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24.6月パラグライダー空まつり

県内のパラグライダーパイロット50人が集まり、空まつりが開催された。
みんなで楽しく飛びましょう!というゆる〜い大会。
おいしいお弁当も出るので、喜んで参加する。

今回のタスク。
1.パイロン(上空から見て目印になる建物や建造物、山など)12個中6個以上取る(通過や近づく)こと。

2.2時間以上のフライト。

1、2それぞれ優勝者に表彰とのこと。

私は2時間飛ぶ体力がないので、パイロン奪取を目指すことにする。
一緒に出場するダンナは長時間フライト狙い。

午前10時ゲートオープン。

良い天気!ダミー機(テストパイロット)が飛ぶ。

まだ上昇気流はないようだ。
11時近くまでおしゃべりしながらLD(ランディング)で過ごす。

「TO(テイクオフ)の場所は根掛かりが多いから、グライダーのラインがらみに気を付けてね。」
ダンナがクラブチームの皆に解説。

いつも私をイジる同じチームのKさんが割って入る。
「そうそう。根掛かりだけでなく、地面に張ったモグラ避けネットにも気を付けて。ネットの穴に足取られてひっくり返った奴がココにいるから。」
私を指差す。
ハイハイ、そうでした。

           ★

10時45分。
リフトでTOへ向かう。

人がいっぱいいて大会らしくて楽しい♪
サーマル(上昇気流)タイム。多くの人が飛び始めた。

私も飛ぶ準備をしたが、混んでいて順番待ち。
ダンナが言っていた通り草の根にラインを絡ませる人が続出し、TOに時間がかかる人が多い。

ダンナはひと足先に飛んでいった。
私が出ようとしたときには、周りに人がいなくなっていた。
見上げると、TO上空に多くのパラが飛んでいる。
この場所の風も弱くなってしまった。
あ〜あ、出遅れちゃったかなぁ。

「誰もいないし、夜さんは好きなタイミングで飛んでいいよ。」

TOディレクター(誘導係)をしてくれているここのエリアチームのOさんが言う。
優しげな声がけに聞こえるが、コレは私をからかっているのだった。

苦笑する私。
「…風ないんで、入ってきたら出ます。」

Oさんと同チームのMさんが私が飛び出しやすいよう、風で丸まった翼端を広げてくださる。
「ありがとうございます。」
「あー、コイツ勝手に飛ぶから、そんなことしなくて大丈夫だよ。」
お礼を言う私に重ねて、やはりOさんチームのAさんが言う。

「AさんもOさんも、何かというと私に絡んできますねぇ。」

「そうかね。」と、とぼけるAさん。

「先週、仕事サボってココに飛びに来てたでしょ、ヤブ医者め。」Aさんが言う。
私が切り返す。
「ほう、言ってくれますね。Aさんがウチに運ばれてきたら、私が執刀しましょう。身をもって私がヤブかどうか確かめたらいい(笑)。」
「おっかね〜(笑)。」
「こんなにか弱いのに。」
「どこが?」

そんなくだらない会話をしていたら、風が入ってきた。
TO付近で飛んでいる人がいたらこの風で上昇できるかどうか分かるのに、誰もいない。

「う〜ん、誰かお手本になる人が飛んでいたらいいのに。」
「何言ってるかな。アンタが手本になるべきだろう!」
3人に総ツッコミされた。

仕方がない。
「じゃ、飛びまーす。」
宣言して、機体を立ち上げた。
翼が綺麗に頭上に上がったことを確認して助走。
3歩で体が浮いた。
TOにいる皆さんが背後で「行ってらっしゃーい」と言うのが聞こえた。

           ★

風がやって来る東方向へ向かった。
すぐに右の翼端が反応した。
サーマル(上昇気流)だ。
TOに入ってきた風は、このサーマルからのものだ。

私は右に旋回して、サーマルに乗った。
…思ったより芯が強くて細いサーマルだ。
強いサーマルは、外れるとお釣り(弾かれて、翼が潰れる)が怖い。
機体を大きく傾けて、芯から外れないようにする。
みるみる上昇していく。

あっという間に、TO上空を漂っていた人達を追い抜いた。

サーマルのテッペンに出た。

12パイロン中、3パイロンは今日の風向きからして奪取は難しい。行ったら帰って来られなくなるので諦める。
残り9パイロン中、難しいのは一番高い山の山頂。ココを取れれば、タスクに必要な残り五つは楽勝だ。

山頂をGETするなら、このサーマルタイム中に済ませたい。
私が今いる高さでは、あと200m足りない。

辺りを見渡すと、ちょうど南西方向にサーマル雲が出来つつあった。
そこへ行けば、上がるはず。

翼を雲の下へ走らせた。

当たりだ。

先ほどより更に強いサーマル。
飛行計器の上昇音がけたたましく鳴る。

私の下の方で、私の上昇に気付いたグライダーが真下に集まってきた。同じサーマルに乗ろうとしているのだ。

私は上空のトップ集団に追いついた。
そして、一番高いところにいたダンナも一気に抜き去った。

一番トップに出た時の写真。眼下には抜いたトップ集団が。画像真ん中黄色っぽい機体がダンナ。
雲の高さまで来た。1,400m上空。下方に点々と見えるのが飛んでいるパラグライダー。
山頂上空。先に西の山へ走った機体を追いかける。

TO10分弱で山頂ゲット。
私史上最短。
高さのあるうちに、西の山へ向かう。

西の山への谷渡りは、風が荒れている。大きく翼を潰されないよう、慎重に渡る。

ダンナは追いかけて来なかった。
移動すると高度が下がるからだ。
ダンナはやはり長時間フライトに賭けるようだ。

私はダンナほど体力はないが、身体が小さい分小回りが効くのと、ダンナよりサーマルを捉えるのが早い。

サーマルを拾いながら西の山を通過。
アクセルを踏んでスピードを上げ、一番遠いパイロンのダム湖へ向かう。

ダンナが撮影した、ダム湖へ向かう私。
私の翼と青空。

高度をかなり消耗したが、ダム湖までの道のりで次々他のパイロンを通過。
ダム湖までたどり着いたら、弱いサーマルを拾いながら引き返す。

パイロンタスクを達成した後は、のんびり空中散歩タイム。

まだ高さがある。スキーゲレンデ一番上がTOした場所。

そのうち雲が全体に張り出して、どこも上昇しなくなってきた。
サーマルタイムが終わったらしい。
だんだん高度が下がってきたので、LDへ向かった。

私にとってはLDが飛んでいるときよりも怖い。
地面に近くなるほどパラグライダー事故が多くなる。

ちょうどLDに他の機体がいないタイミングで降りられそうだ。
風向きを見て、失速しない程度にブレークコードを引き、高度を更に下げる。

地面には的当ての的のようなターゲットと呼ばれる1.5m四方のシートが置かれている。着陸した足がちょうどそこを踏むとなかなか格好良いが難しい。2mオーバーしてしまった…といっても、私にしては上出来。フワリと着地した。
「お見事!」
私のLDを見ていた同クラブチームの面々が拍手をくれた。

受付でGPS(どこを飛んだか記録されている)とタスクシートを提出していると、ダンナも降りてきた。

「何時間飛んだ?」私が聞く。
「2時間10分。夜は?」
「1時間10分。凄いな。山頂付近に2時間以上も居るなんて、私には耐えられない。」
「パイロンは幾つ回った?」
「9個。」
「うわー。オレには無理。え?ソレを30分で回ったって?」
「アクセル踏みっぱなし。」
「相変わらずスピード勝負なヤツだな。戦闘機みたいだ。」
すぐ疲れちゃうから、仕方がない。


ダンナと一緒に遅いお昼ご飯を食べた。
楽しみにしていた豪華弁当。
写真を撮り忘れたのが悔やまれる。
お外で食べるお弁当はおいしい。

食べているときに目の前を通り過ぎるパイロットたちに次々と「おめでとう!」と言われる。

何ごと?

「夫婦で1位ってすごいね!」

TOを手伝ってくださったMさんにそう言われたので「何がですか?」と尋ねた。

「パイロン1位が夜さんで、フライト時間1位がダンナさん。タスク記録が貼り出してあったよ。見てないの?」

ゲートクローズまでまだ30分あるのに、もう順位が出たのか。

ダンナと一緒に見に行った。
「あらら。ホントだ。びっくりだねぇ。」

折角の機会なので、皆で20分ほどフライト安全講習会を受けた後に、表彰式。

「夫婦で優勝って、そりゃないよ。参加費、倍払いなさいよ。」
拍手とともに、茶々を入れられる。
「正々堂々と勝負した結果だもーん。」
と、私。皆で笑う。

優勝よりも何が楽しかったって、50人みんなで飛べたこと、事故やケガやアクシデントがゼロだったことだ。

天気に左右されるスポーツだから、大会が成立すること自体珍しい。
次はいつみんなで飛べるかな?

賞品。ビールばっかり(笑)。