして洗って食べるんだよ」
「漬かり具合によっても味はぜんぜん違うし」
「あとぬか漬けって、箸休めというか、他にもおかずがある中の一品なんだよ。そういう食べ方をしてくれよ!」

…と、誰もがそういう反応になるのではないでしょうか。



この例え話で何が言いたいのかというと、一昔前のテレビやYoutubeで、よくネタにされていた「シュールストレミング」についてです。

シュールストレミングとは「世界一臭い食べ物」とも言われている、スウェーデンの塩漬けニシン。
その異名のせいで、テレビやYoutubeのバラエティ企画にさんざん使われたので、知っている人も多いかと思います。

ほとんどのテレビやYoutubeでは、缶詰を開けて大騒ぎして、中に入ってるニシンを丸ごと口に運んで吐き出す…というのが定番でした。


しかし調べてみると、本場ではそんな食べ方はしないのだそうです。

缶を開けたら、中に入っている汁は捨てて、ニシンは洗う。
さらにじゃがいもや玉ねぎのスライスを添え、ナイフとフォークを使って適度な大きさに切り、サワークリームを塗ったパンなどに乗せて食べる…と。

一昔前のYoutuberがやっていたような食べ方なんてしないというか、するわけがないというか…。

つまりスウェーデンの人からしてみれば、一昔前のYoutuberがギャーギャー騒いでいた企画は、「ぬか床をそのまま食べようとしていたYoutuber」みたいな印象なのではないでしょうか。


今ではもう「シュールストレミングで大騒ぎ」なんていうネタは使い古されているからか誰もやっていませんし、むしろ「正しい食べ方で食べてみた」という企画の動画もあります。その意味では良かったと思います。

こういった「話題性のある料理」って世界各地にいろいろありますが、どうしても最初は「話題性」の方が独り歩きしがちですよね。そして、独り歩きする過程で「ギャーギャー騒いでゲテモノ扱い」にもなりがちです(罰ゲームになったりとか…)


食文化って、わりと…いやかなり、繊細なところがあると思うのです。

バラエティ企画として紹介するのもまぁいいとは思うのですが、「大騒ぎするだけ」の時代はもう終わったというか。
「正しい食べ方をセットで紹介する」というのも、これからの時代は必須ではないかなぁと思います。

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