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【選手名鑑Vol.7 星一生】 ー学生コーチとエース。前代未聞の二足草鞋に挑戦する彼の野望に迫るー



自粛期間、SAINTSで最も大きな決断をした一人の男がいた。


今回の主役、星一生。

ATとして活躍し、昨年はBチームをFinal4に導いた。


そんな彼がした大きな決断とは。
またそれに秘めた想いとは。
現在の胸の内を、赤裸々に語ってもらった。


1、勝因になった実感


昨年、Bチームは全国準優勝という功績を収めた。

Bチーム史上初のFinal4進出に、チームは最高潮の盛り上がりを見せたことは、言うまでもない。


しかしそんな華々しい成績を収めたBチームも、発足当初は練習の雰囲気も悪く、一人一人がバラバラだった。

どうしたらみんなが同じ方向を向けるのか、日々試行錯誤を重ね、
幹部四人を筆頭に、互いの考えを尊重し合えるチーム作りを進めた。


「幹部でめちゃめちゃコミュニケーションとって、問題を一つずつ解決した。


俺はOFや練習メニュー、回(4年西崎)はDFと柔らかい雰囲気、丸(4年丸田) もGと柔らかい雰囲気(笑)、文(4年加賀屋)は全体の雰囲気を笑いで作るっていう感じですみ分けがあって、幹部のバランスが取れていたと思う。

俺が鋭い意見を言っても3人は常に優しく、時には冷静な判断をしてくれた、これが一番助けになった。」


次第にチームは一体感を帯びるようになった。

彼にとって、最も印象深いのは日体戦だという。
悲願のFinal4への切符の獲得が決まる試合だ。


彼はその試合で大活躍した、、 訳ではない。
むしろ無得点、ショットは全て枠外だった。


「後輩や、おみ(4年石井)の活躍のおかげで勝てたんだよね。
自分が活躍してない試合の勝利がこんなに嬉しいのは初めてだった(笑)」


試合では活躍できなかったものの、彼の努力は確実に功を奏していた。
自身が毎日考えた練習メニューが、勝利に繋がったことを実感したのだ。

まさに、”一人一人が勝因に”なった瞬間だった。


2、大きな決断の真相


彼がした決断とは


プレイヤーとして日本一を目指しながら、一年生の学生コーチを務めること


かつて、学生コーチを務めるとなれば
プレイヤーとしての道は諦めるというのが、主流の考え方だった。

一体なぜ前代未聞の決断をしたのか。


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コロナがなかったら、学生コーチはやっていないという。

自粛期間に突入した頃、もう引退まで練習できないかもしれないと本気で感じていた。


「そんなとき、新歓班が頑張ってて、

どんどん新入生が入部してるのを見て

練習ができないにも関わらず入部を決断してくれた奴らと過ごす一年なんて、絶対面白いだろうなって感じたんだよね」


彼らの希望を一緒に叶えたい、応援したい。
それを体現するためには、学生コーチになるべきだ。
そんな想いから、星コーチが誕生した。

とは言いつつ、練習再開の見込みは全く立っていない状況。


−最後の一年間を学生コーチに捧げることに、不安はなかったんですか?

筆者が尋ねると、即答する彼。


「不安とか怖さは、全くなかった。

何もしないことの方が、怖かった


新入生への期待と、確固たる意志が、彼を熱くさせていた。


3、自身を変えてくれた恩人



「いや〜越えたいのよ、あの人を」


彼がどうしても越えたい存在とは
彼が一年生の頃の学生コーチ、河野瑞希だ。


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星と会話を弾ませる河野(右)


高校時代はゴルフに没頭し、個人競技に慣れていた星にとって
大きく欠けている部分があった。

組織の一員として、協調する力だ。


彼が一年生の頃の練習では、学年みんなが夢中で練習している最中

「この練習意味なくない?」

と、周りを気にせずぽろっと本音をこぼす、そんなことが多々あった。

練習を良くしたいという意思があるからこそ出てしまう言葉だった。
しかし、周囲には星の言動を気に食わない部員もいた。



「本当にラクロス部に入って良かったと思う」

苦い顔をしながら続ける。

「もしラクロス部に入らないまま社会人になっていたら、組織で全く使えない人間だったと思う(笑)」


個人競技の経験から、一人で考える力は十分に身についていた。
しかし組織で必要なのは、それを周囲の人と擦り合わせ、さらに良くしていくこと。
当時の彼にとって、その能力を発揮するには足りないものが大きすぎた。


『人を動かす』

そんな星に、河野コーチが薦めた著書だ。
人づきあいの根本原則が論じられた、デール・カーネギーのベストセラーである。


河野コーチの指導のおかげもあり、
言葉の選び方、周囲からの見られ方などに配慮し
組織の中で信頼関係を構築できるようになっていった。


そして学生コーチとして、プレイヤーとして、組織で活動する今。

「最近、スター教とか言われるようになって、ちょっと嬉しい(笑)
自分なりに、瑞希さんを越えていけたらいいな」


彼なりに越えるとは、ただより良い結果を残すことではなかった。


「結果を出すことも大事だけど、一番は認められたいっていう気持ちが強いかな。
それはコーチが良いとか、俺が認められるということではなくて。

今年の1年違うねって、チームとして認められたい


4、星流の育成法



−学生コーチから見て、今年の一年生はどういう印象ですか?

「めっっっちゃいい子ちゃん!(笑)」

どこか自慢げな表情で続ける。

「部室きれいに使ってって言ったら絶対きれいに使ってくれると、自信持って言える」

たしかに今年の一年生は、“当たり前”を怠らない。

ゴミを拾う、
ゴールを片付ける、
防具をきれいに並べる、
ボールアップは最後まで自分たちでやる。
先輩に対しての挨拶が素晴らしい!


一方で、こんな一面も。

「例年の“立教らしさ”も持ち合わせていて。
いけいけー!!みたいなどんちゃん騒ぎの要素は、なぜか受け継いでるんだよね(笑)」


そんな一年生に対して毎日欠かさず行っていることとは

ひたすら、考えさせること

「嫌われるくらい、『何で?』って聞いて、考えさせてる(笑)」


なぜそこまで、「考えさせること」にこだわるのか。

「逆に考えないなら、何で君は部活にいるの?って思う。
スタッフだって、考えないなら自分の手ではなくて三脚を置いてビデオを撮れば良い」

彼にとって考えることとは、部に所属することそのものなのだ。
「ラクロスを通じて世界で活躍する人材を輩出する」という理念を達成するためには、受動的になってはいけない。


なぜこの練習をするのか、
ビデオはどの位置から撮るべきなのか、
日々の練習で思考を繰り返してこそ、成長でき、
部活にいる意味がある。

それこそが、星流の育成法だ。

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星と一年生プレイヤー


5、野望


プレイヤーとしての目標を訪ねた。


一年生に、影響を与えたい

プレイヤーという立場でも、現在の彼の原動力は一年生。
学生コーチに就任し、初めて”人から見られる立場”に立った。

指導者としての威厳や、尊敬される人間性はもちろん、
ラクロスで成果を出すことが、影響を与えることに繋がると感じているという。

「今まで、チームが勝てばある程度満足してた。
けど、自分が活躍しなきゃいけないっていう個人の考え方も持つようになったかな」

彼にとって個人の考え方とは、チームへの意識があってこその考え方だ。


自らがプレイヤーとして成長し、活躍することで、
Bの基準を上げることが、Aの底上げに繋がる。

全ては”礎”を築くためだ。


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同期に対して思うこと。


「俺らは、コロナに負けるようなチームじゃない」

コロナを契機に学生コーチへの道を歩み出した彼の言葉には、重みがある。

数多くの”史上初”の功績を生み出し、最強世代と言われてきた。


きっと、その名に恥じぬ終わりを迎えてくれることだろう。



そして、
最高学年になった今もなお挑戦し続ける彼の姿が
今後も多くの人を勇気付け、影響を与えるはずだ。


彼の挑戦は、まだ始まったばかりである。



執筆:三年MG 畠中来実

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