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東京都現代美術館「あ、共感とかじゃなくて。」展ほか

2023.07.24-08.12 訪問

夏は繁忙期、今回は仕事の合間を縫って行ってきた展示と、ミュージアムに関する映画を紹介します



東京都現代美術館「あ、共感とかじゃなくて。」展

珍しく入り口の掲示を撮ってあった

その名前の付け方から気になっていた展示。5人のアーティストによる展示で、いずれの作品でも、私から少し隔たったところにいるひとが重要な役割を果たしています。その作品が何を意味するのか、作品に登場する人々が何を伝えようとしているのかを、見ただけですぐに「そういうことね」と感じることはありません。この展示は、共感による、ある意味安直な鑑賞しかできないと大変つまらないだろうけど、見ている人に、作品について考えさせようとする仕掛けはたくさんあります。ひとりで行くのも楽しいし、一番身近な他者である友人や家族と一緒に話し合いながら見て回るのも、発見が多くて興味深いと思います

有川滋男『Blue Forest』(一部)
架空の企業が自分の事業を紹介するブース、という設定の作品です。そこは state-of-the-art じゃないんだって思ったやつ

夜間開館を狙って夕方の時間に行ったのですが、たまたま学芸員さんによるトークがあり、のんびりと展示に腰掛けて聞きました。やはりお話を聞くと、そういうことなのか、と気づくことがそれなりにありました。こういうのって、本当は計画を立てて行くのが効率的で「正しい」のでしょうけど、そんなふうに、時間という型にはめて自分を行動させるのは、仕事のときと、遠出したときの交通手段と宿だけでいいよね

個人的なお気に入りは、渡辺篤さんの『ドア』と武田力さんの『教科書カフェ』。『ドア』は、自分だけの世界から出るために壊したけど必要に応じて戻れるように直しているようにも見えるし、無理やり出そうとする力に抗って必死に直しているようにも見えました(渡辺さんは孤独な人々に寄り添って活動するアーティストです)。『教科書カフェ』では、様々な年代の人々が小学生の時に使った教科書が並んでおり、自分の使っていたものを眺めたり、他の年代の人が使った教科書と比べたりして楽しむことができます(私も自分が小学一年生のときに使っていた教科書を見てみたのですが、びっくりするほど中身を何も覚えていませんでした…)。また、このカフェには電話があり、それをとると、小学生からの、今の社会についての質問に答えるという企画に参加することができます。その答えを考えて話すのが難しかったけれど、自分の中でゆっくり整理されてきていた考えを話せたのは良かったな。何の質問にどうやって答えたのかは秘密で笑

渡辺篤『ドア(プロジェクト「修復のモニュメント」より)』

久しぶりに美術館でゆっくり鑑賞できた、という感じがしました。作品そのものというよりも、作品をきっかけにしてその外にある今について考えることができるのが現代アートの面白いところですよね。会場にも、ゆっくり座って考えられるようなスペースがあるのがとても良かったです

ちなみに、コレクション展(常設展)も見てきました。時間の都合上かなり駆け足になってしまったけど、いつ見ても飽きませんね。あと、展示替えがあるたびに変更されている冊子状のパンフレットが凝っていてすごく好きです


国立新美術館「テート美術館展 光: ターナー、印象派から現代へ」

思えば光って、手に取ることも見ることもできない(光源は手に取ったり見たりできる)けど、確かにそこにあると感じることのできる不思議なものですよね。この展示では、そんな光をテーマに選ばれた、古今東西のアーティストの作品を見ることができます

この「古今東西のアーティストの作品」というのがポイントで、18世紀の絵画から現代アートまでこの展示で見ることができます。絵画における光の描かれ方に感嘆したり、光による色の変化を眺めたり、あまり他では行われていない楽しみ方ができます(あえて近い企画を挙げるなら、アーティゾン美術館でときおり行われる「ジャムセッション」シリーズでしょうか)。私としては百数十点の絵画を一気に見る企画よりも、こんな感じの企画の方が飽きなくて好きだったりします

ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー『ペールオレンジと緑の黄昏: バルパライソ』

こちらも夜間開館を狙っていきましたが、人はそれなりにいました。でも、多分昼間よりは混んでない感じかな、あとから会場を戻って気に入った作品をゆっくり見ることができましたし

ちなみに、特設ショップでは、テート美術館で実際に売られているお土産も買うことができます。気分はイギリス旅行🇬🇧


映画「わたしたちの国立西洋美術館」

美術手帖の記事で知りました。小さな映画館でしかやっていないような映画を、実際小さな映画館で見るという体験は、やはり大都会でないと簡単にできるものではないですよね

この映画館で見てきました

単に閉館している時の作品の所在を映しているだけかと思いきや、バックヤードで学芸員さんたちが具体的にどんなことをやっているのか、美術館という場について自分たちがどのように考えているのか、など、そこに人がいて、それぞれの信念のもとで働いていることも伝わる内容になっていたのが面白かったです。美術館の置かれている現状についての説明は、大学で習ったな~という内容でした。美術館に行くのが好き!という人は、見て損のない映画だったと思います


容赦はない、とは言っても、他の人たちに比べたら全然仕事は多くないし、責任を負わなくていい部分がたくさんあります。早く戦力なりたいと思う今日この頃です

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