愛とはいとをかしなもので
結婚してから増えた楽しみのひとつに
“夫の白髪をカットする”という行為がある
5本10本からはじまり
結婚記念日を迎えるたびに
夫の髪にも白髪が増えていった
眉ハサミで丁寧に一本ずつ切る作業は
繊細さが問われる
職人になったような気分で丁寧に伐採していく
この無駄に見える時間がなんとも愛おしい
貴重な命の時間を削っている
今この瞬間を、この人に捧げてもよいかなと
素直に思える
ほんとうに不思議なもので大切な人の髪に触れる瞬間は、瞑想の入り口の扉を開く瞬間にも
少し似ているのではないかと感じたりもする
髪をすくい
黒から銀へとグラデーションがかるものを見つけ、細胞の衰えていく過程を眺めては、ふと思いを巡らせることがある
この人は家を出た瞬間から、
自分の物語の中で何を感じ、何を乗り越えて
ここに戻ってくるのだろうか
疲れたの一言に
頑張ったの一言に
楽しかったの一言に
ただいまの一言に
何が込められているのか
そういえば最近はゆっくり聞いてなかったかも
しれない
増え続ける白髪と、予測不能な日々に
どこまであらがうのか
どこまで楽しみを見つけ出せるのか
わからないけれど
この愛しい時間を愛しいと思える日々が
永遠に続いてほしいと願う
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