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40中14名が感染しクラスターになった介護施設を経営している私が伝えること⑤

2022年3月、私が運営する介護事業所『よろこぼう屋』のサービス付き高齢者住宅施設で、新型コロナウイルスによるクラスターが発生しました。

その記録を、全6回に分けて書き綴っています。

今回は、第5回。介護事業所で新型コロナウイルスのクラスターが起こる前に私自身が知っておきたかったことを綴ります。同じ介護事業に従事する方々にとって、今後の参考となれば幸いです。

介護事業所「新型コロナウイルスのクラスター」が起こる前に私自身が知っておきたかったこと

主には、以下の7つだと思います。

  1. ガウンなどの消耗の早さについて

  2. 廃棄処理について

  3. 食事について

  4. 入院送迎について

  5. 事前に出来る区分けのこと

  6. 補助金・支援金について

  7. 臨機応変に動けることの大切さについて

①ガウンなど消耗の早さについて「オススメの調達方法」

介護施設において感染症のクラスターが起こった際には、ガウンやゴム手袋などの消耗品が尋常でないスピードで無くなっていきます。以前の記事でもお伝えしましたが、ウイルスは目に見えないが故に不安が募ります。すると、感染源を潰していこうと強化することとなり、その結果として消耗品が瞬く間に減ります。

クラスター時、よろこぼう屋ではガウンを2000枚以上を使用しました。日頃より200枚程度を常備していましたが、その数では全く太刀打ちできませんでした。

保健所からの支援によって一時を凌ぎましたが、それも直ぐに消耗しました。業者に依頼しても、すぐには入荷されなかったり手元に届くのに時間がかかったりだったために気持ちが慌てます。

消耗品使用の早さは、よろこぼう屋で起こったクラスターに限りません。近隣の介護施設でクラスターが起こった際も自分たちのところにあるガウンを届けました。よろこぼう屋の経験からガウンの消耗の早さが予想できたのです。実際、届けた先の介護施設からは『本当に助かった』と言ってもらえました。

経験からオススメする介護用(医療用)消耗品のサイトは、アスクルやモノタロウと言った法人向けの通販サイト。よろこぼう屋のクラスター時に一番スピーディーに調達できたように思います。

②廃棄処理について「事前に見つけておくことをオススメ」

廃棄処理については、事前に見つけておくことをオススメします。

なぜなら、職員の使用したガウンや手袋・コロナ感染者が利用したリネンなどは感染性廃棄物、医療廃棄物などに区分されます。介護施設におけるクラスターでは、自分たちが想定する以上に廃棄物が多量に出るため、事前に対応してくれる業者を見つけておくことをオススメします。

ちなみに、環境省による「感染性廃棄物」とは、以下の様に提言されています。

医療関係機関等から生ずる感染性廃棄物(感染性病原体が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれがある廃棄物をいう。)は、特別管理廃棄物(特別管理産業廃棄物又は特別管理一般廃棄物)とされており、密閉した容器での収集運搬、感染性を失わせる処分方法等が処理基準として定められている。

引用:環境省HPより

新型コロナウイルスのクラスターによる廃棄物を依頼するにあたっては、契約等も必要となります。日ごろの業者選びについても、対応可能な業者に依頼しておくことをオススメします。

③食事について「事前確保が必要」

介護施設で新型コロナウイルスのクラスターが起きた際には、日々の食事提供も従来通りにはいかなくなります。

その際、数日間のあいだ弁当を注文して対応しなければならないケースもでてくるでしょう。

そのような状況を事前に想定し、自分達の介護施設でクラスターが起きた際に必要な食数を対応してくれる業者を見つけておくことをオススメします。その事前対策によって、有事の際には慌てずに済むはずです。

④入院送迎について「対応者を決めておく必要がある」

感染者の入院送迎についても、事前に決めておくことをオススメします。

新型コロナウイルスの感染者の入院退院の送迎は、基本的に自分たちで行わなければなりませんでした。

ただ、入院時の送迎は特に感染リスクが高まります。その際の入院送迎の対応者を事前に決めておく必要はあると、経験から理解しています。

⑤事前に出来る区分け「専門家のアドバイスをもらう」

前述した記事で、保健所が「グリーンゾーン」「レッドゾーン」の区分けをしてくれたことが有益だったとお伝えしました。そのことで、業務・行動にルールが設けられ業務に円滑さがもたらされたからです。

ただ、感染症によるクラスターの当否に関係なく、境界線を設けた区分けを設けておくことをオススメします。付言するら、自分達でその境界線を考えるのではなく専門家のアドバイスを受けて欲しいと思います。

見えないウイルスを目の前にすると、自分達の判断が正しいのかどうかが不安になります。根拠ある知見の元で下された判断があると、自信を持って行動することが出来るようになり初動が大きく異ってくるはずです。

また、そうした対策は感染拡大防止に繋がります。もっというと、職員の心理的安全性や労働上の安全を守ることにも大きく影響してくるでしょう。

⑥補助金・支援金について「知っておく必要性」

補助金や支援金について。これは、施策が打ち出された後にそれに従って申請するものなので、もしかするとアドバイスとは言えないのかもしれません。

ただ、私達の経験談として知っていただくことで、後に役に立つこともあるのではと考えます。

よろこぼう屋の新型コロナウイルスのクラスターが始まったのは、3月半ばのこと。終息したのは4月半ばです。

時期的に年度を跨いでしまったために介護施設向けのコロナ感染に対する支援金について、令和4年度の新たな内容となってしまいました。補助対象経費や基準単価、提出方法や申請スケジュールなど新たに確認し直す必要がありました。

また、実際のクラスターではかなり出費が嵩んだり収益が落ち込んだりしたために、施策が打ち出されるまでは不安も募りました。そんなことも、頭の片隅に置いておいてもらえるといいのかもしれません。

⑦臨機応変に動けることの大切さ

最後に、感染症によるクラスターに限りませんが、いざというときに状況に応じて臨機応変に動けるマインドが何よりの強みとなります。

よろこぼう屋でも国から義務付けされた「事業継続計画(BCP)」も作成していましたが、実際に有事が起きた際に計画通りに物事は進みません。したらば、状況に応じて対応できる柔軟性が必要となります。

そのためには計画書を作りつつも「計画通りにはいかない可能性もありうる」と、事前理解をしておいた方がいいのかもしれません。

介護施設で働く方々に向けて

同じ介護事業を営む方々へ向けて、新型コロナウイルスのクラスターの経験から見えてきたことをお伝えしました。

おそらく、上述したような状況を想定して準備しておけば、出来るだけ混乱を抑えることが出来るのではないかと考えます。

少しでも多くの介護施設の方々に知って頂けたらと思います。

次は、よろこぼう屋の新型コロナウイルスのクラスターについて最後の記事となります。

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