見出し画像

【選手名鑑Vol.8 津金澤拓】 ーDFに捧げた10年間 。その裏には、彼の徹底した「準備思考」があったー

【ディフェンス(Defense)】:スポーツ競技において、得点されるのを防ぐ目的でオフェンス(攻撃側)の意図を読み、これを邪魔することである。あるいは、守備側のサイドや守備にあたる選手そのものを指す。 (ウィキペディア引用)


『立教DFの礎』 誕生。

今年、立教のディフェンスに新たな規範が誕生した。これまで曖昧だったDFの戦い方を纏めたもので名付けて『立教DFの礎』。

今年のDFコンセプトである、『個で負けないマンツーマンDF』『ポゼッションを奪い、攻撃に繋げるDF』で戦うにはどのようにすれば良いか。要素に分けて詳しく説明し、道筋を的確に示したものだ。これに基づき、DFメンバーは日々練習を重ねており、DF全体の核ともいえる存在である。


画像2

画像2

※実際の津金澤のノート リーグ戦から逆算してやるべき事を明確にした。

この『立教DFの礎』の構築を牽引したのが今回の主役である、津金澤拓。今年度のDFリーダーを務める。『DFの礎』その裏には、守備を強みに10年間スポーツをしてきた彼の”守備のスペシャリスト”としての信念があった。



”ディフェンス”との出会い

姉と共に北海道の札幌市で生まれた育った津金澤は、中学入学と同時にバスケットボールを始めた。彼の所属したバスケ部は札幌でも有名な強豪校であり、部員の大半がミニバス(小学校のバスケットボールクラブチーム)出身者であった。



「初心者の自分が、この中で生き残るにはどうすれば良いか。」


そう考えた彼は、皆がシュートやドリブルなど攻撃の練習に精を出す中、あえて守備の”ディフェンス”を自分の武器にしようという意図を持ち、ひたすら練習に励んだ。
彼の巧妙な計算と愚直な努力の結果、強豪バスケ部のスターティングメンバーの座を勝ち取った。勿論、卓越した守備力を買われての選出だった。また副キャプテンにも選出され、チームを牽引することとなった。


この頃から彼はDFというポジションに対し、”努力した分、裏切らない”という想いを強く抱くようになり、確実にのめり込んでいった。


中学・高校とバスケ部でDFを強みに活躍した津金澤。1浪して合格した大学では、札幌時代からの旧友 本田(19卒AT)の影響もあり、ラクロス部へ入部した。

新しいスポーツでも彼が選んだポジションは、やはりDFだった。更にラクロスにおけるDFはバスケとは異なり、守備だけに特化してプレーをする事が出来るポジション。津金澤の強みを活かすには最適だった。



ところで、津金澤のチャームポイントといえば? 
この質問をSAINTSの部員にすれば間違いなく9割が、


「脚」


と答えるだろう。

画像6

※立派なふくらはぎを持つ津金澤↑

彼自身、実は意識して脚を鍛えたことは一度も無いという。それどころか細くなるトレーニングをネットで検索したこともあったそうだ。細くなる方法を知っている人がいたら、是非彼に教えてあげてほしい。

だがこの強靭な下半身無しには、現在の津金澤の最大の武器とも言える「強い1on1」を習得することは出来なかった。


挫折知らずの男の苦い経験

中高時代で培った確かなDFセンスとこの強靭な肉体のおかげもあり、2年、3年とリーグ戦に全試合出場。最高学年の現在はチームのDFリーダーを務める津金澤。常に試合に出場し、一見順調そのもの。挫折を知らないようにも思える彼だが、私たちの知らない苦い経験があった。


「こいつ、メンバーに入れる必要ある?」

初めてリーグ戦のメンバー入りをした2年次に、津金澤がAチームの上級生から受けた言葉だった。

Aチームのミーティングで、こんなようなことを言われる事なんて普通にあった。向上心が見えないと言われたこともあった。

現在は懐かしそうに語る。だが当時は何をすれば良いか分からずただ必死だったという。


「自分がAチームで活躍するにはどうしたら良いか。」

中学バスケ部時代の初期の頃と同様に、ここでも津金澤は考えを巡らせた。


1on1では絶対に負けたくない
そう決めた当時2年の彼は、自分の1on1について一つ一つ言語化し、整理することを徹底した。


どのような意図を持ち、このポジショニングをとるのか。
なぜこのクロスの持ち方なのか。


相手の特徴も分析し、ひたすらに考え細分化、言語化、準備を重ねた。

とにかく必死にチームに食らいつき、着々と実力をつけていった。



自分の事で精一杯だった2年次だったが、3年になるとチームの代表としての責任感から「自分がチームを勝たせなければならない」という意識が芽生えた。

自分の一つ一つのプレーが立教の勝敗を左右する。
自分がやられたら、立教が負ける。

そんな想いを常に持つようになった。津金澤のその想いは最高学年、DFリーダーとなった今でも決して変わることは無い。


勝負の鍵は「準備」にある

「お釣りが来るまで準備しろ」

これは何においても準備を徹底し、常に最高のパフォーマンスを発揮する津金澤が念頭に置いている考え方だ。「やり過ぎたな」と思うくらいの準備で良い。その準備のお釣りが次への貯金となる。準備不足でお金が尽きてしまうのはもっての外。


これまでのスポーツ人生や受験勉強、就職活動など人生のあらゆる勝負所で「準備で勝つ派」だった津金澤。自身の経験から得たこの確かな手応えが、今日も彼を動かしている。起こりうる可能性を先読みし、それに対して備えることを決して怠らない。


だからDFリーダーとなった彼は、『立教DFの礎』を構築して徹底的に準備した。自分の2年次の「何をすれば良いか、どこに向かえば良いかわからなかった状態」の経験から、立教で求められる選手・要素を明確化し、誰でも準備し易くした。


『DFの礎』はまさに彼の徹底した準備の賜物と言えるだろう。




仲間からの信頼

「自分を一番理解してくれていると思う部員は誰?」

筆者のこの質問に対して津金澤は、

「1番か・・・。『第一志望群』とかじゃダメなの?(笑)」
と、1人に絞らず数名を挙げようとする。ここでもまた彼の保守的な一面が伺えた。


そんな彼が名前を挙げたのは、AチームATの加賀屋、副将でDMFの畑、学生コーチの丸田。3人とはオフ期間にドイツ旅行を共にしたほどの仲だ。

画像7


※左から加賀屋、丸田、津金澤、畑(ドイツ旅行にて)

画像5

※左:加賀屋、中央:畑、右:津金澤


そして津金澤をよく知る彼らに話を聞いた。様々なエピソードを語ってくれたが、3人から得た津金澤についての言及には共通点があった。





それは津金澤の、

「一人一人ときちんと向き合う姿勢」



後輩でも同期でも誰であっても変わらず決して蔑ろにせずに、一人一人としっかり向き合うこと。

時に鋭く厳しいことを言っても、それが常に相手を思い、一人一人としっかり向き合った上での言葉であること。


「何か悩みや不安があると、拓にまず相談したいと思う。俺が女子だったら拓みたいな人と付き合いたい(笑)」と加賀屋は話す。

画像3

※親友 加賀屋(AT4年)





津金澤のこの姿勢は生まれつき備わったものなのだろうか。

実は彼には、大学4年になった今でも心に留めている中学時代の恩師の存在があった。自分に最も影響を与えた人物としても名を挙げたその人物は、中学バスケ部時代の監督だ。

画像4

※最前列左から2番目が恩師の監督、4番目中央が津金澤。


グラウンドを出入りする時に欠かすことのない挨拶、ゴミ拾いの徹底など現在のラクロス部とも通ずることをその恩師から中学時代に教わった。更にその人物からはスポーツをする以前に、まず人としてのあり方を教わった。



続けて津金澤はこう語る。

「その人の何が凄いかって言うと、『一人一人ときちんと向き合うところ』だと思うんだよね。」



決して辻褄を合わせたわけではなく、ただ各々に話を聞いた結果だ。


津金澤は中学時代から慕う恩師と同じ部分を、現在は周囲の部員から認められるようになっていた。そんな姿勢に魅了される人も多く、彼の周囲から人が絶えることは無い。セインツ屈指の情報通である彼の所以はここにあるのかもしれない。


特別大会への想い

「正直、武蔵戦(初戦9/26)では自分たちが今までやってきたことが全否定された感覚に陥った。情けないし不甲斐ない。一緒に闘ってきた後輩に何も与えられなかった。」


徹底的に備え迎えた特別大会の初戦であったが、結果は2-8と一蹴されてしまった。


今、立教男子ラクロス部は窮地に立たされている。10月31日の中央戦で12点差をつけて勝利することしか生き残る道は無くなった。





その為には何が必要か、主将立川(DF)らと勿論考えた。


やることの基盤は大きくは変わらない。

でもその上で必要なのは、
ポゼッションを「奪いに行く」ディフェンス。



グラボの一つ一つを死ぬ気で拾うこと
ゴールまで何が何でも繋げること
目の前のボールに突っ込む勢いで追うこと
守るのではなく奪うこと


「でも、これこそ俺らの原点なんじゃないかと思う。」



確かに、このような戦い方には見覚えがある。
今よりももっと狭いコートで、目の前の一瞬一瞬に全てを懸けていた、3年前の学年試合、サマー・ウィンターステージ。


「あの戦い方で、俺らは勝ってきたんだ。」

「サマーの時と同じように、挑戦者としての原点に立ち返って戦うべきなんだ。」




津金澤拓の最大の武器である保守的な性格、そこから生まれる圧倒的な「準備力」が立教DFの核となり、立教DFを土台から再構築した。この礎は今後も脈々と受け継がれていくだろう。






そして彼の準備は2週間後、必ず実を結ぶ。

気概溢れる「攻め」の立教ディフェンスは、私たちをどのように魅了してくれるのだろうか。

身体を張り、全てを懸けて闘う彼らの姿が
10月31日の試合で見所になるということなど、言うまでもない。

画像8


記事執筆:4年 飯沢桜子




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?