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Like-minded(ライク・マインデッド)な仲間が集うこと

2023年7月26日~28日まで鳥取県八頭郡智頭町にて野生の菌でパンを作る「タルマーリー」とおうちSEM SQUARESの共同企画で「~麴の降るまち~
智頭の森の恵み、発酵と地域内循環を学ぶSEMツアー!サマーキャンプ」
が開催されました。弊社はタルマーリーさんおうちSEM SQUARESさんをお繋ぎしてサポーターとしてキャンプの企画・運営に参画をしました。

詳しいご報告はおうちSEM SQUARESさんからなさるかなと思いますので、こちらでは私がキャンプに参加して何を感じたかをシェアしてみようと思います。

おうちSEM SQUARESについては以前の取材記事(こちら)をご覧ください。

海外の教育現場で知ったこと。

私は「才能はみだしっ子の育て方」を書いた時に海外の事例を様々な専門家から学び「Like-minded peers (同じようなマインドをもつ仲間)」をもつ重要性を知りました。才能はみだしっ子たちは同年齢の子どもたちとは時に話が合わず学校などでの集団生活では孤独になりがちです。近くに同じような個性を持つ子どもがいないとまるで自分が宇宙人なのではないかと思うほど周囲と自分の違いに悩むこともあります。孤独はとても辛いものです。

ギフテッド教育が進んでいる国ではギフテッドの子どもたちが集う学び場を設けていることがよくあります。週に1度の特別プログラム、ギフテッドの子ども向けの専門学校、学校が休みの間のキャンプなどです。孤立しがちなギフテッドの個性を知る専門家はギフテッドの特性をもつ子ども同士が共に過ごすことがとても大切だと言います。実際に2018年にニュージーランドで視察をしたギフテッドの専門学校の生徒たちは学校内で幅広い年齢の子どもたちがとてもリラックスした様子で伸び伸びと過ごしていました。それぞれ興味の対象は異なっていましたが、ギフテッドの特性である「同年齢の子どもと比較して突出した能力があること」を当たり前として受入れる環境では、自分の「好き」を徹底的に深掘りし好奇心を満たしていましたし、子ども同士はお互いの個性をリスペクトをしつつ、異なる関心についても刺激を受け学び合う様子も見られました。

訪問したNZの専門学校

このような環境を目の当たりにして、私は日本でいつか才能はみだしっ子たちが集う場を作れたらと思うようになりました。そして子どもだけではなく、少数派である才能はみだしっ子を育て、孤軍奮闘されている保護者の方たちにも、つかの間一人きりの子育てから解放され、同じような経験をしている保護者同士で話ができるような場があればと思っていました。とはいえ具体的にどのように実現すれば良いかはまったく想像がつきませんでした。

タルマーリーとおうちSEM SQUARESのコラボレーション

ご縁があり2022年8月にタルマーリーの渡邉麻里子さんと出会い、麻里子さん、パートナーである渡邉格さんとスタッフの皆さんが作り出した自然豊かな環境から菌を採取してパンやビールを作るというとても個性的なお仕事を知り、この世界を才能はみだしっ子たちに見せてあげたいと思いました。元々は都会育ちであった麻里子さんも探究心旺盛な子どもたちに自然の中で過ごし、好奇心を持ってパン作りを体験して欲しいと強く共感をして下さいました。

そして私は教育メソッドを持っているわけでもなく、才能はみだしっ子を含めた多様な子どもの個性を理解し、場作りが出来て、更に学びへと繋げることができるパートナーが必要と考え、以前取材をさせて頂いたおうちSEM SQUARESの上田志穂さん、知久麻衣さんにご相談をしました。「ぜひお話を聞いてみたい!」とお二人とも前向きに考えて下さり、Zoomで顔合わせを行いました。

その後、具体的なイベントを一緒に考えるようになり、毎月四人で打合せを行って、2023年3月には上田さん、知久さんと智頭町を訪問をしてサマーキャンプの骨組みが徐々に組み立てられていきました。そして2023年7月には実際にキャンプを開催するに至りました。

キャンプが始まって

キャンプ当日を迎えました。集合時間に参加者が続々と集まりはじめました。保護者1名+子ども1名、保護者2名+子ども1名、保護者1名+子ども3名、大人1名など参加者は様々な組み合わせで総勢16名でした。

荷物を下ろして、一息ついた子どもたち。事前にZoomで軽く顔合わせをしていたとはいえ初対面です。どんな風に関わり合っていくのかな?と様子を見ていたところ、最初は初めての場所に物珍しさでキョロキョロしていたり、保護者のそばにピッタリくっついていたりしていた子どもたちが、タルマーリーの職人さんの説明でパンの生地作りをはじめると隣同士で「難しいね」「手にくっつくね」「こうするといいよ」などと徐々に話を始めました。

手にくっつく生地が段々ひとつにまとまっていきます。

その後、夕食の時間には参加者が持参してくれたなぞなぞをしたり、夕食後は小学校の校庭に行って星を観たり、ブランコをこいだり、走りまわったりして過ごしました。キャンプ中はどのアクティビティもあくまでも「やりたい人」が参加、強制は一切なしが主催者と参加者の暗黙の了解でした。

保護者と一緒が一番の安全地帯だけれども、参加者と一緒にいるのも大丈夫になり段々とお互いに関わり合えるようになっていきました。子どもたち同士の関係性は強引さがなくてお互いをリスペクトしているように見えました。そしてそれはキャンプが終わるまで続きました。

Like-mindedでLike-interestな集まり

今回、キャンプのメインテーマは「タルマーリーで本物に触れて、そのパン作りを体験すること」。パン作りはレーズンと水から作った酵母、小麦粉と水だけが材料です。このシンプルな材料で本当に初めてでもパンが作れるのか。そのテーマに「興味を持って」参加したという点が参加者の共通点でした。つまりLike-interest peers (同じような関心をもつ仲間たち)でもありました。

同じようなマインドを持っていても、興味の対象が異なると時に話しの接点を見つけるのが難しいこともあります。今回は同じようなマインドを持ち、さらに同じような関心を持つ仲間が集まったことが、さらに居心地のよい関係性を作り出したのではないかと想像しています。

自分たちでパン生地を作り、発酵させ、畑で野菜を収穫して、発酵した生地をそれぞれが手で伸ばしてピザ生地にし、野菜とソースをのせて焼く。このプロセスを自分なりに終えて完成したピザを見つめる参加者の目はキラキラと輝いていました。

タルマーリー那岐工房近くの農家さんの畑で野菜を収穫

今回はタルマーリーの職人さんから大人も子どもも全く差をつけることなく同じ内容を学び、同じ体験をしました。小学生から中学生の参加者は時に手伝ってもらいながら、そして時には大人をリードしている場面も見られました。完成したピザを前にした誇らしい表情と一口食べて「美味しい!」と思わず口から漏れた言葉は大人も子どもも共通でした。

二泊三日の旅程を終え解散時間を迎えたときに「あっという間だった」「もっといたかった」という声も聞こえてきました。最寄りの駅まで迎えに来てくれたお父さんの顔を見たら思わず涙が出ちゃったというエピソードも聞きました。自宅でもピザを再現して作りたいと帰宅後すぐにレーズン酵母を作っているというご家庭のお話もありました。

このキャンプが参加された皆さんにとって思い出に残る体験となれば良いなと思います。そして気が早いのですが、またいつかLike-mindedでLike-interestな仲間が集まれるような機会が持てればとも思っています。

お世話になった皆様へ

今回、滞在中の行程をプロデュースしてくださったタルマーリーの渡邉麻里子さん、格さん。実際の説明やサポートをしてくださったタルマーリーの境晋太郎さん、興梠将太さん、陳野にこさん、川口達也さん、住田樹生さん。渡邉家の素子さん、光さん。とてもお忙しい時期に大変細やかなご対応を頂き誠にありがとうございました。タルマーリーや智頭町を第二のふるさとのように居心地良く感じられた参加者の方ばかりであったと思います。

おうちSEM SQUARESの企画として、サマーキャンプのプランニング、募集、参加者との調整をして下さり、現地では子どもたちの特性にあわせて学びのサポートをされた上田志穂さん、知久麻衣さん。実地でおうちSEMを実践することが出来て参加者の皆様はとても充実したご様子でした。カメラマンとして参加して下さった知久景虎さん。素敵な写真の数々をありがとうございました。皆様のおかげで参加者の方々が安心して旅程を楽しみ、心に残る思い出作りをされたのではと思います。

そして、智頭町の宿泊先の「楽之」の竹内麻紀さん、成人さん、「明日の家」の村尾朋子さん、「林新館」の皆様、農家の竹下さん(通称ナス部長)智頭町観光協会の皆様、温かなおもてなしをありがとうございました。

最後に、私たちの初めての試みに一緒に参加して楽しもうと思ってくださった参加者の皆様、ご参加頂き誠にありがとうございました。

プランニングの最中には自分の夢の実現とは全く考えず、目の前のことを考えるのが精一杯でしたが、キャンプの最中に参加者の皆様のリラックスした表情を見て「これはまさに私の夢見ていた場」と実感しました。沢山の皆様の力をお借りして5年前に夢見ていた場に加わることができました。

皆様とのご縁とご協力に心より御礼申し上げます。


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