191230_LMX理論

タイプが似た人ばかり、周りに集めていませんか? LMX理論から見た組織づくり。~"The Oxford Handbook LEADERSHIP and ORGANIZATIONS"からの学び②

リーダーシップの概念が広がり、"メンバーやチームの関係性"として現れ、開発されるようになってきたとお伝えしました。
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※先日のブログ
「リーダーシップ開発の大きなトレンドを捉える。個から関係性、集団の中でリーダーシップをどう育んでいくのか?~"The Oxford Handbook LEADERSHIP and ORGANIZATIONS"からの学び」
<https://note.com/saito_lab/n/nb0ef7b351fe3>
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それは、遡ると、LMX(Leader-Member Exchange)理論に起源があると言われます。
LMX理論について網羅的にまとめられた、Erdogan & Bauer 「Leader-Member Exchange Theory:リーダーシップに対する関係性からのアプローチ」(The Oxford Handbook LEADERSHIP and ORGANIZATIONS)という章を、立教大学中原先生の大学院ゼミを一緒にオブザーブしていた、高橋さんがとてもわかりやすく丁寧に訳してくださったので、それを参考に、関係を重視する様になったリーダーシップ論にどんなメリットやデメリットがあるのかについて、考えてみたいなと思います。

高橋さん、学びの多いレジュメをありがとうございました!!

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※下記の括弧内の記述は、高橋さんのレジュメの訳を参考にさせていただきました!

「変革的リーダーシップやサーバントリーダーシップ、オーセンティックリーダーシップの様な現代のリーダーシップ理論は、従業員の態度やモチベーション、チームでの成果に対するリーダーの行動の効果に焦点を当ててきたが、LMX理論は、メンバーやチーム、そして組織へのリーダーの効果を理解するためのカギとして、リーダーとメンバーの間のダイアディック(相互関係的)な関係の質を研究する」ものです。

LMX理論自体は、1970年代から論じられている伝統的な考え方です。

Graen and Uhl-Bien(1995)は、「LMXの形成を、対となるメンバーを他人(低い質の関係性)から知人(中程度の質の関係性)へ、知人からmatuirty[成熟した](高い質の関係性)へと変化させるプロセスと定義」しています。

とらえる際の質問項目としては、LMX-7という下記の7項目ものがよく使われます。
➀あなたのリーダーがあなたの仕事にどのくらい満足しているかをいつもわかっていますか
②あなたのリーダーはあなたの仕事の問題と要求をどのくらいよく理解していますか
③あなたのリーダーはあなたの可能性をどれくらい認識していますか
④正式な権限に関係なく、あなたのリーダーがあなたの仕事上の問題を解決するためにリーダー自身の力を使う可能性はどれくらいですか
⑤正式な権限に関係なく、あなたのリーダーが自分のの労力をかけて「あなたを援助する」可能性はどれくらいですか
⑥私はリーダーの決定を擁護し正当化するほどに自分のリーダーを信頼している
⑦あなたのリーダーとの仕事上の関係をどのくらい評価しますか
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LMXの質は、メンバーの成長にも影響します。

高い質のLMXを持つメンバーは、「より多くの量のフィードバック探索(Kudisch, Fortunato, & Smith, 2006; Peng, Ngo, Shi, & Wong, 2009)、直接のフィードバック探索(Lee, Park, Lee, & Lee, 2007)、ネガティブフィードバックの探索(Chen et al., 2007)を行うと報告するということが明らかにされている」されます。

LMXがあることが、フィードバックを受け取る土台になるような感覚でしょうか。

今、ある企業さんで新しく導入された1on1の制度に関するプログラム評価をお手伝いさせていただいているのですが、1on1のパフォーマンスが高いとい言われる上長にインタビューすると、”部下との信頼関係の有無”について言及されることが多いです。

「1on1だからなんでも話していいよ!」といっても、”評価者”としての側面も持つ上長に対して、躊躇なく自己開示ができるためには、普段からの信頼関係が重要となるのだと思います!

1on1で悩まれている方は、1on1のスキルだけでなく、土台となる関係性に目を向けてみるのもいいかも知れません。

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LMXの形成を促す要因として、リーダーからフォロワーへの権限移譲等、様々な要因が考えられるのでうが、個人的に面白かったのは、”性格特性の類似性”があげられていた点です。

Bernerthら(2008)は、「5大特性の内の(外向性における類似性を除く)4つにおける類似性はLMXの質を予測するということを明らかにしている」と指摘しています。

5大特性(ビッグ・ファイブ理論)は、「外向性」「調和性」「誠実性」「神経症的傾向」「経験への開放性」の5つからなる、性格特性です。

リーダーとフォロワー間でのやりとり(行動)がLMXに影響を与える側面ももちろんありますが、ビッグ・ファイブといった、性格特性によって、違いが出てくるというのは面白いなと。

性格まで遡ってしまうと、ある意味、出会った時点で、良好なLMXが形成されるかどうかが決まっちゃうんですよね。

逆に言うと、性格的な類似性によって初期のLMXの質が決まってしまい、深い関係性になりやすくなり、それがまたLMXの質を固定化してしまう、という自体も予想されるのではないかと思います。

実際に「高い質のLMXを持つメンバーほど自分の組織に留まることを望み、より長期間組織に居続けるということが期待される」(Harris, Weeler, & Kacmar, 2011; Sekiguchi, Burton, & Sablynski, 2008; Wheeler, Harris, & Harvey, 2010)そうです。

ということは、質の良いLMXを築けなかったメンバーは、組織から退出しやすいことになりますが、それが、上長との性格特性の類似性から来る影響が大きかったとしたら、組織の中が似たメンバーばかりになってしまうかもしれません。

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組織メンバーの類似性が高まると、マネジメントがしやすく、関係性がよくなるという意識が高まるかも知れませんが、その一方で、同質性が高まり、似たアイディアばかりで、新しいアイディアが生まれにくくなる可能性があるかも知れません。

定期的に、自分の周りにいる同僚や部下が、自分と似たタイプばかりになっていないか(=自分と異なるタイプを追いやっていないか)を、確認してみるといいかも知れません。

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