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サントリー美術館「リニューアル・オープン記念展 Ⅱ 日本美術の裏の裏」展

2020.10.07 訪問

「美術館に行ってもどう楽しめばいいかわからない」

という方が私の周りに一定数います。布教したい私としては「見たままを感じればいいんですよ!」とは思うのですが、主観的感覚的すぎてあまりにも説得力に欠ける。そもそも、作品のどこをどのように見れば「感じ」ることができるのかがわからないのだと思いますが、かくいう私も、どこをどのように、を言葉で説明できないことがとても多いです。だからこそ、ここをこう見て欲しい!面白いから見て!と素直に言葉で解説されている展覧会が、私はとても好きです。

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私がこの前行ってきたのは、サントリー美術館の「日本美術の裏の裏」展。リニューアルオープン記念展の第2弾になります。第1弾は行ってないし、そもそも前回初めて訪れたのはいつだったかな…という感じです、普通に展示を見に行ったらたまたま、という感じ。

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襖を模したパネル。

日本美術の何が面白いのか、魅力はどこにあるのか、をテーマにした展覧会になります。襖を模したパネルや床一面の京都の地図、おしゃれな影絵など、展示空間の作り方が非常に凝っていて、それだけでもわくわくしましたが、やはりひとつひとつの作品にしっかりと言葉で見所が示されていたところ、そしてその見所を来館者の目で確かめられるような展示物の配置になっているところがとても素敵でした。例えば、最初に挙げた床一面の京都の地図は、屏風に描かれた京都の様子が、実際はどの辺を描いたものであるのかを示しています。この屏風が置かれた展示空間のテーマは「空間をつくる」であり、この屏風についていえば、屏風を置くことで、想像力を働かせると、まるで部屋中に京都の風景が広がっているように感じる、というように、想像力による空間の広がりを日本美術の魅力として紹介しています。展示物のそばのパネルでちんまりと小さく建物の解説をするだけではなく、床をダイナミックに使って「空間の広がり」を表現しているところに、学芸員の工夫が感じられました(何様)

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床には京都の地図。屏風と見比べながら建物の名前を知ることができます。

他にも、ミニチュアを実際のものの大きさと比べられるように展示物を配置してミニチュアの精巧さを示したり、絵巻物のどこに注目ポイントがあるのかを随所随所で示したり、最初にその表情を一通り説明してから壺や花瓶を360度どこからでも見られるように展示したりと、様々なところで学芸員の愛を感じられる仕掛けがなされていました(だから何様)。個人的なお気に入りは、正直下手くそなんだがそれで切り捨てられない魅力がある本と、ネズミが化けてなんともいえない愛嬌を持った馬になった様子が描かれている絵巻物です。そういうことを発見して楽しむのはもちろんなのですが、クスッと笑える、こんな日本美術があったんだ、と私自身この展覧会で見るまで知りませんでした。そして、ここが面白いんだよ!と示されなければ、これらが展示されていても、なんとなく見て通り過ぎていたと思います。学芸員の腕と愛のなせる技です…こういう展示が作れるといいよなあ…。ちなみに図録も遊び心に溢れていて大変面白かったです。

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上手くはないんだけど見入ってしまう本、「かるかや」。

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イケメンより馬の方に目がいってしまった…

日本美術を見るときの様々な視点を提供してくれる展覧会でした。私も正直、日本美術、特に壺とか茶碗とかは、見ても何が良いのかさっぱりわかっていなかったので、こういう見方もあるのか、こういう魅力があるのか、こういう風に見ても良いのか、と言葉とモノの両方で示されて目からウロコが落ちました。日本美術の何がいいのかわからんしそもそも美術館の何が楽しいのかわからんけどわかりたい気持ちはある、という人は是非一度訪れてみてください。

サントリー美術館「リニューアル・オープン記念展 Ⅱ 日本美術の裏の裏」展
会期: 2020年9月30日(水)~11月29日(日)
開館時間: 10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
 ※11月2日(月)、22日(日)は20時まで開館
 ※入場は閉館の30分前まで
休館日: 火曜日(ただし11月3日、24日は18時まで開館)
観覧料: 当日:一般1500円、大学・高校生1000円
 ※中学生以下無料


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