ほぼ日の経営

すいません、って謝まらなくても・・・ヒットの裏側面白かったですよ!~『すいません、ほぼ日の経営。』からみた、ほぼ日の組織づくり

糸井重里さんが代表を務める、株式会社ほぼ日さんの経営に関する書籍『すいません、ほぼ日の経営。』が!

うちもほぼ日手帳や5年常用日記、スパイス、地球儀など、気が付くとほぼ日の商品が溢れています(笑)

書籍は、インタビュー形式になっていて、語り手は、糸井さん。聞き手は、ifs未来研究所所長の川島蓉子さん。

このお二人の語りが、面白くないわけがない!!(案の定面白い 笑)

組織創りや人材育成の観点から、下記の3点が面白いなと思いました。

◇◇

①組織における「かっこよさ」を根付かせる

糸井さんは、

「企業の風土を決めるのは、『なにがかっこいいか』ということです」

と語っています。

ほぼ日には、「ほぼ日の行動指針」というものがあり、

やさしく・つよく・おもしろく、の3つを掲げています(p.143-144)。

ちょっと長いですが引用すると、

『やさしく』は、
「私たちの会社が社会に受け入れられるための前提となるものです。
相互に助け合うということ、自分や他人を『生きる』『生かす』ということです」

『つよく』は、
「企画やアイディアやコンテンツを、会社として、組織として『実現』『実行』できること、現実に成り立たせることです」

『おもしろく』は、
「新しい価値を生み出し、
コンテンツとして成り立たせるということです。
『ほぼ日刊イトイ新聞』や『TOBICHI』のように
『場』を生み出し、ひとが『場』に集まる理由です。
これが、ほぼ日の強みです」

「ほぼ日は、この言葉の順番もたいせつにしています。
まず『やさしく』が、おおもとの前提にあり、
『やさしく』を実現する力が『つよく』です。
その上に、新しい価値となる『おもしろく』をどれだけ生み出せるかが、
ほぼ日の特徴です」

また、

社内で使われる、「伝家の宝刀の様な言葉」として、「誠実」と「貢献」をあげています。

「誠実は、姿勢である。弱くても、貧しくても、不勉強でも、誠実であることはできる」(p.130)ということ、「貢献は、よろこびである。貢献することで、人をよろこばせることができる。そして、じぶんがよろこぶことができる。貢献することにおいて、人は新しい機会を得る」(p.131)。

「『誠実』であればおのずと『信頼』が生まれます。なにかの仕事を頼んで、一緒に手を繋いでいるときに、その人が手を離さないこと。逃げないと思える人とは仕事ができると思うんです。つまり『誠実』と『信頼』はセットになっている」(p.134)

と語っています。

自分達らしい振る舞いがどのようなものなのか?
これが、日常の業務と結びつく具体的な形で、このコンセプトがしっかりと共有されたときに、個人の自律性が高まっていきます。

以前、パタゴニアのストアスタッフの方にインタビューさせていただく機会がありました。パタゴニアさんも「質」、「誠実さ」、「環境主義」、「慣例にとらわれない」の4つを、コアバリューとして掲げられていますが、「『セールのあとのときの対応は誠実なものではなかったと思う』とか話しますよ」というようにコアバリューが普段の業務と結び付けられて語られていたのにびっくりしました。

②組織内の有機的な繋がり

そして、そんな行動指針を具現化していくために、各部署を表す組織図について糸井さんは、

組織は)「人体模型図の内臓のようになっています。肝臓、腎臓、胃といったように」(p.173)

「内臓は、それぞれの臓器がお互いに信号を出し合い、信号を受け取り合うことで全体が動いているそうです。ぼくは内臓のように、それぞれのチームがそれぞれ自立的に動いてい関係し合う仕組みが、うちに合っていると思ったんです」(p.173)

「みんなが生き生きしてくれたらいいな、という思いがありました。誰かの命令で動くのではなく、じぶんの頭で考えた『これはやりたい』という思いが、誰かの『これはやりたい』と組み合わさっていくのが一番いいですから」(p.174,175)

と語られています。

組織構造は、その業務の特性とも密接に紐づいています。新しい"おもしろさ"を生み出すことをミッションとしてもつ、ほぼ日さんにとっては、上長が都度都度、プロジェクトの承認をするというような階層的な構造は適していないのかもしれません。

自分達の組織の構造が、これから求められる価値を生み出すために適したものになっているか?
なんとなく空回り感があるとき、個人の頑張りといった視点だけでなく、仕組みや構造的な部分についても考え、変えて行く必要があるかも知れません。

③自分だけの時間

ほぼ日さんには、

毎週金曜日「インディペンデントデー」という、「ひとりで考えたり、自由に使ったりする時間にしました」(p.89)

理由として

「チームで仕事をしていると、ときどき、他のメンバーに頼りすぎることがあります。じぶんはぼーっとしていて、誰かが言いだすのを当てにするようなことです。

けれど、どんなミーティングだって『じぶんだったらこうする』と考えてから集まらないと意味がありません」(p.95)

Googleさんの20%ルールとも近い部分があるかも知れませんが、この時間がうまく機能すれば、自分自身がどうしてこの仕事についているのか、何を生み出したいのかについて、目の前の業務に縛られずにより思考を深めることにも繋がる気がします。

だからこそ、目の前の業務の延長や焼き直しではなく、ミッションを起点にした新しい企画を創造できるのではと。

◇◇

上記は、糸井さんからの見え方であり、組織の内部にいる方はまた違う感想があるかもしれません(笑)

創業されてから現在に至るまで、いろんな試行錯誤をされたようですが、結果として、ミッション、組織構造、個人に求められる働き方を含めて、一本軸が通っているというか、それぞれの要素の"同期"が高いレベルで取れているように感じました。

その同期の質を保っているのが、糸井さんの存在なのではないかと思います。

象徴的だなと感じたのは、

「みんなで話し合いましたが、最終的にぼくが決断しました」(p.92)というフレーズ。

みんなを巻き込む"やさしさ"と、最後は自らの責任の下に決める"つよさ"の絶妙なバランス感。
それが、新しい面白い企画をどんどん生み出す秘密なのかも、と感じました。

組織創りには明確な正解はありません。組織ごとに、人も変われば、歴史も変わる、置かれているビジネスの状況も変わります。

ほぼ日さんの事例をそのまま自組織に当てはめようとすること自体に意味はないと思いますが(笑)、自分の組織を診る視点を増やす意味で、示唆が多いと思います。

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