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戯曲集 都営新宿線を巡る人達

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#小説

花束ドロップアウト①

花束ドロップアウト①

『ガタンゴトン、ガタンゴトン。』

6畳4万のボロアパートの床に耳をふっとつける。
地下鉄の走る音が、かすかに聞こえる。

『ガタンゴトン、ガタンゴトン。』
停車駅はもう少し先にあるから、
あの黒板をひっかいたような嫌な音は聞こえない。

『ガタンゴトン、ガタンゴトン。』
『ガタンゴトン、ガタンゴトン。』

僕はこの音が好きだ。
鉄製の車輪が回り、
レールのつぎはぎを超え、
進むべく道に進む

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