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第25話 退職後の独立と仕事 | Saito Daichi

 退職した後の1年間は大変でした。

 実家にある荷物も含め、要らない物を段ボールで梱包する作業を夜中まで並行して行い、フリマアプリで全て売り払うのに半年近く掛かりました。

 退職ボケが戻るのには1年くらい掛かり、車を運転する際、暑い時は冷房は贅沢で申し訳ないので窓を開けようとする良く分からない行動を取ったりました。

 取り敢えずYouTubeを宣伝ツールとして使いたかったので、グアムやベガスで撃った映像を上手く編集し、アップロードして数百万再生を達成。

 YouTubeに射撃のダイジェストをまとめたような動画はなかったので、チャンスだと思いました。

 自衛隊に関する特集が組まれた番組は、当時は観れませんでした。

 今は冷静に観れます。

 色々思うことがある人は、3年経てば落ち着くので安心して下さい。

 私は携帯電話の連絡先を見て、連絡も取らないのに、数百ものアカウントと繋がっていることに気付きました。

 そういう意味でも身辺整理をしました。もう組織とは遠ざかりたかったからです。当時は完全な人間嫌いになっていました。

 令和になり、確定申告の書式や年度が分かり辛くなり、慣れるまで大変でした。

 2年目からは会計ソフトを使い、会計事務所や税務署にいった際に、事前に調べた自分の方が詳しくなっていた部分があり、それ以来、全て自分で処理することにしていました。

 YouTubeも米国に簡単な英文で税務申告をするだけですが、油断するといつの間にか変更通知が来ています。

 逐一、チェックしていますが、知らない人は期限に余裕がないので焦るのではないかと思いました。

 また、インボイス制度や領収書の将来的な全電子化が決定されます。

 私は誰かと取引をする訳ではなく、全て自己完結しているのであまり関係ありませんが、依頼と納品を伴う自営業者は議員に怒りをぶつけていました。

 何となく、大型自動車免許を合宿で取得した時を思い出しました。

 教習所で知り合った人達で、1人は沖縄の空港で勤務している女性でした。

 友人とノーヘルで2人乗りしているところを検挙され、大型やその他諸々の資格を持っていたのに、失効したらしいです。

 それについては何とも言えませんでしたが、もう1人の女性は国会議員の秘書でした。

 物珍しさから経緯を訊ねると、今は都内で勤務だが、将来的に地方に行く可能性もあるので普通免許を取得しに来たようです。

 公費で取りに行ける資格が色々あって、その中で役に立ちそうなのが運転免許だったと言っていました。

 その子には合宿の最後の方で飲みに誘われました。

 煙草もギャンブルもせず、趣味はスポーツと読書で勉強だと告げると、「意外だ」と言われました。

 肉体労働で遊んでいるイメージだと言われ、少しショックでしたが、話の途中で議員に対する不満が垣間見えました。

 私も駐屯地祭の接遇で、飲み物や食べ物を提供した議員に横柄な態度を取られたことがありました。

 恐らく階級章で区別しているのもあるとは思いますが、流石に現職だったので愛想笑いで返しました。

 彼女曰く、「子供の前では喫煙規制」という内容で会議していたのにもかかわらず、いざ休憩になると、国会見学に来ていた小学生の前で議員達が一斉に吹かし始めたとのことです。

 ダブルスタンダードには慣れていましたが、公務員でなくなった後も同じでした。

 直近で出版する小説のストーリーに必要な資料調べには3カ月掛けました。

 あのサラリーマン特有の「言い出せない空気感」は何なのか?

「空気」を読み、最終的には戦争まで始めてしまう国民性とは一体、何なのか?

 教育的側面を持って抽象化しないことを考えました。

 私はイデオロギーという目に見えないものを言語化・体系化することを模索し始めます。

 日本人の民族的イデオロギーの弱点を克服する研究でした。

 戦後から一貫して、日本にはインテリジェンスと地政学を順序立てて説明してくれる人間も文献も分かりやすいコンテンツもありませんでした。

 近くの市立図書館にバイクで向かい、開館から閉館まで居座りました。

 そこにもなければ県立図書館に行き、そこにもなければ買うしかありません。

 書物は本来安い物ですが、『CIVIL MILITARY SERVUS』のジャンルになると一冊3000円の本もあります。

 私の地元は田舎です。

 いまだにクレジットカード未対応の店舗もあります。

 副業と宣伝でYouTubeを利用しようと思い、10万円くらいのコスパの良いゲーミングPCを買って、使わなくなったゲーム機を売りました。

 動画編集でGPUを向上させなければならないと知り、消費電力を計算し、グラボを買って交換。

 モニターも買い、デュアルに接続し、動画編集作業の効率をアップさせました。

 停電でPCが壊れそうになったので、UPS(無停電電源装置)も買うはめになりました。

 有線LANのカテゴリーは6Aが合うと分かり、家の中にニューロ光を引き、中継器からパソコンに接続。

 Amazonのポイントをギフト券と交換したり、Yahooショッピングのポイントで買い物をしました。

 しかし、貯金も減っていく一方です。

 稼いでいた前年度の税金が重かったのです。

 また、作中で銃火器を出す場面では記憶の中にある実銃のセットアップを思い出し、反映させました。

 しかし、実際に手元にないとリアリティは生まれません。

 本当にその配置でアイリリーフが取れるのか、そんな姿勢になれるのか。

 キャラクターが有り得ない挙動をすることを懸念しました。

 妥協できず、結局はネットで装備品を取り寄せ、作中の通りにアクセサリーを装着し、セットアップしました。

 幸い、日本には「東京マルイ」という有名なエアソフトガンメーカーがあります。

 台湾や香港、日本といった銃規制の厳しい国ほどトイガンのクオリティが高いのは、触れられない欲求を満たす代替物を人間は作るという行動に沿った結果だと思います。

 ただ実銃対応の照準器である必要があるので、とんでもなく金が掛かりました。

「つぼみアームズ」というショップが良さそうだったので、そこで購入しました。

 照準器を厳選して送ってくれるらしく、手紙が入っていました。

 アフターサービスも取り合ってくれるらしく、不良品があった場合、返品せずに新しい物を送ってくれるようです。

 まだ小説を出版できないので、経費にするのも諦めていました。

 こういう意味でもドンパチの描写は入れずに、もっと根本の問題を描きたかったのですが、商業性を考えて諦めました。

 執筆時間に当てるため、運動も辞め、太陽光も浴びなくなり、段々と寝付けなくなっていきました。

 昼夜が逆転し、眠れずに悩んだ時がありました。

 世間が疫病の蔓延で大きく変わり、不況が加速する中、安定した公務員を辞め、売れるか分からない小説を書いている。

 自分で選んだことなので言い訳できませんが、「自分は何をやっているんだろう」と不安でした。

 書物で学べば学ぶほど、自分が住んでいる国の将来が心配になり、気分が沈みます。

 起きている間はずっと本で勉強して知識を得て、言語化と体系化の作業が苦痛でした。

 久し振りに外をランニングし、バイクで海まで走りました。

 自衛隊以外の友人とビデオ通話し、飲んだりしました。

 自衛隊時代の同期達とも出会い、温泉に浸かった後、酒を飲みました。

 一気に気持ちが軽くなり、1年経つ頃には心身ともに健康を取り戻していました。

 学生の頃から長編小説の執筆は苦痛でした。

 シリアスでリアルな長編ほど体力勝負です。

 時間のある日に一気に書くという日もありましたが、毎日数文字、数ページでも良いのでコツコツ進めるのが重要です。

 一度座ると動けないので、天気の良い日は走ります。

 有名な作家さんで、長編に入る前や入った後に、毎日10kmランニングする人もいるようです。

 寝ずにエナジードリンクを飲みながら、小休止を挟みつつ書き続ける人もいるようですが、早死にするのでやるつもりはありません。

 退職した後も身体を定期的に動かしていましたが、筋トレは病気になるリスクをなるべく減らし、医療費を無料にできるコスパの良い手段です。

 空挺時代は体力的に困ることは余りなかったので、必要な時だけ筋トレをしていました。

 肥満になって日本の社会保障費をこれ以上増やすのも嫌なのです。

 全て未来の自分に跳ね返ってきます。

 執筆は、本を抱えながら夜間の山道を緩やかにひたすら登る感じに似ています。

 休憩は自分次第。

 何年も掛かる場合もあります。

 時々道を間違えながら、参考文献で新たな道を切り開くも、頂上が見えない山道です。

 頂上に到着しても、賞賛や賞金が約束されているわけではありません。

 得るためにやっているわけではありませんが、登山料が無駄になり、徒労に終わって山を下る可能性もあります。

 器材と資料を片付けて、サラリーマンに戻るのが下山です。

 モチベーションは人ぞれぞれです。

 自分が書く物を血肉化する人達の苦労と努力を知っているので、私も頑張れました。

 キャラの掛け合いは書いていて唯一、苦痛ではない瞬間です。

    しかし、読者にとって作者は鬼みたいなものなのかも知れません。作品に動かされてはいるものの、閻魔大王のように沙汰を決めるからです。

 凸凹なチームを良く書いていましたが、「ナッシュブリッジス」や「七人の侍」、そして実体験からインスピレーションを得ていました。

 執筆も数百ページと進んでいき、取り敢えずは順調に思えました。

 しかしこの時、私は突き進むことはしても、まだ後戻りのためのバックアップ体制を整えてはいませんでした。

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