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サイコロ塾レッスンレポート:サラダマスター編

こんにちは!

9月のサイコロ塾2回目は「食」をテーマに「サラダマスター」を取り上げてプレイしました!

このゲームは、野菜のさまざまな栄養素を使って、お題カードにあったカードを出していくゲームです。遊びながらいつの間にか野菜に詳しくなる?こともあるかもしれないゲームになっています。

それでは、今回もレポートスタートです!


1、サラダマスターのルール

前回のレシピ同様、サラダマスターも込み入ったルールがあるわけではありません。説明書の文章量も多いわけではありませんが、それでも子どもたちにとっては読み取っていくのは大変です。ルール読みをしている最中から「意味がわからん」という声をあげる子もいました。

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複文やいくつかの文が前置詞でつながっている文などは、大人になっても理解しにくいですよね。どこで文章を切って理解するのか、などを全体でルールを確認する際に一緒に、実際にゲームプレイを成り立たせながら読んでいきます。


さて、サラダマスターのルールですが、毎回3枚のお題が書かれたカードから1枚を選び、各プレイヤーがそのお題に最もよく合うと思われる野菜カードを1枚選んで出す、というものです。お題カードには例えば、「食物繊維が1番多い」「カロリーが2番目に多い」などが書かれています。

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「なんだ簡単じゃないか?」と思われるかもしれません。実際、すること自体はカードを選んで1枚出す、というだけなのでとても簡単なのですが、お題カードに合うものを選ぶとなると話は別です。実は自分の持っている野菜カードは裏面にその野菜が描かれてはいますが、勝負のために必要となる栄養素は自分から見ることができる表面には書かれていないのです!!

つまり、自分の持っている野菜カードの栄養素が見えない中でお題カードに合うものを予想してカードを出す必要があります。他の人のカードは見ることができるので、なんとなく他の人が持っているカードや、先に出されたカードを見た上で、予想をつけてカードを出す、というのがこのゲームのプレイ方法になります。

自分たちでルールを読み、ゲームプレイを成立させていく、という取り組みですが、取り組み自体はなんとなく子どもたちに浸透してきてはいますが、できているかどうかというとまだまだという感じです。目の前に起こっている状況と、ルール説明書に書いてある状況を対応させて考えることが難しい子どもも多いです。書いてあることを実際の動きに変換していく過程の支援を丁寧にしていくことが重要だなと思いました。


2、サラダマスターをプレイ!

サラダマスターはルールを読んで、書いてあることを再現していくと自然に最初の1ゲームができるようなルールの書き方になっていたので、そのまま子どもたちにプレイをしてもらいました。

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何回かお題カードに合わせてカードを出していくことを繰り返していくと、子どもたちから「食物繊維ってなに?」「それがわからんとカード出せんやん」と声が上がりました。

まったくその通り!です。今回はプレイの途中でいったん手を止めてもらい、「カロリー」「炭水化物」「タンパク質」「食物繊維」といったサラダマスターに出てくる野菜の栄養素について簡単な解説をしました。

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子どもたちには特に「食物繊維」が馴染みがないもののようでしたが、「うんち」と関連させて話すと、興味を持って聞いてくれたようでした。

今回は前回のレシピとは異なり、大きなプレイミスのようなものもなく順調にゲームが進んでいきました。

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3、サラダマスターにおける学び

サラダマスターは「学びの要素」がわかりやすく入っています。野菜カードは食品成分表に則って、100gの量が正確に描かれていますし、表面に書かれている各栄養素のグラム数も正確です。

遊んでいれば、「トウモロコシってこんなに炭水化物が高いんだ」とか、「白米はカロリーが高いなあ」とか自然に知ることができます。確かに繰り返すことでそういった知識が身につきそうです。

ゲームを学びに使うとき、学習内容がどのように設定されるかによって「ゲームで体験できるプロセスからの学び」「ゲームに内包されている知識の学び」の2種類があります。前回のnoteでも指摘した通りですが、レシピと同様サラダマスターもどちらかといえば後者の学びを設定するのがわかりやすいと思います。

プロセスからの学びは、ボードゲームでできる体験そのものからの学びですので、ボードゲームで行う意義がとてもありそうに思います。一方、後者のゲームに内包されている知識の学び、サラダマスターで言うと野菜の栄養素に関する知識の学びについては、「なぜわざわざゲームでするのか?」を含めてちょっと考えておかなければなりません。

もともと、ゲームを学習に使うことのメリットとしては、「意欲を高めやすい」といったことや「試行や失敗から学ぶ環境を作りやすい」といったことが挙げられます。逆にデメリットとして、「必要以上に時間がかかりやすい」ことが挙げられることがあります。ドリル学習の方がときには効率的に知識を習得できる場合もあります。

実際、サラダマスターの例で言うと、繰り返し遊んでいるうちに野菜の栄養素に関して知識を身につけていくことは可能そうですが、「全ての野菜に関して正確に」というと時間は多くかかりそうです。ゲームの中で触れられるのは、ゲーム中に出てきたカードだけなので、意図的に使用したということでもない限り、強く記憶に残ることは難しいかもしれません。まして、「炭水化物が何グラムで・・・、タンパク質は何グラムで・・・」というのまで正確に覚えることはまず難しいことでしょう。

サラダマスターに出てくる野菜に関する知識が、正確に表示されているのはとても良いことではありますが、単にゲームをするだけでは断片的な記憶以上に知識を子どもたちの頭の中に形成するまでは至らないとも思います。

このようなことを考えると、「ゲームに内包されている知識の学び」を意図して、ボードゲームを使う場合、少なくとも数回で実施する場合には、構成主義的な学習観に則って運用を考えた方が良さそうかなと思います。

”構成主義(こうせいしゅぎ、英: Constructivism)は、様々な領域や学問分野で使われる。
教育における構成主義は、子供たちがある対象について、彼ら自身による(それぞれ違った)理解を組み立てるようなかたちで教育すべきである、あるいは子供たちの中に既に存在している概念を前提に授業を組み立てる必要がある、という学習・教授理論を指す。ここでの教師の役目は、子供がある対象範囲における事実や考えを見つけるのを手助けすることである。”(Wikipedia)

ボードゲームのプレイ中に触れられる情報は、子どもたちの既習の概念の枠組みに取り込まれることで初めて生きた「知識」になります。「野菜」というテーマは子どもたちが日常生活の中で触れているものでもあるので、サラダマスターを使ったゲーム学習はこの点でうまく機能するかもしれません。

実際、「白米には炭水化物が多いこと」を知っている子どもは、同じような「玄米」も炭水化物が多いと予想してカードを出すことができたり、ゲームで必要とされる洞察は必ずしも正確な知識は必要はなく、むしろその繋がりをいかに連鎖させて考えて表現できるかが重要であると思います。
(ゲームの中で初めて知ったことでも、それをさらにゲームプレイに応用させて考えたり、といったことができる子どももいました!すごい!)

そのため、ここでは子どもたち全員が同じように何かの知識を得たことが重要なのではなくて、それぞれの子どもたちが気づきを得たことが重要です。「全てを正確に」というのを目標に置くのではない、目標設定をすることが「ゲームに内包されている知識の学び」を確かなものにする上で大事だと思います。


4、お気に入りの野菜を紹介!

それぞれの子どもたちが個人的な発見・驚きを得て、自分の知識体系にどう結びつけたかが重要、というわけでゲームプレイ後にお気に入りの野菜カードを子どもたちそれぞれにピックアップしてもらいました。

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子どもたちが挙げてくれたカードは比較的果物系が多かったのですが、少なくともここで挙げられたものについてはしっかり覚えてくれたのではないでしょうか。「好き」や「楽しい」をベースに色々なものを覚えていくことは、大事ですよね。実際、そうすることが記憶にいいことも証明されていますし。

「野菜」という身近なテーマだからこそ、子どもたちもとっかかりとっかかりやすかったのではないかと思います。サラダマスター、おすすめですよ!


もちろん、「勝つため」という点では例えば「他の人のカードを見て予想を立てる」や「自分が勝てそうと思うお題カード・補充カードを選ぶ」といったこと(これも「学び」ですね!)もあるのですが、今回は特に「ゲームに内包されている知識の学び」を中心にレッスンを設計してみました。

ここでの学びを実生活にうまく結びつけてくれてたら嬉しいですね!


次回予告

さて、今年度のサイコロ塾が始まって半年が経ちました。サイコロ塾は、「ゲームを遊び、ゲームを創造する」がスローガンですので、後半は少しずつ「作る」ことを射程に置きながら活動をしていきます。

次回からは、レッスンの形式も少しずつ変えながら進めていく予定です。

ぜひ次回のレポートも読んでください!

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