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【才能はみだしっ子を育てる ①】おはなし、マンガ、創作することが大好きな小学校3年生の女の子

インタビューの第1回は、小学校3年生の女の子のお母様、Tさんにお話を伺いました。

お子さんが生まれてから集団生活が始まるまでは、どのような子育てでしたか?

睡眠が短い子で、夜泣きも多かったです。ちょっとした物音で目覚めるので、朝までぐっすり眠っていた記憶はありません。今も、寝かしつけようとしなければなかなか寝ないし、考え事が頭の中をぐるぐる駆け巡って止まらないようで、寝るまでのルーティンは2時間ほどかかります。寝かしつけるときに、脚や肩、背中のマッサージをするといいとアドバイスを受けて実践しています。

歩けるようになると、街の地図や看板、標識に興味をとても示して必ず立ち止まりました。文字に関心が高くて、おもちゃからひらがなとカタカナを自分で覚えてしまったので、親が教える必要はありませんでした。おしゃべりを始めたのは特別に早かったわけではありませんが、読むことを習得するのは早くて、初めて欲しがった本は知育用のドリルでした。本を読むことがとにかく大好きで、図書館に通い、3歳のころにはお友だちに読み聞かせをしてあげていて、夜寝る前の時間には私にも本を読んでくれていました(笑)。

話し始めるようになってからは、意思疎通がしっかりできるようになり、娘は好き嫌いをはっきり意思表示するので、その点は育てやすかったと思います。

初めての子どもということもあり、また私は母を早くに亡くし、親に聞くこともできなかったので、「子育てってこんなものかな」と最初は思っていました。そのうち育児書を読んでみたけれどピンとくるものがなく、ママ友の話を聞いてみると、どうもうちの子どもは、ほかの子とは違うようだなと思うようになってきました。

集団生活が始まってからの子育ての様子について、教えてください。

年中の時に受験をして私立の附属幼稚園に入りました。自由時間は本を読むことが多くてある程度本を読んでからお友だちと外で遊んでいたようです。大勢とよりも仲良しのお友だちとマイペースで楽しく過ごしていました。

公文に通っていましたが、漢字も本を読むうちに覚えてしまい、公文の漢字検定で満点をとり、2年連続で賞をいただいたこともありました。努力して勉強するというよりも、すっと、しみこむように漢字を覚えてしまうようでした。

小学校に入学してしばらくは楽しそうでしたが、徐々に疲れて帰ってくるようになりました。授業には積極的に取り組んでいたし、学校は楽しいといっていましたが、新しい環境に戸惑っていたようです。幼稚園と違うルールを習得すること、新しい友達、席替え、教室の匂い、音、クラスに漂う緊張感からか、2学期に入って、教室にいるのがつらくなり「学校が怖い」と言うようになりました。原因は特定できませんが、通学路の途中で足が止まるようになっていきました。

しばらくは、私や先生が付きそう形で学校内の個室に登校をしたりもしましたが、改善は見られませんでした。そして、本人の意思を確認して不登校を選択しました。学校には継続して在籍しており、今は週一回のカウンセリングのために登校をしています。学校のカウンセラーの先生のもとでは、登校時にカードゲーム、プログラミング、クイズなど娘の興味のあることをするようにしていただいています。

不登校を選択して1年間はとても心が不安定になり、小児心療内科に通いました。そこでは、愛着障害、ADHD、ASD、HSCと、次々に診断名が変わっていきましたが、最終的にはギフテッドではないかとのアドバイスを受けました。その心療内科から日本ギフティッド協会の存在を教えてもらい、会に連絡をして面談を受け、現在は協会からホームスクーリングのご指導をいただいています。

お子さんの才能はみだしっ子としての性質について教えてください。

なんでも興味を持ち、好きなことはとことんやります。本を読むのも好きですが、お話を作ることも大好きで、何かに刺激を受けるとそのことを表現します。

表現方法は、原稿用紙にお話を書いたり、ノートにマンガを描いたり、キャラクターを作り出したりと様々です。一冊50枚の400字詰め原稿用紙があっという間になくなってしまいます。何か新しいことを学ぶと、誰かに教えてあげたいと思うのか、説明をまとめた学習本を作ったりしています。創作を始めると、とても集中するので、邪魔はされたくないようです。そういうときは、ごはんやお風呂、出発時間もなにもかも後回しとなります。

おもちゃはまず取扱説明書を読んでから遊び始めます。マンガも「マンガの描き方」という本を読んでから描き始めました。

算数は無学年のオンラインクラスで勉強しているのですが、小6レベルを終わらせていて、算数オリンピックでは満点でした。国語は公文で中3レベルを勉強しています。才能はみだしっ子は特定の分野に秀でると言われますが、興味の分野は特に決まっていないようで、マンガの日本史、「働く細胞」、ショートショートの文章作りなど対象は変化しています。

Scratchも好きです。NHKの番組で、独学でマスターし、ゲームを作る楽しさを共有できるお友だちを求めて投稿したりもしています。マインクラフト、ルービックキューブ、パズル、そしてRPGも好きです。

娘は、自分の個性をとても大切にしています。同学年のお友だちとは遊ぼうとしても遊び方やルールを難しくしてしまったりして、うまく遊べないことがあります。また、好きなことをしたいので寝るのがもったいないと言い、幼少期から昼寝はしません。就寝時には、本を読みたがるのですが、目からの情報で頭が活発に動いてしまい眠りにつけなくなることがあるので、読むのではなくオーディオブックでお話を聴くことにしています。今のお気に入りは「夢をかなえるゾウ 3」です。1時間くらいオーディオブックを聴いて、その後おしゃべりをして2時間くらいかけて眠りにつきます。基本的に、睡眠は短いですが、たまにこんこんと眠り続けることがあります

常に何かを考えているので頭が過熱してしまうようで、ときには偏頭痛を起こして嘔吐することもあり、冷却したり主治医に処方していただいた薬で治めています。また、「なにもせずに、ぼーっとする」という感覚は経験がないのでわからないと言っています。

インターネットは自分で検索できるので、安全な使い方の本をあらかじめ読ませて、課金などの危険性を理解した上で利用をしています。ただ、デジタル機器は使いすぎると偏頭痛を起こしやすいので、20分で休憩をとるなどのルールを決めています。自分でもやり過ぎるとつらくなるのが分かっているので、タイマーをかけることで対処しています。

聴覚、嗅覚、味覚、視覚が敏感で人混みが苦手です。電車の送風機の音、地下などもつらいようです。しかし、それも気候や体調により変動します。

お友だちとの関係では、みんなが自分と同じようにできると考えてしまいがちで「なぜ知らないの」「なぜ分からないの」と思って混乱するみたいです。最近ようやく、「できる・できない」について、お互いの違いを理解できるようになりつつあり、お友達との関係性の中で理解が深まっていくと、娘にとってもより居心地のよい環境を見つけられるのではと期待しています。

古泉さん ゲーム

写真は、お嬢さんが大好きなゲームやパズル。


才能はみだしっ子の子育てで心がけていることは、どんなことですか?

予定を組む時は、その日の体調や天気などによって決めて、無理な予定を立てないようにしています。なるべく日光を浴びて自律神経を整え、体力を維持するように気をつけています。外出するときは、娘にその日の予定や出かける理由などをあらかじめ伝えて安心できるように配慮をしています。周囲の理解者には娘の特性と対応の仕方を知ってもらうようにしています。ギフテッドについての正しい理解が浸透していないので、ギフテッドという言葉は使わないようにしています。

学校教育に期待することは、どんなことがありますか?

まず、ギフテッドという言葉が知られていないという状況があると思います。またギフテッドの子どもの発達の凸凹を認識している先生方も多くないと思います。子どもが課題を抱えた時には、家庭に判断を委ねられてしまいがちだと感じています。ギフテッドの子どもとして向き合えている今の状況に至るまでに、とても時間が掛かりました。学校のカウンセラー、小児心療内科の先生、日本ギフティッド協会との出会いがなければ、いまでも悩んでいたかもしれません。

日本では、「普通」でいられないと集団から切り離されてしまいがちで、本当は個性を出したいのに我慢して普通の子どもを演じているお子さんもいるのではないかと心配しています。特に女子はじょうずに凸凹のある部分を隠しがちだとも聞きました。

個性・特性・凸凹をみんなが持っているという認識を、学校にも保護者にも生徒にも広まってお互いが認め合える雰囲気ができ上がると良いなと思います。学力だけでなく、社会に出て行く準備期間として多様な人、様々な考え方があると受け入れることで、実は自分も受け入れられるのだということを学べる場となってほしいと願っています。

「才能はみだしっ子を育てる」ということは、お母様自身にとってどのような体験ですか?

マニュアル通りにいかないので試行錯誤だったのかもしれませんが、私は育児を面白いと感じています。娘は小さいときから個性的で、面白いことを常に求める姿勢に私は惹かれるし、娘とともに世界が広がっていくのを感じます。子育てはとても楽しいです。私がおもに娘の対応をしているので、一人での外出ができなかったり、友だちとランチを食べに行ったりということはできませんが、娘が寝ている朝に散歩で体力作りをかねてひとりの時間を作ったり、家族にガス抜きをしてもらったり、休みの日は主人に娘の相手をしてもらったり、ママ友とはオンラインでおしゃべりをしたりして過ごしています。 

今はアドバイスを受け、家族や理解ある友人、先生のサポートを受けられるようになったことで孤立することなく、育児を前向きにとらえることができているのだと思います。すべての育児において同じことがいえるとも思いますが、知識とサポートを受けられる環境は育児において大切だと思います。

お子さんにはどのような人生を生きて欲しいですか?

まずは「友だちがほしい」という願いを叶えてあげたいです。娘は著者の酒井さんにもそのことを伝えて欲しいと言っていました。年齢を問わず、興味のあることを語り合える友だちを見つけてあげたいです。

カウンセラーの先生や協会の先生からも、「オンラインよりもリアルな交流の方が望ましい」とアドバイスをいただいているのですが、コロナの影響でその機会もなく困っています。オンラインでコミュニティとして付き合う場合は、それぞれの凸凹が違うので、子どもたちの特性が分かっている専門の方にサポートをしていただけるとありがたいと思います。

そして、この大切な子ども時代にさまざまな経験を重ねることによって、トライ&エラーを繰り返し、できること・できないことを把握したうえで、できないことには違う角度で挑戦する力を身につけてほしいと思います。将来的には、好きな事を仕事にして娘の個性を理解してくれる環境のもと、パートナーと家族に囲まれて生命を大切に幸せに生きていってほしいと願っています。

【インタビュー後記~酒井の思い~】

Tさんは、とても前向きに才能はみだしっ子であるお子さんと向き合っていらっしゃると感じました。ある意味、お母様が意識的に前向きな姿勢と言葉を持つことでお子さんにそのポジティブな波動が伝わり、一緒に色々な課題を乗り越えていこうという連帯感が育っているようにも感じました。

また、学校のカウンセラーの先生に「才能はみだしっ子の育て方」という本を読みましたとお伝え下さり、カウンセラーの先生は本を購入して読んで下さった上に、担任の先生にも本をおすすめくださったそうです。先生方も柔軟に保護者の声に耳を傾け、子どもひとり一人に合った対応をしようとして下さっています。

大きく教育環境を変えることはすぐには実現できないかもしれませんが、身近な存在へ少しずつでも働きかけることで変化は起き始めると私は信じています。

Tさんはご自身の経験を共有することで才能はみだしっ子についての理解が深まればとご協力をして下さいました。オンラインでの取材中、お嬢さんも時々参加され、創作した作品をたくさん見せてくださいました。お二人の静かで温かな応援のお気持ちに胸が熱くなりました。ご縁を頂き心から御礼申し上げます。(酒井)

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このページは、書籍「才能はみだしっ子の育て方」の出版後、著者・酒井由紀子が直接お話を伺った方々のインタビュー集です。様々な角度から才能はみだしっ子たちの姿を探っていきます。  (シェアは歓迎ですが、記事を許可なく転載もしくはコピーして配布することを禁じます。)