イノベーター理論とエビデンス【1】
イノベーター理論をご存知でしょうか?
1962年にスタンフォード大学の教授、Everett M. Rogersが提唱したマーケティング理論で、「革新的な新商品や新サービスが市場に普及する理論」のことです。
新商品や新サービスを受け入れる消費者を早い順から、
イノベーター(革新者)2.5%
アーリーアダプター(初期採用者)13.5%
アーリーマジョリティ(前期追跡者)34.0%
レイトマジョリティ(後期追跡者)34.0%
ラガード(遅滞者)16.0%
の5つのタイプに分けます。
%は全体の中でどれくらいそのタイプが潜在しているかを表しています。
これを厚底ランニングシューズでイメージしてみましょう。
イノベーター
⇒厚底ランニングシューズの発売が決まったら即予約をする。厚底の良し悪しよりも新機能や新発想を重視する。
アーリーアダプター
⇒厚底ランニングシューズが発表・発売されたら、まず自分で情報収集をして良いと思ったら購入を決める。インフルエンサーはここ。
アーリーマジョリティ
⇒厚底ランニングシューズが話題になってきたら購入する。流行りに乗っておくタイプ。アーリーアダプターの影響を強く受ける。
レイトマジョリティ
⇒新しいものには懐疑的。みんなが使い始め、良いという評判が出てきてから、ようやく購入の選択肢に入る。
ラガード
⇒世の中の動向には関心が薄い。そもそもランニングにランニングシューズを使ってない可能性がある。
というものです。
ちなみにアーリーアダプターとアーリーマジョリティには深い溝=キャズムがあり、それを乗り越えないと市場に浸透しないという「キャズム理論」とセットで語られることが多いようです。
さて話は変わりますが、エビデンス、という言葉も聞いたことがあるでしょうか。私のいる業界では主に科学的根拠のことを指します。
推測統計などがあり、これは母集団からサンプルを抜き取り、そのサンプルの特性から母集団の特性を推測、統計確率的に検定するものです。
エビデンスは「帰無仮説(優位性が無い)を検定(データを取り統計処理する)を使って、対立仮説(優位性がある)で覆す」というのが主な図式になります。
これを先ほど出てきた厚底ランニングシューズで考えて設定してみると、
厚底ランニングシューズはタイムの向上をしない。(帰無仮説)
厚底ランニングシューズでタイムが向上する。(対立仮説)
推測統計などでデータを収集し統計処理し確率を出す。(検定)
などと設定します。
検定の方法は例えば、
100人に薄底ランニングシューズで10㎞走りタイムを取り、
休憩の後で50人が薄底ランニングシューズのままで、
それ以外の50人が厚底ランニングシューズで再度タイムを取る。
などはイメージしやすいかもしれません。
導き出された結果に5%以下のゆらぎがあれば統計的に優位性がある、と判断します。
(これは「帰無仮説=厚底でもタイムは向上しない」を前提にしているので、「タイム向上しなかったのが統計的に5%相応以下」であれば、タイムが向上したことは偶然ではないといえる、と考えるため。そしてなぜ偶然ではないのかという「考察」が入ります)
ちなみに確率というのは、「偶然性を持つ現象に対して、その現象が起こると期待される割合」のことです。
つまりエビデンスは偶然を科学しているとも言え、これは「再現性」とも言い換えられます。
ちなみに検定に使うF検定やWilcoxon検定などと手法も様々で、正規分布するか否かなどでも検定方法は変化し、同じデータでも導き出される結果も変化します。
最初になぜイノベーター理論を出したかには3つの理由があります。
一つは「革新的な新商品や新サービスが市場に普及する理論」がイノベーター理論であるのならエビデンスにも適用できるだろうということ。
もう一つは、「良いエビデンスとは反証に耐え抜いてきたもの」という考え方があるからです。
これは「反証主義」と呼ばれます。
染谷 清行
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