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頭部に歯形

“食べたいくらいキミが愛しいくて好きだ”と
ほろ酔いの彼が、私の頭部をガブリと噛んだ

なにごとか。

酔っ払いの奇行のような気もするが
それだけで片付けてしまうのは惜しい

“あ〜かわいいっ”
“あ〜だいじだっ”

とかなんとか言ってる声を聞きつつ
5回ほど頭をガブリガブリと噛まれてみた

前頭葉あたりだろうか
甘噛みにしては歯型がつきそうだナァ
頭皮マッサージ用のクシより刺激がつよいゾ


なんて彼に頭を差し出したまま考えていた

“こんなの親きょうだいにも芽生えたことのない感情なんだよ〜”と珍しく上機嫌に語る彼がとても愛おしくその珍妙な行動もまた面白かった


そういえば幼い頃
私ときょうだいは母からも噛まれたことがある
可愛すぎて食べちゃいたい〜と言っていたが、甘噛みにしては痛かったし、きょうだいは驚いて泣いていた。


愛のさじ加減とはなんとむずかしいことか


あの時はぷくぷくしたほっぺや二の腕で
思い返せばおいしそうではある

頭はちょっとわからない
わからなすぎて嬉しい
共感できなくとも面白い

まさか大人になった今ふたたび体験できるとは思わなかった


付き合いたての頃

頭のてっぺんから爪先まで
全部ぜんぶ愛されたいと思っていたし
毎日ずっと願っていた

いつのまにか
わたしの夢は叶っていたようだ

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