見出し画像

【選手名鑑Vol.5 瀬下有加】ー 「スタッフは雑用係じゃない」 天真爛漫・SAINTSの元気印。  彼女が本気で目指すスタッフ像とはー


「大学以前までは、行き当たりばったりのハッピーライフを送ってきました。」

そう恥ずかしそうに笑いながら話すのは、今回の主役である2年マネージャーの瀬下有加。選手名鑑史上初のスタッフの登場である。


新入生に向けた栄養説明会の開催、部員を対象とした栄養情報発信用のインスタグラムの開設、度々行われる幹部ミーティングにも2年生でありながら意欲的に参加する。

ついこの間まで「人懐っこい甘えん坊の1年生」という印象だったが、現在は様々な場面で意欲に溢れ、頼もしい姿を見せる。今回はそんないつの間にか主体性を身につけ始めた期待のルーキー、瀬下の知られざる素顔に迫る。彼女の成長の裏側にあるものとは。


天真爛漫少女、ラクロス部に入部

中学・高校と、雰囲気が楽しそうだったからという理由で何となくダンス部に所属した。それでも卒業時には

「あの時この部活に入って本当に良かったなあ〜ハッピー!!」
と当時の自分の決断に感謝した。

そんな彼女は大学でもまた、新歓の食事会での「雰囲気に魅了」され、男子ラクロス部への入部をその場で決意した。

画像1

※高校時代ダンス部の瀬下(写真中央)


暗黒の1年間

だが入部当初は、すぐに部活に対するやり甲斐を見出せた訳ではなかった。部活の同期スタッフとは業務上だけの関係。
そうならざるを得ないほど、膨大な量の仕事に追われた。練習や試合のビデオアップやスコア纏め、様々な雑用。
更に先輩スタッフからの、メールの文章一字一句や時間厳守についての厳しい指摘に毎日落ち込んだ。例年1年スタッフが行なってきた仕事とはいえ、その業務に追われる日々は、彼女の持ち前の明るさとパワーを削いでいった。


中でも最も苦しんだのは、自分達の行う仕事が何処に繋がっているのか分からなかった事だった。


「私たちが長時間かけてやっているこの仕事は、本当に選手や部の為になっているのだろうか。」


この疑念を抱きつつも、やらなければならない事を淡々とこなすしかなかった。



転機の訪れ

そんな彼女に転機が訪れた。皮肉にもそれはこの「自粛期間」。


瀬下は目を輝かせながらこう語る。
「私はこの自粛期間があって、本当に良かったと思っているんです。」




新型コロナウイルスの感染拡大防止の為、SAINTSは3月〜7月の期間でグラウンドでの活動が自粛となり、オンラインツールのzoomを用いたミーティング期間に突入した。ミーティング回数は増えたが、普段よりは自由に使える時間が格段と増えた。

そんな中、暇が嫌いで常に何かをしていたい性格の彼女は行動に出た。


「部全体に共有されたミーティングには、とりあえずほぼ全部参加してみました(笑)」


そして自由時間を活用し、普段時間が無くて取り組むことが出来なかった解剖学や栄養学について自ら調べて学んだ。そうしていくうちにミーティングでは疑問点や自分の意見が生じるようになり、それを知る為、話す為に自らミーティングを主催することも増えていった。


また自粛以前から瀬下が所属していたフィジカル班から派生して「栄養班」が発足。そこで彼女のやる気を更に加速させる存在と出会う事となる。
国士舘大学OBの中村鮎人フィジカルアドバイザーだ。

画像2

※中村鮎人フィジカルアドバイザー


「鮎人さんは社会人であるにも関わらず、自粛期間に毎日のように一緒にミーティングをしてくれて、(というか毎日のように召集されて…(笑))
常にふざけているけれど、やる時には凄く真面目に栄養や身体の仕組みについて教えてくれました。その一環で一緒に栄養のインスタグラムを開設しました。」


栄養インスタグラムでは部員限定公開で栄養についての情報発信をしている。題材は「三大栄養素について」「PFCバランスについて」「夏バテに効果的な食事」等、多岐にわたる。情報を発信する為には、食材の栄養素やその効果を調べ、栄養士の方々に正しい情報を伺う等の下準備が不可欠である。


画像3

※瀬下が中心となり発信している、部員専用の栄養インスタグラムの様子




ミーティングへの参加や栄養インスタグラムの発信、グッズ作成の担当等、現在様々な仕事を抱える瀬下。だが多忙な日々に対して今の彼女はこう語る。


「忙しい毎日が今はとっても楽しいです。雑用係にならないで、スタッフだからこそ出来る事に自分から取り組もうとしています。

勿論やらなければならない仕事は沢山あるけれど、自分で考えて必要だと思った事を発信したり行動に移したりする。そうして自分で起こした行動に対して、反応が返ってくるのが嬉しくて、また頑張っちゃおうってなりますね。」



そして自粛期間は、同期スタッフの関係性にも変化をもたらした。自粛を機にzoomミーティングでの会話が増え、他己分析で互いの強み弱みを話し合いもした。今まで知らなかった同期の秘めた想いや各々が挑戦したい事を皆で分かち合い、互いに影響しあって応援出来るようにと変化した。これまでとは比べものにならない程の深い関係へと進化を遂げ、この夏は2年スタッフ全体としても大きな転換期となった。


「今私は同期3人がとても誇りだし、彼女達が頑張っているから私も頑張らなきゃと思える。逆に彼女達から、私が頑張っているから頑張ろうと思えたと言ってもらったこともある。この頑張りのサイクルのような話、以前立川さんがしてましたよね(笑)体現しちゃいました(笑)」

画像4

※同期の2年スタッフ(左から太田、隈部、瀬下、柿田)



成長の裏側、副将後藤の存在

だが単に自粛により時間が増えただけでは、これだけ意欲的に行動に移すことは容易ではないはずだ。



駿太さんって本当に凄いですよね(笑)」
彼女は、自身の成長の裏にある副将 後藤駿太の存在を話し始めた。


「ラクロス協会の委員長で協会全体を運営しながら、立教の副将で部活全体も見て沢山行動に移していて。でも全体だけじゃなくて後輩一人一人の面倒もいつも見ていて。そして自分のラクロス、FOにも向き合っていて、凄くアイデアマンで、いつも楽しそうで、いつも燃えてる、ってイメージです勝手に(笑)」


瀬下は自粛期間に数多くのミーティングに参加したが、その殆ど全てに後藤の姿があった。そんな、チームやラクロス界の為に動く後藤を目にする機会が増え、彼女自身ももっとSAINTSの為に出来る事を探そう、実行しようと思わされたと言う。


後藤は、彼女が担当しているグッズ作成の話やスタッフの理想像の話、この自粛期間に悩んだ事に対し、いつも親身になり時間を割いて相談に乗った。話すうちに彼女は

「2年生だから何も出来ないなんて事は無いんだ。」

そう気がついた。

画像5

※左:4年後藤、右:瀬下

目指すスタッフ像

「どのようなスタッフを目指しているか。」

筆者の質問に瀬下はこう答えた。


チームの内部同士で比較するのではなくて、『立教のスタッフ』として外部に誇れるような組織になりたい。『あれがセインツのスタッフだよ』と一目置かれるくらい、全員が主体的に動ける組織になれたら。生意気だと思うんですが、それが私たちスタッフが日本一の為に出来る、しなければいけない事だと思っています。



入部当初は「与えられた業務をこなす」ことが自分の役割だと思っていた彼女。

だが自粛期間を経て、自分がSAINTSでやりたい事について考え、それを実行に移しても良いという事に気がついた。そして今ならそれを実行する時間環境がある。


「私には組織を語る事はまだ出来ません。でもSAINTSが風通し良く、様々な事にチャレンジ出来る環境になったことを肌で感じました。その環境があったからこそ、こんなに色んな事をやってみる機会があったのではないかと思います。」



自粛期間は活動が制限され、出来る事も限られる。だがその一見不利に捉えられがちな状況を自身や部にプラスに転換して組織に新たな風を吹かせている瀬下。

仕事を「やらされている」彼女はもう居ない。

持ち前の明るさに加え、物怖じせず自ら考え前進し続ける姿勢を身につけ始めた彼女が今後、SAINTSやラクロス界にもたらす影響は計り知れない。

画像6


執筆:4年 飯沢桜子

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?