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物語のタネ その壱『お留守番ヒーロー #7』

俺の名前は、滝沢さとし。
表の顔は、高齢者向け介護士だけど、もう一つの顔は

「お留守番ヒーロー」

ヒーローの留守を預かり、出現した怪獣、怪人をもてなすのが俺の役目。
先日はウルトラマン史上最もメジャーなロボット怪獣「キングジョー」さんとお話ししましたが、素晴らしいクラフトマンシップと言いますかね。
ご自身も仰っていましたが、まさにロボット界のフェラーリ。
職人魂を感じました。
今回ですが、こちらも職人魂と言いますか「学者魂の塊」とでも言いましょうか。
ライダー怪人界No.1のインテリと言っても良いのではないでしょうか。

「死神博士」さんです。

いらっしゃった時は、丁度ライダー1号さんも2号さんも久しぶりにお休みが取れたということで、お二人揃って北海道にツーリング行かれておりまして。。。
初対面だったんですよね。
緊張しましたよ、最初。
だって、死神博士さん、怖そうじゃないですか。

シ「どうも、死神です」
お「初めまして、ヒーローの留守を預かるお留守番ヒーローです、あの、本日」
シ「ああ、聞いてますよ。今日いないんですよね 1号も2号も」
お「はい、ご存知でしたか」
シ「LINEで連絡来ました。なんでも、久しぶりのお休みで二人でツーリングに行っているとか。仲良いねー相変わらず」
お「そうなんですよ。すみません。今日は私が精一杯お相手させて頂きますので、博士の人となりなど勉強させて下さい」
シ「そんなにかたくならないでよ」
お「すみません。いや、でも、博士の眼力が半端ないもので」
シ「ああ、これね。昔からでねー、みんな怖がっちゃうのよ」
お「最初テレビに出られた時も、視聴者から怖すぎて子供が泣くというクレームが殺到したと聞いております」
シ「あれは、参りましたよ。こっちは生まれつきだからね。名前が死神博士でしょ。ニコニコしているのも変だしね」
お「そう言えば、死神博士というのはご本名ではないというのは本当ですか?」
シ「はい、ニックネームですよ、ニックネーム。本名はイワン・タワノビッチです。父が日本人、母が白系ロシア人のハーフです」
お「そうなんですね。もし良かったらそのニックネームの由来を教えていただけたらなーなんて」
シ「うーん、あんまりいい思い出ではないんだけどね。なぜかね、子供の頃、いく先々でね、必ず死人が出たんですよ」
お「それは、かなりインパクトのある幼少時代ですね!」
シ「私が、何かしたってわけではないんですよ。でも、何故かね、死人が。そうすると子供ってのは無邪気かつ残酷かつ表現がストレートじゃないですか。ついたあだ名が死神と」
お「はあ、子供はそうですよね。しかし、そのご学友達も、博士と一緒になかなか痺れる環境でお過ごしになってますよね。次々と死人が出る環境って」
シ「でも、あんまり分かっていなかったんじゃないですかね、子供だから。死人が出ると、私のところにやって来て、しーにがみ!しーにがみ!って嬉々として囃し立てられましたからね」
お「なかなかのストレートな攻撃ですね」
シ「先生まで、死神って私のこと呼んでましたからね、授業中。鎌倉幕府が出来たのは、はい、死神くん、何年?って感じで」
お「今だったら、大問題ですね」
シ「まあ、そうですね。ある意味おおらかな時代ではありましたよ」
お「で、博士は?」
シ「その後、大学で論文を書きまして、『ギャラクシーにおける死に方と変身』っていうのですが、これで博士号を取りまして。で、死神博士と」
お「死神のあだ名、大学行っても言われていたんですか?」
シ「ずっと小学校時代から一緒のがいまして。それが私のことを死神って呼ぶもんだから」
お「迷惑な友達ですね」
シ「ねー笑 ただ、私が博士号を取った時に真っ先にお祝いに来てくれたのもこいつで。すごい喜んで涙流しながらですね、よかったよかったって」
お「ああ、いい友達ですね」
シ「よかったよかった。これでお前も死神博士だ!って、ね」
お「そこ、くっつけちゃったんですね」
シ「そう、これで決定ですよ笑」
お「(笑)」
シ「その後はポーランドで臓器移植の研究をしておりまして。これはもう公になっていることですが、アウシュビッツに収容されてしまったのですが、その研究の実績を買われて、そこでも生体実験を色々と、、、」
お「ああ、そうですか。その時の実験の実績を買われてショッカーにスカウトされたと」
シ「そうですね。そんな実績買ってくれるのはあそこしかなかったから」
お「なかなか葛藤があったんですね」
シ「そうですね。私が臓器移植の研究を始めたのは、そもそも体の弱かった妹のナターシャに何かあった時に備えてだったんですが、、、」
お「そうなんですか?」
シ「ただ、ナターシャ、終戦間近に死んじゃいましてね。そんな時にショッカーからお誘い受けて、もう行くしかないなって思いまして。ちょっとやけになっていましたね、今思うと」
お「なるほど、それは大変でしたね」
シ「・・・・・・すみませんね。ちょっとしんみりしちゃって」
お「いやいやいや、思い出しちゃいますものね。しかし、ショッカーに入られてからは、その実力で目覚ましいご活躍をされ、『怪人作りの名人』と呼ばれていたとか」
シ「そうですね。人生何が役に立つかわからんものですね。おかげさまでそう呼ばれておりました」
お「スイス本部勤務を経て、2代目日本支部の支部長になられたと。幹部職になられたのはその時が初めて?」
シ「はい、初めての幹部職で、ちょっと張り切っちゃいましたが、やはりね、私学者肌だから苦労しましたね」
お「向き不向きはありますからねー。でも人気は素晴らしかったじゃないですか。オール改造人間カタログの人気投票で1位取られて」
シ「あー、嬉しかったですね。頑張った甲斐があったなって」
お「その分、日本支部長が博士から『地獄大使』に代わる、と言われた時は正直ショックでした?」
シ「(ちょっと沈黙あって)まあ、組織に人事異動はつきものですから」
お「あの、ちょっと聞きにくんですが、地獄大使さんとはあまり仲がよろしくないっていうのは本当ですか?」
シ「昔は色々ありましたけど、今は別になんとも思っていないですよ笑 人はそれぞれ生き方がありますしね。お互いそれを認めていればいいんじゃないですか」
お「そうですよね」
シ「私、あの人事異動の後、南米支部に行きまして。行ってみたらこれはこれでいいところで、結局今も南米におりますからね。人生何があるかわからんもんです。私も、子供の頃に死神っていうあだ名がつけられた時は正直嫌だったですけど、結果、そのあだ名のおかげで今がありますからね。受け入れていくっていうのは大切ですよ。意外と悪いことばかりじゃないですよ」
お「確かにそうかもしれません。勉強になります」
シ「いやいや、今日はちょっと喋りすぎちゃったな」
お「とんでもないです。ありがとうございます」
シ「あ、これ、お土産のマテ茶。よかったら飲んでくださいよ」

死神博士さん。
幼少期から、人生の酸いも甘いも噛み分けたという感じです。
勉強になりました。
マテ茶、美味しく頂きます!



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