見出し画像

物語のタネ その壱『お留守番ヒーロー #9』

俺の名前は、滝沢さとし。
表の顔は、高齢者向け介護士だけど、もう一つの顔は

「お留守番ヒーロー」

ヒーローの留守を預かり、出現した怪獣、怪人をもてなすのが俺の役目。
ここのところライダー関係の怪人さんが続きましたが、本日は、ウルトラセブンさんのご闘友?

「メトロン星人」さんです。

この日は、ちょうどセブンさんの年に一度のアイスラッガーケア、人間で言いますとヘッドスパ&ヘアケアとなりますでしょうか、の日で。
私、夕方、出現約束場所にちょっと早めに着いて待っていますと、ふらっとした感じ。
まるで近くの銭湯に行くかのような感じで、メトロン星人さん、いらっしゃいました。

メ「あ、ども、お留守番ヒーローさん?」
お「はい、初めまして。本日はよろしくお願いします。あの、セブンさんなんですけど」
メ「はいはい、連絡受けました。ケアの日でしょ、今日。もうね、ほら、セブンさんもね、頭ケアしないとね。力士の髷みたいなもんだからさ、なくなっちゃうとまずいもの笑」
お「は、私の口からはその点はなんとも言えないのですが笑 そんなこんなで、本日は私がお相手させて頂きますので」
メ「はいはい」
お「しかし、メトロンさん。馴染んでますね〜、地球にというか町に」
メ「そうね〜、もうかれこれ50年以上住んでいるからね。この町に」
お「最初は、ダンさんを招いた、ボ、あ、失礼しました」
メ「いやいやいや、いいよ、そう、ボロアパート。あの当時のことを考えても、ボロだったね〜。でも逆にね、私も地球初めてだったからさ、なんて言うのかな、庶民?のレベルから入っていけたってのは、結果としてよかったな、と思いますよ」
お「そこから50年以上、まさかずっとこの町に住み続けられたわけですものね」
メ「そうなんだよね。地球に来るまでに、私、いくつか星を侵略してて、どちらかというと一つの場所に根付かない人生を歩んで来ていたのね。まあ、そう言うスタイルが自分に合っていると思っていたんだけど。わからんもんだね。なんか去り難いと言うか、馴染んじゃったんだよね」
お「いや、ほんと馴染んでいますよね、失礼ながら、最初、銭湯に行く町のオヤジがやって来た感がありましたもの」
メ「あ、ほんと?ちょっと嬉しいな、というか、ほんとにそんな気分よ。今日ね、出現時間、17時半にした理由わかる?」
お「いや、なんでなんですか?」
メ「(ニヤリと笑って)ほら、ちょっと振り返って後ろ見てみてよ」
お「え、はい。うわー、綺麗な夕陽ですねー」
メ「でしょ?この夕陽にね、私やられちゃったのよ。地球に侵略に来て、このボロアパートで一人でしょ。そりゃ、ちょっと寂しいわけよ、私でも。そんな時にね、毎日、あのアパートの窓から見る夕陽がね、唯一の慰めでね。ほんと、なんて綺麗なんだと。もう、益々侵略したいなーって思っちゃいましたよ笑」
お「それで、セブンさんとの戦いも夕方に?」
メ「そう、綺麗だったでしょ。あのシーン」
お「はい、ウルトラの名シーンの一つですよね。あれ、そうかメトロンさんの地球への想いが詰まったロケーションだったんですね」 
メ「そうなの。ほら、私、最初なんて呼ばれていたか知ってる?」
お「はい、あの、幻覚星人。。。」
メ「そう。でもね、それまで見たどんな幻覚よりも綺麗だったんだよね、ここの夕陽が。私もそれで、止められたんだよね、今だから言うけど」
お「その話、ちょっと聞きにくかったんですけど、流れで聞いちゃっていいですか?」
メ「いいよ。今日は、全部話すよ。まあ、昔の話だし、時効でしょ笑」
お「やっぱり、あの、当時はやられていたと」
メ「ええ、私、世代で言うと、わかるかな?ヒッピー世代なのよ。で、自分も結構筋金入りの宇宙ヒッピーだったわけ。なんで、色々な星をプラプラとね侵略しては次に行ってって感じで。地球のヒッピーは、LOVE&PEACEだったけど、こっちはその逆って感じだったけどね、今思えば。で、ヒッピー文化では、つきものじゃない。そういうの」
お「地球の侵略もタバコに幻覚をもたらす赤い結晶を入れ込む、という作戦だったんですね」
メ「そうね、当時の喫煙率は高かったからね、地球」
お「で、その赤い結晶にはお互いの信頼関係を無くさせるという働きが有ったと聞いていますが」
メ「そうそう、まさにLOVE&PEACEと逆よ」
お「で、その作戦はうまく行ったんですか?」
メ「うーん、そこがね。ちょっと語っちゃうかもだけど。最初ね、この町に来た時、ボロアパートに越して来た、この見ず知らずの私にもね、近所の人達はとても親切で。見ているとみんなそれぞれ信頼し合って、助け合っているわけよ。当時、うちも外出の時も鍵かけずに出ていた、というか鍵をかけるって知らなかったからね。でも、一回もドロボーに入られたこと無かったしね。これはイケると。この信頼関係を崩してしまえば、勝手に自滅していくな、しめしめって思ったんですよ」
お「なるほど」
メ「でもね、いざ作戦範囲を広げてみると、あれ?そんなに信頼しあっていないの?と。大都市になり、そして、それが国同士に話になると。正直、なんだよーって思いましたよ。私の素敵な人間関係を返せーとね。もう逆に、これはいかんと。私が人間たちが本来持っているはずのね、信頼関係を取り戻すように頑張ろう。微力ながらがんばろうってね、思っちゃったのですよ」
お「でもって、50余年」
メ「はい、50年以上経ちました」
お「この町で」
メ「はい、この町でずっと」
お「地球人としてお礼を言わせて頂きます。ありがとうございます」
メ「いえ、とんでもない。私こそこの町にお礼を言いたいです」
お「因みに、50年経ちまして、地球人はどうですか?」
メ「うーん、そうですねー。この町も町から市になってね。世代も変わって色々と難しいところもありますよね」
お「そうですか、やはり。世代といえば、お子さんいらっしゃいましたよね、メトロン星人Jr.さん」
メ「はい、おります。今日はぶっちゃけ話しちゃうと、息子はちょっとヤンチャで、頭の痛いところです。まあ、昔の自分を思い出すと、何も言えないところはありますが笑」
お「(笑)」
メ「やっぱ、付き合う仲間ですかね。私は当時一人っきりで、そこにダンさんとか町の人、人に恵まれたんだな、そのおかげでねこうなりましたけど。あいつは友達がね、ドラゴリーとかムルチとか言ったかな。ちょっと悪いんですよね」
お「あー、そうなんですね」
メ「まあ、若い時は仕方ないかなとは思うんですけどね、自分のことを振り返ると」
お「そうですね。親としては悩ましいところですよね」
メ「だから、今はひとまずは見守るしかないかとね。将来、あいつが良い人間関係を築けるように、私としては、この町を心暖かい町のままにしていきたいなって思うんですよ」
お「はい」
メ「なんかうちの話になっちゃってすみません。でも、ほんと、地球人の信頼関係って素敵だと思いますよ。だからね、是非大事にして貰いたい。その価値に自分たちでもっともっと気づいて欲しいって思います」
お「はい、その言葉、私も心にしっかりと刻みます」
メ「嬉しいですね。じゃあ、今度はセブンさんも入れてご飯でも」
お「はい、是非!」
メ「それと、これ、荷物になっちゃうかもしれないんだけど、うちが出しているお茶、眼兎龍茶(メトロン茶)って言うんだけど、良かったら飲んでくださいよ」
お「あ、すみません、お気遣い頂いちゃって」
メ「いやいや、良かったら飲んでみて。リラックス効果あるから。では、また」
お「はい、今日はありがとうございました!」

そうして、メトロンさん、夕陽に包まれた町の中に帰って行かれました。
この後、お気に入りのお肉屋さんで、大好きな牛コロッケを買って帰る、とのことでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?