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2月10日ごろ『いま、子育てどうする?(仮)』刊行記念!一部記事をnote限定先行公開!その2:長期休校時にこそするべき〝勉強〟とは?

彩流社では2月10日ごろ『いま、子育てどうする?(仮)』を発売します。
本書はベネッセコーポレーション「サンキュ!」編集部制作スマホアプリ「totonou」にてPV週間ランキング1位(2020年6月)を獲得した「休校でずーっと家にいる子どもに、親が今できること」の待望の書籍化です!発売を記念してnote限定で一部を先行公開します!
専門がドイツ教育思想、実践的身体教育論、子どもと保育のメディア論であり、3人の男の子の父親でもある弘田 陽介さんにフリーライターの棚澤 明子さんが、新型コロナウィルス、気候変動による未曾有の災害、急速なAI化などなど社会のあり方やコミュニケーションが激変する中でふさわしい学び、育ちのカタチを聞きます。
マニュアルではなく未知の世界を一緒に悩みながら育っていくためのヒント集!
今回はその第二回目の更新で、第4章㉔を先行で公開いたします。緊急事態宣言が出てるものの、長期休校にはなっていませんが(2021年1月27日現在)、今後の新型コロナウィルス状況次第ではまた休校があるかもしれません。そんなときのヒントになれば幸いです。

第4章㉔長期休校時にこそするべき〝勉強〟とは?

暮らしに直結する学びを

【棚澤 明子さん(以下、棚澤)】新型コロナウイルスの流行で学校が長期休校となった際には、子どもの勉強をどうするのか、多くの親が試行錯誤したと思います。第3章⓭で「子どもたちもシフトチェンジし、生きていくための学びを……」というお話を伺いましたが、実際のところ「学校の成績も気になる」という親も多いですよね。再び休校のような事態がやってきたときに備えて「学校の成績にも、生きる力にもつながる勉強の仕方」というものがあったら教えてください。

【弘田 陽介さん(以下、弘田)】第3章⓭でもお話した通り、長いあいだ学校に行かずに済む期間があるというのは大変なことですが、子どもたちにとってはある意味チャンスです。もしまたそうした機会があったら、ぜひ親子で試していただきたいことがいくつかあります。まずは、これまでの学習のどのあたりで引っかかっているのかを確かめましょう。問題点がはっきりわかれば、取り組むべきことが見えてきますから。とはいえ、教科書やドリルを並べて机に縛り付けるのは逆効果。せっかくですから、暮らしのなかから教材を見つけてみてください。その方が、子どものモチベーションも上がります。
たとえば小学校3年生以上であれば「コップ1/3のオレンジジュースとコップ1/3のソーダを合わせてね」「このケーキを6等分に切ってね」などとお手伝いを頼んでみましょう。「できなかったら、あげないよ」とゲームにしてみたら、楽しんでもらえるかもしれません。ここでうまくできないと、分数が理解できていないことが見えてきます。小学生の算数は、3年生で習う分数の足し算引き算でひっかかる子がたくさんいるので、これはおすすめですよ。
漢字なら、一日の予定表や買いものメモを漢字で書いてもらうのもいいですね。意外な漢字を書けないことが発覚することがよくあります。小学校の学習範囲からは外れますが、漢字が好きな子なら、食卓に並ぶ魚の漢字を覚えさせるのも面白いでしょう。「勉強って生活のために必要なんだ!」と腑に落ちれば、ぐっと興味をもつ子が出てきます。そこで初めて教科書の出番になるのです。
子どもの勉強につきそうときには、わからないことを責める必要はありません。引っかかっているところをはっきりさせて、そこからやり直しをさせましょう。そして、それが暮らしにどうつながっているのか、子どもに実感させることが親の役割です。〝ドリルで正解を出せるだけ〟の学力では、いざというときの生きる力につながりません。

いまこそ、社会と向き合う力を

【棚澤】非常時には社会の動きを把握することも重要ですね。子どもにもニュースを通して社会との向き合い方を教えていかねば……と思っています。子どもにニュースを伝えるときのコツはありますか?

【弘田】子どもと一緒に一緒にニュースを見たり、新聞を読んだりすることはとても大事です。いまは、これまでの社会を成り立たせてきた価値観が大きく変わりつつある時代。「なぜこんなことが起きているのか?」と〝いま〟を理解することは、今後さらに大きな変化が起きたときに時代から振り落とされることなく、自分のすべきことを見つける力の源となってくれるはずです。
親子でニュースを見るときは、親が〝翻訳者〟になってニュースの内容を子どもに合わせた言葉に置き換えてあげてください。単に情報を正しく伝えるという意味だけではなく、「相手の状態に合わせて物事を伝える」という姿勢が、子どもの見本にもなります。
ニュースを理解すると、子どもの口からは「どうして?」が出てきます。これは成長の芽ですね。たとえば、新型コロナウイルスが流行している時期であれば、「ウイルスはどうして感染するの?」などという質問が出てくることでしょう。ある程度考える力のある年齢の子なら、ヒントだけを示して考える道筋を見守るのもいいでしょう。パソコンでの検索方法や図書館で資料を探す方法など、情報源の探し方を教えるのもいいですね。食べものを与えるだけでなく、狩りの方法を教える動物の親と同じです。ウイルスの仕組みが分かったら、そこから「ウイルスにとって我々人間は宿主なので、宿主が死んだら困る。宿主を生かさず殺さず、ほかの人に移すように動いているウイルスって不思議だね」という話もできるでしょうし、高学年の子ならその流れで遺伝子や生殖の原理について話すこともできるでしょう。ただただ、「外出しちゃダメ」「汚いモノを触っちゃダメ」と言うのではなく、ウイルスの原理を学ばせる。そして、ひとつの知識からより深く連鎖的に学びを広げていく。これを子どもが楽しいと感じるようになったらしめたものです。
私たちは何でもすぐにスマホで検索しがちですが、最短距離で正解にたどり着くよりも親子でじっくり考える癖をつける方が、長い目でみれば生きる力につながりますよ。
小学校では2020年から、中学校では2021年から全面実施される新学習指導要領でも、「表現する」「判断する」ということが重視されています。「表現」というのは自分を一方的にアピールすることではなくて、相手の状況を理解した上で、自分の気持ちを伝えられること。「判断」というのは、自分がいま置かれている状況を理解して、そのなかで最善を尽くすこと。これは、教科書で学べることではなく、大人を見ながら学んでいくことです。これからの社会では、間違いなくこれまで以上に物事の本質が求められるようになります。必要とされるのは、現行の社会が壊れたとしても自分の力で生き抜く知恵。ぜひ、そんな知恵につながる学びを模索してみてください。大人も一緒に学び、ときに子どもに教えてもらいながらも手腕を発揮していければ、学びは非常事態下でも必ず大きな実を育んでくれることでしょう。

いま、子育てどうする?書影

『いま、子育てどうする? 感染症・災害・AI時代を親子で生き抜くヒント集35』
弘田 陽介 話し手, 棚澤 明子 聞き手 定価:1,600円 + 税


著者紹介

弘田先生写真

弘田 陽介(ヒロタヨウスケ)
ひろたようすけ
1974年生。福山市立大学教育学部准教授。
専門はドイツ教育思想、実践的身体教育論、子どもと保育のメディア論。
3人の男の子の父親。
著書に
『近代の擬態/擬態の近代  カントというテクスト・身体・人間』
(2007年、東京大学出版会)、
『電車が好きな子はかしこくなる  鉄道で育児・教育のすすめ
  交通新聞社新書』(2017年、交通新聞社)、
『子どもはなぜ電車が好きなのか 鉄道好きの教育〈鉄〉学』
(2011年、冬弓舎)等がある。

棚澤写真

棚澤 明子(タナザワアキコ)
たなざわあきこ
1973年、神奈川県生まれ。
映画配給会社、フランス語・フランス料理スクール勤務、
フランス語翻訳者を経てフリーライターに。
著書に
『子鉄&ママ鉄の電車ウオッチングガイド・東京版』
(2009年、枻出版社)、
『子鉄&ママ鉄の電車お出かけガイド・関東版』
(2011年、枻出版社)、
『子鉄&ママ鉄の電車を見よう!電車に乗ろう!』
(2016年、プレジデント社)、
『福島のお母さん、聞かせて、その小さな声を』
(2016年、彩流社)
『福島のお母さん、いま、希望は見えますか?』
(2019年、彩流社)
がある。

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