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第1回:ベンチャー企業がスポット人材活用による管理組織充実を必要とするワケ ベンチャー企業経営~虎の巻~

こんにちは。
T&Aフィナンシャルマネジメントのさいとうです。
今後、ベンチャー企業経営において直面する共通する悩みや課題について、メガバンク行員、CVC(Corporate Venture Capital)担当者を経て、現在、日々ベンチャー企業へのコンサルティングに従事する立場からコラム形式でご紹介してまいります。

ベンチャー企業はアイディアにあふれ、事業成長に対する飽くなきバイタリティがあります。
しかし、概ね共通する課題で悩み、そして時として事業継続がおぼつかなくなってしまうこともあります。
そんな社会的損失ともいえる事業継続の断念を1件でも減らすべく、定型的なお悩みや、共通する課題について事前に知っていただくことは、大変意義深いものと思っています。

本連載がベンチャー企業経営のお役に立ち、事業成長の一助となることを願ってやみません。
是非ともご愛読いただき、時に忌憚のないご意見を頂戴できればと思っております。

≪T&Aフィナンシャルマネジメント≫
T&Aフィナンシャルマネジメントはベンチャー企業に特化した経営財務支援、クライアント目線に立った中小規模M&Aのご支援をしております。
また、上場企業をはじめとする大企業~中堅企業の経営企画をはじめとする経営管理部門のサポートなど、幅広なご支援をご提供しております。

ベンチャー企業に管理組織が必要な理由

ベンチャー企業はアイディアや独創性に溢れており、それを世の中に出すという、強烈なバイタリティが存在します。
ただ、いかに素晴らしいアイディアであっても、それがロジカルに「作られ」、「売られ」なければビジネスとして成立しません。

また、企業は規模の大小や正規雇用や非正規雇用はともあれ、人が集って知を結集させて仕事をする場所であることから、ある程度しっかりとした組織を構築する必要があります。

よくベンチャーは、成長に後追いで組織ができてゆくといわれます。
確かにその通りで、創業当初から大企業水準の組織を作る必要はありませんし、制度や規程といったものも後追いでできてゆくものです。

ただ、その後追いですが、タイミングを見計らったタイミングで後を追って作られてこないと、メンバーの不満を引き起こすのみならず、内部から組織が瓦解してしまう危機に瀕してしまいます。

したがって、ベンチャー企業であっても、早い段階から組織に対する構想を行い、それを実現する管理組織を形成してゆく必要があると考えられます。

特に、技術系やテック系ベンチャー企業にとっての最大の弱点が管理であることが多く、財務経理や人事、法務といった、企業の「屋台骨」となる管理組織を早い段階で何らかの形で形成しておく必要があるものと考えられます。

ベンチャー企業の管理組織にフルコミット人材は不要

ベンチャー企業のリソース(資源)は限られています。
ヒト・モノ・カネのすべてが不足しています。

ただでさえ、構想しているビジネスを形にするための開発費用やマーケティングにカネをかけなくてはならない状況において、管理組織が必要だからといって、コストセンターともいえる管理部門にフルコミットの人材を初期から導入する必要はありません。

具体的には、株式上場(IPO)を志向する場合、n-2期と呼ばれる、上場の2~3年前くらいまでには、管理系人材のトップであるCFOを設置し、上場に耐えうる規程や規則、組織などを専門的に作りこんでゆく必要があります。

ただ、その前段階であれば、フルコミットの管理系人材ではなく、スポット人材で十分だと思われます。

創業期のベンチャー企業にとって管理組織が必要なのは間違いないのですが、一方で、初期のころはフルコミットで人をアサインするほど、管理部門の仕事がないのも実情です。

最近は副業・兼業の解禁で、普段は一般企業に勤務する人材がスポットでベンチャー企業などの業務に従事するパターンも多く存在しますし、フリーランスでミドルバックを専門とする人、そして、ベンチャー企業専門の管理部門請負を得意とする事業者も多数存在します。
まずは、そういったスポット人材やフリーランス人材、管理部門請負の事業者の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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外部人材の活用術

副業・兼業人材やフリーランス人材、そして外部事業者などは自社のフルコミット人材ではないので、人事権の行使や給与の調整などで統制することは難しいです(そもそも創業期のベンチャー企業にとっては、「理念」のもとに集った人材なので、組織への帰属意識は大企業と比べて低いケースが多いです)。

外部人材の活用は、フルコミットでの仕事量がないからという理由以外にも、業績が思うように進捗しない場合、人員調整が難しいフルコミット人材とは違い、外部人材の場合はタイムリーに調整可能な調整弁としての役割もあります。

したがって、外部人材は求められたミッションに対して専門知識を提供し、ベンチャー企業はそれに対して報酬を支払うといった、ギブアンドテイクの関係です。
したがって、もし、外部人材に自社発展のための成長へのベクトル形成を期待するのであれば、金銭報酬を成果主義にすることや、もしくは外部人材であってもストックオプションを付与するなどの方法で、半ば強制的に「想い」を共有してもらうことも肝要となります。

限定的な報酬支払を行うギブアンドテイクの関係である以上、「うちの会社に少しでもコミットしているのであるのだから、100%うちの会社のことを考えてくれている」といった考えを持つことは間違っているといえます。

外部人材の探し方ですが、経営者や初期メンバーの紹介であるリファラルでの採用も一考ですし、専門事業者が外部人材紹介のプラットフォームを提供しています。そういったプラットフォーム経由で優秀な自社のビジネスを理解してくれる人材を探してみるはいかがでしょうか。

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株式上場が現実的になってきたらフルコミットCFOの採用を検討する

株式上場を志向するベンチャー企業であれば、先ほどもご説明した通り、n-2期と呼ばれる、上場の2~3年前程度のタイミングでフルコミットのCFOの採用を本格的に検討するべきです。

このタイミングでは、主幹事証券の選定や、監査法人との契約といったアクションが必要とされ、主幹事証券や監査法人とのやり取りにおいては専門的知識が必要とされることや、整備されていない規程などの作成においては多大な時間が必要とされることから、創業期の「仕事がない」状況から一変し、相当な作業量が発生してくる時期でもあります。

CFOを中心にしっかりとした管理組織を複数名で形成し、上場に向けての体制整備を急ぐことになります。

n-2期に入って急に優秀なCFOを見つけることは難しいので、今までスポットで参画していた人材をフルコミットにスカウトする方法や、できるだけ早い段階で人材紹介会社などを活用して株式上場に耐えうるCFOを選定し、採用する必要があります。

まとめ

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ベンチャー企業は常に疾走している集団です。
しかし、我に返った時に、しっかりとした「組織」ができていないと、急速に拡大した人員などをまとめることができなくなってしまいます。

そのためには、多くのコストはかけずとも、しかし、しっかりとした組織を作り、メンバーの求心力を維持する努力が必要です。
ビジネスマンの個々人の価値観は多種多様です。
起業家があまり気にしないようなことであっても、ある種の「サラリーマン気質」を残したメンバーにとっては我慢ならない環境を提供してしまっては、せっかくのビジネスアイディアを形にする前に組織が空中分解してしまします。

ただ、創業期にはコストセンターともいえる管理部門にフルコミット人材を投入するなどのコストをかけることはできません。
したがって、副業・兼業人材やフリーランス人材、外部事業者をうまく活用し、彼らに一定のインセンティブも付与しつつ、管理組織を「後追い」でも構わないので構築することが肝要といえます。

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