エンガワ

ニンジャヘッズ兼胡乱大好きマン 毎日スシが食べたい

エンガワ

ニンジャヘッズ兼胡乱大好きマン 毎日スシが食べたい

マガジン

  • イラスト感想戦

  • 冒涜探偵の血煙り自白録

    非合法暗黒探偵が二十二世紀の怪事件をほぼほぼ暴力で解決する痛快アクション探偵パルプ小説。

  • 逆噴射2019応募作+α

    逆噴射小説大賞2019への応募作および作品への振り返りや受賞作品予想の記事を載っけるマガジンでげす。

最近の記事

北風と太陽2021

 繁華街の夜に、嵐が吹き荒れている。 「部長、早く屋内へ」 「駄目だ、風が強くてッ」  通行人の視線が暴風に喘ぐ男へと集まる。人だかりの中、彼一人だけが極めて局所的な乱気流に揉まれている。異様な光景だった。  彼は必死の形相で歯を食いしばり踏ん張っていたが、やがて限界が来たのかその体は上下左右へ揺さぶられ、とうとう無様なマトリックスめいた姿勢で盛大に仰け反った。背泳ぎする両腕から背広の袖がすぽりと抜け、夜空へと飛び立つ。 「私のスーツが!」  ——程無くして嵐は去り

    • ウロボロス 極道少女吸血鬼譚

      1  吸血鬼に最も有効な武器とは何か。銀だ。吸血鬼は聖なる金属である銀に弱い。仮に銀の延べ棒を額に押し当てたとするなら、吸血鬼の頭は瞬く間に煙を上げながら溶解し、延べ棒はその自重のみでドロドロになった頭蓋を掘り進み、易々と脳髄にまで達するだろう。  故に吸血鬼同士の闘争においては、互いに銀で加工された武器を用いての戦いがメインとなる。種の存在を脅かす忌々しい金属は、とりわけ領土の支配権を巡って日夜しのぎを削り合う反社会的勢力の吸血鬼たちにとり、己が命を預ける相棒となる。そ

      • イラスト感想戦その1 サロウ=サン

        どうも皆さんご機嫌よう。私、エンガワと申す者です。今、イラストと小説を修行中の身であり、今回は自分が描いたイラストについての振り返りを記事にしてみようと思い立ち、こうして筆を執った次第です。 第一回目の振り返りということで、今回は私がイラストを描くに至った経緯から軽く語らせて頂きます。興味の無い方は目次から本編へとすっ飛ばして貰って構いません。それではやっていきましょう。 1.絵を描くに至るまで一年前のこの頃、私は長編連載のオリジナル小説を書いていました。きっかけは下記の

        • スパルタン・クルーズ AI拳を破壊せよ

           人類抹殺AI”ブルース”の誕生から一年、英国全土を恐怖させた怪物は今、日本にいた。  医王山の絶壁高く。枝葉の上にこんもりと雪を載せた樹々に隠れて古びた道場が佇んでいる。神秘的なその空間に、荒々しい打撃音が絶え間なく響いていた。 「鉄屑めが! 許さん!」  ガゴッ! ガゴッ! ゴガン! 人骨とレアメタル骨格が激しくぶつかり合い闘気の火花を散らす。打ち合いはすでに五分以上続き、秒刻みで加速する拳と拳は今や残像を生じるほどに白熱していた。  道着姿の空手マスター、鉄山老師が

        北風と太陽2021

        マガジン

        • イラスト感想戦
          1本
        • 冒涜探偵の血煙り自白録
          2本
        • 逆噴射2019応募作+α
          6本

        記事

          マッハ狂死郎

           クラッシュ・ワン。VRレーシングゲーム。生き残った奴が、勝者。 「終わりだ狂死郎、この直線で止めを刺す!」  快速中学校最強のeレーサー、翔が前方の黒い隼型マシンに叫んだ。路上には二人きり。時速千キロで爆走する彼らの視界を、道路灯たちがネオンの尾を引いて駆け抜けていく。コースは砂漠・夕方。地平に広がる流砂の海と、その僅か上空を浮遊する近未来的サーキット。 「揺り起こせ、僕のダイカストコロニー!」  翔の呼びかけに応え、蜂の巣めいた姿の愛機が吼える。十秒ごとに体内にて生成

          マッハ狂死郎

          【冒涜探偵の血煙り自白録 序章】 後編

           ◇総合目次 ◇前編 「アッハッハッハァーッ!」  倉庫の外では既に戦いが始まっていた。導火線付きの丸々とした爆弾を両手に持ったタンクトップ姿の少女、ボムミが悪漢たちの人だかりに突っ込む。カルテルの男たちは大慌てで爆弾から逃げるが、ボムミは無慈悲に腕を振り上げ、両手に持つ凶悪殺人ボールを放り投げた。 「遠慮すんなってのォ!」  爆弾が放物線を描き悪漢たちの背中に降り注ぐ。導火線は間もなく焼き尽くされ、すわ爆発かと誰もが息を呑んだ、その時。 「うおおおおお!」  群

          【冒涜探偵の血煙り自白録 序章】 後編

          【冒涜探偵の血煙り自白録 序章】 前編

           ◇総合目次 ◇後編  霧が立ち込めている。石畳の上に転がる薄汚い死体と血溜まりをすっぽりと覆い隠してしまう程、深い地霧。  この街では珍しくも無い。ここで何かに躓いて転んだなら、疑うべきはまず死体だ。ブラッドの父もそうして発見された。彼が十四の時だ。  夕日はすっかりビルの向こうに隠れ、深い藍色の空に橙色の街灯が靄の中でぼんやりと光っている。ブラッドは身を切る寒さを堪えて商店街を黙々と進みながら、その光景に妙なノスタルジーを覚えていた。今日はあの日から丁度一年だった。弟

          【冒涜探偵の血煙り自白録 序章】 前編

          縁の側の逆噴射2019ライナーノーツ ROAD TO MEXICO

          逆噴射小説大賞2019終了!!!!  参加者の皆さんはお疲れさまでした。   そうでない方は是非来年に参加を!  楽しいぞ!! さて今回の記事はライナーノーツ。なんか参加者の皆さんが書いてらっしゃるのをみて「あ、何かかっこいい」と思ったので、こうして筆を執っている次第です。いいですよねライナーノーツ。音楽系能力者の必殺技みたいで。 ちなみに私は今年の2月頃に忍殺プラスとDHTマガジンを購読し始め、逆噴射先生の講座を読んで「俺も何か書いてみたいなあ」と思いつつ中々行動に移せ

          縁の側の逆噴射2019ライナーノーツ ROAD TO MEXICO

          悪霊殺しのマリアベル

           余命一ヶ月と診断されてから二十四日。残りの人生あと七日。  そうやって書いてみても実感なんて全然湧かないから、私はその時のことをシミュレーションしておくことにした。  まず、一緒にいる家族の手を握ってあげる。そして感謝を伝えてあげるの。今までありがとう。悔いなんてないよって。  でもママは少しキライだから、できればパパに居てほしい。そうしたら私は妥協せずに済んで、パパも自信がつくだろうから一石二鳥だ。  それから遺言を残すの。大好きなマリアベルちゃんに。あの子とはいつも一

          悪霊殺しのマリアベル

          ワイキキ危機一髪! 俺が王家の盾になる

           その夜、いつものように残業を終えた俺は泥の纏わりつくような怠さを感じながら無心で足を動かしていた。魂の相棒、ボッシュ・エメラルドリバーコーヒーが冷蔵庫で俺の帰りを待っている。それだけが心の支えだった。 「ギャアア!」  女の絶叫。右の団地の方からだ。俺は直ぐに助けに向かう。大通りから外れた閑静な住宅地を街灯の灯りを頼りに走ると、駐輪場の前にそいつらの姿があった。地面にへたり込むOL。その前に立ちふさがる男は三本角の帽子にとんがりブーツ、全身緑コーデで6本のナイフを陽気にジャ

          ワイキキ危機一髪! 俺が王家の盾になる

          ラブサバイバー

          『スケベがマイアミ方面に広がっています。住民の方々はご注意ください』  テレビの女が言う。ビリー・マツザカは平日真昼間に電気もつけずそれを見ていた。 「パパ大変、奴らが隣町まで来てる! 早く逃げないと!」  カエデは玄関から猛然とリビングに走り込んで来る。息を切らし、薄暗い部屋で父の背中を見つめ、そのまま五秒。沈黙。 「……パパ?」 「なあ、カエデ。その”奴ら”ってのは」  父がゆっくり、のっそりと背後に振り返り、カエデにその表情を、見せつけた。 「……こ~んなスケベ面だった

          ラブサバイバー

          ロス 共犯者たち

          「ここはあの人のお気に入りだったの」  俺とマダム・サンドラはマイアミビーチのカフェテラスで向かい合っていた。ビルの隙間から覗く夕日が海を輝かせている。絶景の場所だ。 「誕生日にはここに来て、私がプレゼントを渡すとあの人、子供のように喜んだわ」  マダムは黒い礼服に身を包み、優雅な手つきで紅茶を飲む。今日は彼女の夫の命日だ。 「お調子者で自信家でね。でも気が小さいの。隠し事が手に負えなくなって焦ると、家族に当たり散らすこともあった」  俺たちの他にテラスは無人。辺りを行きかう

          ロス 共犯者たち

          ∞の王子さま! 八王子学園戦乱編

           ドゥン! その音は八王子学園校舎の壁から放たれ、空気を伝わり、半径百メートル以内の生徒達の心をときめかせた。 「きゅんっ!? い、今のは?」 「壁ドンよ。それもこの音……暁の第五王子、旭川遼来様の壁ドゥンだわ!」  生徒達は皆浮足立ち、曇天の中、黄色いイチョウ並木に背を向け佇む男を見つめる。  その男、旭川遼来はイケメンだった。金のジェットモヒカンに逆十字の首飾り。ブレザーは逞しい胸板を見せつけるように開き、ブーツとスラックスの間から垣間見える素足は肉感的だ。 「おい見ろ。

          ∞の王子さま! 八王子学園戦乱編

          テツジン・リーグ

           西暦2934年。快晴の下、超満員の新ナゴヤ国立競技場はテツジン達への期待に沸き、競技の開始を今か今かと待ち侘びている。  場内の選手は対称的に静かだ。しかしその様子は一様ではない。深呼吸する者。ストレッチを行う者。銃を抱え、震えて縮こまる者。得物の感触を確かめ、笑う者。 「アイツら凄ぇ迫力だなあ! な!」  屈強な白人が隣の短パン学ランの少年に話しかける。彼らの先には出入り口手前に並ぶ五つのケージ。中身は2m超の強靭な肉体を持つ凶悪殺戮養鶏、デッドブロイラーだ。その強さに

          テツジン・リーグ

          凶鳥、朱に交わりて

          「今日はこれで失礼します。ご協力どうも」  老刑事は不機嫌そうに告げ、部下を連れて引き上げていく。警官たちはドカドカと足音を立てて去り、事務所に残ったのは老刑事のタバコの煙と、脳裏にまで焼き付いた鋭い眼光。  捜査の手から逃れ遂せたのは幸運でしかなかった。予期せぬ来訪。そして令状。できたのは、祈ることだけ。  シドは窓を全開にした。風が煙の染みた熱気を冷ましていく。抑えてきた胸の高鳴りが、深い溜息となって吐き出された。 「悪運尽きねえな俺も」  シドは右手をソファの

          凶鳥、朱に交わりて