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故事成語「韓信の股くぐり」と「短気は損気」

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オリジナル記事はこちら:https://sairyu-sensei.com/matakuguri/

韓信の股くぐり:出典と意味

「項羽と劉邦」で後半に大活躍する大将軍「韓信」からの故事成語。

出典は史記から。

秦の始皇帝の没後、漢の時代ができるまでの物語からです。

年代で言うと、紀元前200年。いまから2,200年前の事を記した史記。2000年前なので史実かどうかは別ですが、貴重な資料です。

さて、この韓信将軍。「背水の陣」や「国士無双」、「四面楚歌」「敗軍の将は兵を語らず」等の言葉に関連しています。

物語として

項羽と劉邦の激しい戦い。劉邦が最後に勝ち、「漢」を建国。

建国の際の三大功労者は、「蕭何」「張良」そして今回の「韓信」。

若かりしころ、貧しい韓信は居候(いそうろう)を重ねていました。たもとには大きな剣。

街のならず者が、貧しいながら大きな剣を持っている韓信の姿を見て、街の真ん中で、「死ぬのが怖くなければその剣で俺を刺してみろ。できなければ俺の股をくぐれ」と挑発。

大の大人が他人の股の下をくぐるのは屈辱。一度キッと相手をにらみつけた後、韓信はその男の股をくぐります。

街の人たちは大笑いして韓信を軽蔑・嘲笑。

その後、彼は項羽の元を離れ、蕭何の人を見る目に劉邦へ推薦。大将軍となります。そして不敗・怪物並みの項羽を倒し、「漢」という400年続く帝国を作る礎になります。

時代が安定した後、彼は「俺がこのような出世できたのも、あの時の屈辱があってこそ」と言って、その股をくぐらせたならず者に職を与えます。

「韓信の股くぐり」意味:目先の事にとらわれず判断を誤らない事

韓信、日本にもファンが多い将軍の一人。

普通の人間であれば「挑発に乗ってしまう」「臥薪嘗胆、相手をいつまでも恨む」等、自分のプライドを傷つけた人間を恨んだり、手を出したりしてしまいます。

出してはいけない手を出してしまい「こんな些細なことで」と反省することも…もちろんこの記事を書いている私もあります。

自分はこんな人間ではない、と理想が大きければ相手の挑発に乗ることがばかばかしくなります。

更に彼は、そのことを後になって「今の俺がいるのはお前のおかげだ」と言って食を与える。なかなか普通の人間ではできる事ではありません。

韓信の股くぐり:私なりの解釈

ここからは私の解釈です。国語の試験でこの答えを書くと×印になる可能性あります。

ケンカしない判断

そもそも喧嘩や挑発はどんな時に起こるでしょうか?

答えは「相手が自分のレベルに適度に近く、更に弱い(と思っている)」「コンプレックスを揶揄される」です。

ただ、股をくぐるだけでなく、その前に相手をにらみつけた韓信。自分自身の怒りを抑える意味もありますが、相手を威嚇する意味もあったのではないでしょう?

つまり、韓信は自分の方がはるかに強い。こんなレベルの低い人間と争っても仕方ない、と判断。俺はこんなレベルではないと考えることができる。

もし、あなたが誰かからの嫌がらせなどを受けている、イジメなどを受けているとき、相手はあなたを下にみています。でも、10年後、20年後は如何でしょう?

いま、目先の事で癇癪を起して、万が一後戻りできない事を起こしてしまっては元も子もなくなります。

今は逃げていても、勝てる自分の土俵に相手を乗せた際、この大勝負に勝てればいいのです。

腕力で勝てなくても、もしくは組織内の上下で勝てなくても、べつの自分の土俵で勝利することが大切です。

その際は「あなたのおかげで私は勝てた」と言える大人になりたいですね

自分の強みで魅せる

よくゲームや漫画で「将軍」というと、一騎当千の強い武将を思い出されるかもしれません。三国志で言うと「呂布」のようなイメージでしょうか?とくにプレステの「三國無双」等は何人倒したかを競う所もあります。

しかし、将軍と言うのは信賞必罰、何万と言う兵を自在に操り、敵を翻弄します。将軍個人が強いのではなく、組織として「勝利」という結果を出さなければなりません。

刻々と変わる相手と自分双方の状況判断と指示、そして兵隊を腹一杯食べさせる補給の確保等の指示が必要。

全ての場所で全勝するのは不可能です。彼の人生の中で、ならず者の股をくぐること自体は「小さな負け」。その場で1対1の戦いを行っても意味がないでしょう。

後に、韓信は自分の力を遺憾なく発揮して、大将軍になります。腕力ではなく自分の強みで勝負しました。

最初は小さな負けをうけます。しかしその後は大将軍となり「国士無双」と言われるほどの人物に。

平定後に、股をくぐらせた「ならず者」に仕事を与え、その話が私がブログに採用するほどの物語を作った彼の功績は、他に類をみません。

これが武勇伝の一つになり、韓信の株を上げる、まさに韓信らしい勝ち方なのではないでしょうか?

まとめ

挑発やイジメなどはどの世界にも存在します。その時にカッとして手を挙げてしまう、負けてしまうのは普通の人間。

ただ、今回の「韓信の股くぐり」のように、その時は屈辱を受けても後に成功した際、そのことで逆襲するのではなく職を与える、良い出来事として後世に言い伝えられるなど、なかなかできるものではありません。

学ぶところの多い言葉です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

韓信関連Note

ケイジ4世さんの記事。韓信の股くぐりの詳細が書いてあります

Merciさんの記事。項羽と劉邦のあらすじが分かりやすく簡潔に書いてあります。一言も秀逸。

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